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ストレスホルモン(コルチゾール)が筋力と筋量を減少させる

▼ 文献情報 と 抄録和訳

コルチゾールが筋力および筋肉量の減少に及ぼす影響;メンデルランダム化研究

Katsuhara S, Yokomoto-Umakoshi M, Umakoshi H, Matsuda Y, Iwahashi N, Kaneko H, Ogata M, Fukumoto T, Terada E, Sakamoto R, Ogawa Y. Impact of Cortisol on Reduction in Muscle Strength and Mass: A Mendelian Randomization Study. J Clin Endocrinol Metab. 2021 Nov 28:dgab862. 

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

✅ 前提知識:メンデルランダム化(Mendelian randomization: MR)研究
● ゲノムワイド関連研究により得られた一塩基多型を操作変数として用いて、様々な形質間の因果関係を推測する遺伝統計学的解析手法。
● MRの大きなメリットとして、観察研究データで因果関係を考察できる
>>> 参考site

[背景・目的] クッシング症候群のように病的なコルチゾールに長期間さらされると、サルコペニアを含む様々な老化関連障害が引き起こされる。しかし、例えば軽度のコルチゾール過剰が加齢や慢性ストレスによるサルコペニアを促進させるかどうかは不明である。我々は、メンデルランダム化(MR)分析を用いて、コルチゾールが筋力および筋肉量と因果関係を持つかどうかを評価した。

[方法] CORtisol NETworkコンソーシアム(n = 12 597)における血漿コルチゾール濃度に関連する3つの一塩基多型を道具変数として使用した。関心のある形質との要約統計量は,関連するゲノムワイド関連研究より入手した。一次解析では、バリアント間の遺伝的相関を考慮した固定効果逆バリアント加重解析を使用した。

[結果] コルチゾールの1SD増加は、握力のSD減少(推定値、-0.032;95%CI -0.044~-0.020;P = 3e-04)全身除脂肪量(推定値、-0.032;95%CI、-0.046~-0.017;P = 0.004)および除脂肪体重(推定値、-0.031;95%CI、-0.049~-0.012;P = 0.001)と関連した。この結果は、加重平均値解析で支持され、MR-Egger解析では、プリオトロピーの証拠はなかった。コルチゾールと握力および除脂肪体重との関連は、女性では観察されたが、男性では観察されなかった。MR多変量解析で空腹時血糖値を調整するとその関連性は弱まり、MRベイズモデル平均化解析ではその関連性のトップメディエーターとなった。

[結論] このMR研究は、コルチゾールと筋力および筋量の低下との関連性を示す証拠を提供し、コルチゾールがサルコペニアの発症に影響を及ぼすことを示唆するものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

プロフェッショナル「仕事の定義」が好きだ。
長谷川大樹(魚仲買人)さんの特集において、凄技に驚いた。
買った魚を美味しく届けるために「神経締め」(>>> site)という技を使うのだという。
その技は、脊髄を壊し神経の伝達ごと瞬時に止めてしまう、「即殺」
そうすることで、「ストレスにさらされて不味くなる」のを防ぐという。
魚は、ストレスに晒されると不味くなるらしい。

人間だって、同じ生き物だ。食われないから気づかないが、ストレスにさらされているとき、何かは起きている。
その一端が、今回の研究により明らかになった。
ストレスホルモン、コルチゾールが多いと「筋力」と「筋量」が減少するのだ。
これは、理学療法士にとっては、超重要事項だろう。
たとえば、僕たち(リハビリテテーション職種)が知らず知らずに患者さんに与えた「ストレス」が、筋量を減少させているかもしれない。逆に、「ストレスを与えない」ことが自然治癒力を高めるための重要な戦略になりうる。
ココロとカラダのリンクを、もっともっと、突き詰めるべきだと思った。
「神経締め」ではない、保存的な方法で、美味しい感情をつくり出したい

将来の医学でさえ、いずれは治療の目的のために喜びの感情の助けを求め、
また、病気の心理的要素に対しても、単に人間の肉体的な面のみを考慮した機械的な治療手段に劣らぬ治療効果を認めないわけにはいかなくなるであろう

【ヒルティ】眠られぬ夜のために(1) P. 13

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