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運動スナックの『開窓効果』。運動後の筋アミノ酸利用を増やす

📖 文献情報 と 抄録和訳

ウォーキングやスクワットによる「活動的なおやつ」は、長時間座っているときの筋原繊維タンパク質合成に必要な食事性アミノ酸の利用を増加させる

📕Moore, Daniel R., et al. "Walking or body weight squat'activity snacks' increase dietary amino acid utilization for myofibrillar protein synthesis during prolonged sitting." Journal of Applied Physiology (2022). https://doi.org/10.1152/japplphysiol.00106.2022
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🔑 Key points
🔹長時間の座位は、以前の健康状態にかかわらず、食後の血糖値、脂質血症、およびインスリン感受性を損なう可能性がある。
🔹我々は、自重スクワットや短時間の歩行などの短時間の活動で長時間の座位を中断することにより、筋収縮タンパク質合成のための食事性アミノ酸の利用効率が向上することを実証した。
🔹このことは、すべての大栄養素の食後代謝を改善するために、座っている時間を最小限にすることの重要性をさらに強調するものである。

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[背景・目的] 間欠的な運動による長時間の座位保持は食後血糖コントロールを高めるが、食事性アミノ酸に対する骨格筋の感作に及ぼす影響は不明である。我々は、短時間の歩行または自重スクワットが、長時間の座位時における食事性フェニルアラニンの筋原線維タンパク質合成(MyoPS)に対する利用を促進するという仮説を立てた。

[方法] 参加者(男性7名、女性5名、約23歳、体重約25.1kg/m2、約7,300歩/日)は、長時間座位(SIT)、座位に30分毎の歩行(WALK)または自重スクワット(SQUAT)を組み合わせた7.5時間の試験3つを実施した。朝食と昼食には、l-[ring-2H5]phenylalanineまたはl-[ring-13C6]phenylalanineを含む混合栄養食(約55:30:15 炭水化物:脂肪:タンパク質)を2回提供した。トレーサーの筋原線維タンパク質への取り込みは、外側広筋から測定し、前駆体代替物として血漿濃縮を用いてMyoPSを推定した。同化シグナル候補タンパク質のリン酸化は、イムノブロットにより測定した。

[結果] 血漿フェニルアラニン濃縮の時間経過や曲線下面積に条件間の差はなかった(P≥0.78)。MyoPSは、SIT(0.080±0.032%/h)と比較して、SQUAT(0.103±0.030%/h)およびWALK(0.118±0.037%/h)で大きかった(P < 0.05)。SITと比較した場合、SQUAT[効果量(ES)=0.75;95%CI -0.10~1.55]およびWALK[ES=1.10;95%CI 0.20~1.91]ではそれぞれ中程度から大きな効果量が見られた。rpS6Ser240/244リン酸化のFold変化は、SQUATではSITに比べて大きく(7.6 ± 2.7 対 1.6 ± 0.45倍、P < 0.05)、測定した他の標的(4E-BP1Thr37/46、eEF2Thr56、mTORSer2448、ERK1/2Thr202/Tyr204)では差がなかった(P ≧ 0.21)。

[結論] 長時間の座位を中断して短時間の「活動的な間食」をすることで、食事性アミノ酸のMyoPSへの利用が改善されます。この実用的なライフスタイルの修正が、筋肉量や筋肉品質に与える長期的な影響について調査する必要がある。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

麹の1粒は、それ単体では些末だが、経時的にその1粒が全体を変える。
蛇口をひねることは、その場では少しの水量を落とすだけだが、そのまま時間が経つと、浴槽から溢れるほどの水量となる。
窓を開け放つことは、その場では大した換気にはならないが、時間を経るとすっかり換気されてしまう。

運動スナックが効果を出す仕組みは、上に述べたようなことに近い。
すなわち、運動スナックは、その短時間運動によって直接的 & 即時的に効果を得るのではなく、効果を出す経時的な仕組みのスイッチを押す
この場合、それは筋における『開窓効果』である(※造語)。
・GLUT4の仕組みに似ている
・筋はグリコーゲンやアミノ酸を取り込む場合、窓が開けられる必要がある
・グリコーゲンの場合、それはインスリンや運動によってなされる
・今回の研究によって、アミノ酸の場合でも、運動による開窓効果があることが明らかになった

確かにエルゴメータやトレッドミルのあと、消費カロリーを見ると、ちゃぶ台をひっくり返したい気持ちになる。
「これだけやって、〇〇kcalだけ!?」
だが、どうやら杞憂に過ぎないのかもしれない。
運動は、その場の物々交換的な効果ではなく、開け放たれた窓が徐々に換気するような仕方で効果を出すようだ。
だから、運動は「その場がすべて」ではなく「スイッチ」のイメージを持つことが大切だ。
代謝のスイッチを、頻繁に押すのだ。
そうすることで、平時に体内で起こる現象が変わる。

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