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成長中の野球選手はハイリスク:身長の増加と肩・肘疼痛の関連が明らかに

▼ 文献情報 と 抄録和訳

思春期野球選手における投球に関連した肩・肘の痛みの危険因子;身体的要因と発達的要因に関する前向きな研究

Tajika, Tsuyoshi, et al. "Risk Factors for Throwing-Related Shoulder and Elbow Pain in Adolescent Baseball Players: A Prospective Study of Physical and Developmental Factors." Orthopaedic Journal of Sports Medicine 9.9 (2021): 23259671211017129.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 思春期の野球選手の間では、投球に関連した肩や肘の痛みが引き続き報告されている。投球関連の肩・肘の痛みと身体的・発達的変化との関連を具体的に検討した前向きな研究は少ない。目的は、思春期の野球選手の投球関連の肩・肘の痛みに関して、1年間の身体的・発達的特徴の変化を評価すること。

[方法] 研究デザインはケースコントロール研究。1年間の前向き追跡調査では,7~13歳の野球選手164名を対象とした。選手データ(年齢,身長,体重,フィールドポジション,投球数),下肢の筋緊張,肩関節,肘関節,股関節の可動域(ROM)を,2016年と2017年のプレシーズン検診で評価した.2016年のシーズン終了後、参加者は投球に関連した肩や肘の痛みに関するアンケートに答え、肘や肩の障害のために1週間以上プレーできない状態と定義した。2016年シーズンに投球関連の肩や肘の痛みがあった研究参加者となかった研究参加者について、単変量および多変量のロジスティック回帰分析を行い、投球関連の肩や肘の痛みの危険因子を特定した。

[結果] 全体では、21名(12.8%)の選手が肩の痛みのエピソードを報告し、56名(34.1%)の選手が肘の痛みのエピソードを報告し、70名(42.7%)の選手が2016年シーズン中に肩および/または肘の痛みを経験したと報告した。多変量ロジスティック回帰分析では、(1)肩の痛みは、2016年のプレシーズンの身長(オッズ比[OR]、1.06;95%CI、1.01~1.11;P=0.01)と、2016年から2017年への利き手側肘伸展ROMの変化(OR、1.12;95%CI、1.02~1.24;P=. 02)、(2)肘の痛みは、2016年から2017年への体重の変化(OR、1.21;95%CI、1.04-1.41;P=0.014)、(3)投球関連の肩および/または肘の痛みは、2016年のプレシーズンの身長が大きいこと(OR、1.04;95%CI、1.003-1.68;P=0.03)、および2016年から2017年への身長の増加(OR、1.17;95%CI、1.01-1.35;P=0.03)と関連していた。

[結論] 今回の結果から、プレシーズンで身長が高かった思春期の野球選手と、1年間の調査期間中に身長が増加した選手は、投球に関連する肩および/または肘の痛みを発症する重大なリスクに直面していることがわかった。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

「オスグッド・シュラッター病」という、成長期における膝痛を生じる疾患はよく知られている。オスグットの発症メカニズムの1つとして、「骨の成長スピードに対して、筋肉や腱の成長が追いつかない」がある。
そこに、荷重負荷が加わることで、疼痛が発生するというわけだ。
ここからは個人の推察だが、オスグットが良く知られているのは、膝への荷重負荷というものが非常にありふれた一般的な負荷だからではないだろうか。だから、幅広い人がオスグットを経験したり、友達がなっているのを見て、知っている。

そして、膝に起こりうることは、肩にも起こりうる。
今回の論文は、それを明らかにした。
言われてみれば、「確かに!、当たり前のことだ!」と思うが、コロンブスの卵である。
そして、肩において「骨の成長スピードに対して、筋肉や腱の成長が追いつかない」は多くの思春期の人間が経験していると思われるが、「肩への負荷」というものが一般的ではないため、この要因による肩痛・肘痛というものは単なる投球障害として扱われてきたのだろう。
オスグットと同じ発症メカニズムによる疼痛だ、と分かっていれば、筋肉や腱の伸張を促したり、予後に対する考え方や治療法にまで影響を与えるだろう。
とにかく、投球による肩痛、肘痛に出会ったときに、その選手の成長度を把握しておくことは重要なことだ。

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