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転んでも怪我しない技術。Safe fall landing strategies: SFLS

📖 文献情報 と 抄録和訳

理学療法士による高齢者の管理における安全な落下着地戦略の活用:症例報告

📕Kinney, S. G., and J. D. Kiesel. "Utilization of safe fall landing strategies in physical therapist management of geriatric populations: a case report." Physical therapy 101.3 (2021): pzaa226. https://doi.org/10.1093/ptj/pzaa226
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 転倒技術や安全な着地方法(Safe fall landing strategies: SFLS)に焦点を当てることは、転倒に伴う傷害を減らすための方策のうち、転倒予防とは異なったもう一つの方法である。この症例報告では、理論的には重要なSFLSが実際の臨床計画にどのように組み入れられるかを明らかにする。

[Case] 77歳の女性が、バランス感覚の低下と以前の活動的なライフスタイルに戻ることができないという理由により理学療法を処方された。患者は、年齢の上昇、怪我のリスク、痛み、転倒への恐怖が障害となっていることを述べていた。身体機能、動作能力も不十分な状態であった。

[方法]
▶︎SFLS介入のStep1:身体機能・動作能力の獲得:制御された転倒を進行させるためには、十分な可動域、筋力、運動制御、パワー、持久力、バランス、反応時間が必要。これらの障害に対処するために、徒手療法、可動域、バランス、持久力、強化のための介入が行われた。
▶︎SFLS介入のStep2:後向き、前向き、横向きへのSFLSを①プラットフォームから→②立位からプラットフォームへ→③立位から床へと徐々に難易度を上げて実施した [添付図参照; 後転の例]

スライド2

✅ 図. Safe fall landing strategies (SFLS) 介入の実際

[結果] SFLSを含む理学療法士の介入により、Patient Specific Functional Scaleスコア(初期スコア=2.5、退院時スコア=8)、静的バランス、および床から腰までのリフティングを行う能力の向上が見られた。患者は立位からの後転と前転ができるようになり、理学療法士によるケアの期間中、有害な副作用は報告されなかった。

[結論] この症例報告は、臨床理学療法の場において、1人の患者に対してSFLSをどのように安全かつ実用的に進めていったかを示している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

転倒におけるエピメテウス技術、すなわち「転んでも怪我しない技術」のうちの1つ。
それが、今回抄読したSFLSである。
体育の柔道の授業を思い出した(SFLSの発案者は、もしかしたら柔道経験者ではないだろうか・・・)。
その背景をレビューしてみた。

📗 ミニレビュー:Safe fall landing strategies (SFLS)
- 転倒による障害は一般的で、特に高齢者層では障害を引き起こす可能性が高い(📕Stevens, 2014 >>> doi. )
- 転倒技術や安全な着地方法(SFLS)に焦点を当てることは、転倒に伴う傷害を減らすためのもう一つの方法であり、SFLSは、転倒時の衝撃荷重を軽減することが示されている(📕Yaejin Moon, 2017 >>> doi.)
- SFLSは安全性の観点から若年者を対象とすることが多かったが、近年高齢者を対象としたSFLSの実践報告があり転倒恐怖を改善することが明らかになった(📕Groen, 2010 >>> doi.)

今回の症例報告では、さすが “Physical Therapy” 掲載誌だけあって、SFLSを実運用できる程度には具体的に方法が記されており、難易度のステップアップについても記述があった。
これが、“Physical Therapy” に掲載されるレベルの症例報告・・・。
1段1段、丁寧に登りたい❗️

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