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スポーツ現場に電子カルテの導入を!

📖 文献情報 と 抄録和訳

電子記録使用における高度なトレーニングの必要性:臨床実践、教育、アスレティックトレーニングの発展への示唆

📕Lam, Kenneth C., Barton E. Anderson, and Cailee E. Welch Bacon. "The Critical Need for Advanced Training in Electronic Records Use: Implications for Clinical Practice, Education, and the Advancement of Athletic Training." Journal of Athletic Training 57.6 (2022): 599-605. https://doi.org/10.4085/1062-6050-298-21
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🔑 Key points
🔹医療現場や臨床教育における患者ケアの文書化とコア・コンピテンシー導入の課題から、医療従事者や学生が臨床現場で電子記録を使用するための訓練と準備をより良く行うために、的を絞った学習機会が必要であることが示唆されている。
🔹学術用電子カルテ(academic electronic health record, AEHR)は、臨床医と学生が日常診療で電子カルテを使用するための訓練とスキルアップをより良く行うための、シミュレーションされた安全な環境を作り出す教育ツールである。
🔹AEHRの使用に関連する利点として、テクノロジーに対する態度の向上、情報科学能力の向上、文書作成能力の向上などがあり、AEHRの大規模な導入は、医療経済、職業の活力、医療情報技術など、アスレティックトレーニングの進歩に不可欠なイニシアティブを支える可能性があることを示している。

[背景・目的] 電子記録(すなわち、電子健康記録または電子医療記録)の効果的な使用は、専門的な取り組みとアスレティックトレーニング専門職の全体的な進歩に不可欠である。しかし、アスレティックトレーニングでは、包括的な患者ケアの文書化と電子記録の普及がまだ限定的であることを示す証拠がある。臨床医や学生に対する正式なトレーニングや教育の欠如が、電子記録使用の主な障壁としてしばしば挙げられている。他の医療分野では、これらの障壁を解決するために学術的な電子カルテ(AEHR)システムを使用し、有望な結果を得ている。目的:臨床現場における電子記録の有効活用に関連する共通の課題を明らかにし、AEHRシステムがこれらの課題にどのように対処し、電子記録の有効活用を促進するかを議論し、アスレティックトレーニング専門職におけるAEHRの導入戦略を説明すること。

[レビュー概要]

■ スポーツ現場に電子カルテが導入されることの利点
- 過去10年間で、健康情報技術や医療情報学の利用は、アスレチックトレーニングの専門教育、専門職後教育、レジデントトレーニングにおける中核的な能力として認識されてきた(📕Commission on Accreditation of Athletic Training Education, 2021 >>> pdf.)。
- さらに、電子記録からの患者データを活用することで、ケアの時点における臨床研究を支援し、アスレティックトレーナー(AT)が提供する患者ケアの質を向上させるための具体的な推奨が提案されている (📕Lopes Sauers, 2017 >>> doi.)。
- 同様に、「患者ケアを改善し、専門職を進歩させるために、研究と臨床実践を一体化させる」ことを目指したアスレティックトレーニング戦略連盟の優先研究課題の最近の発表では、健康情報技術の利用が5大必要分野の1つとして特定されており、電子記録がこの必要性に取り組む上で不可欠な役割を担っている(📕Eberman, 2019 >>> doi.)。
- さらに、Prioritized Research Agendaを詳しく見てみると、電子記録から得られるデータは、医療経済やアスレティックトレーニングの専門職の活力など、他のニーズ分野への対応に不可欠であることがわかる(図)。
- これらの取り組みを総合すると、電子記録の利用は、アスレティックトレーニングの臨床実践の強化だけでなく、今後数年間における専門職全体の発展にも不可欠であることがわかります。

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■ AEHRとは?
- AEHRは教育用に特別に設計された電子記録システムであり、あらゆるタイプの学習者(例:臨床医、学生)によるシミュレーション学習を支援する。
- 電子カルテの形態と機能を模倣したAEHRは、患者ケアの文書化プロジェクト、標準化された患者ケースのクリティカルレビュー、品質向上のための患者ケアデータの評価など、さまざまな教育的タスクを提供する。
- 臨床・研究上の利点最近のエビデンスによると,AEHRの使用は知識を向上させ,スキルを高めることができる。
- 特に,AEHRの使用は,電子カルテ技術に対する態度の向上,インフォマティクス能力の向上,文書作成スキルの向上と関連している。
- また、AEHRの使用は、批判的思考や意思決定スキルの向上と関連している。このツールは、医療専門職の教育にとって価値があると思われ、アスレチックトレーニングは、臨床家と学生を同様に臨床実践のためにより良く訓練し、スキルアップするために、このツールの使用から利益を得ることができる。
- AEHRの導入には多くの時間と大規模な調整努力が必要ですが、現在の課題に対処し、アスレティックトレーニングの専門性を高めるためには価値ある投資となることだろう

■ EHRとEMRの違い
- 2020年の「プロフェッショナルアスレティックトレーニングプログラムの認定基準」(2020 Standards)ではEHRの使用が明記されているが、Athletic Training Strategic AllianceのPrioritized Research AgendaではEMRの使用が確認されている。
- 大体において、EHRとEMRは特徴や機能が似ており、以前にも比較されたことがある。大きな違いは、EMRは通常1つの臨床現場に存在し、他の電子記録とのインターフェースや通信を行わないことである。
- 対照的に、EHRは、臨床医(例えば、医師、理学療法士、作業療法士)、患者、および組織の間でより簡単に情報を共有することができる接続環境(例えば、異なる部門、専門分野、またはその両方で病院のネットワーク)に存在する。 (📕Marshall, 2020 >>> doi.; 📕Lam, 2015 >>> doi.)。

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🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

スポーツ現場で活動していると、行き当たる壁がある。
それは『問診の難しさ』だ。
通常、医療現場では患者様という「大人」を相手にすることが多く、中学生や高校生とは発達の段階が異なる。
その大人に対しての問診は、比較的容易だ。
「いつから痛くなったのですか?」
「最初に行った医療機関ではどのように言われたのですか?」
「どのような感じの痛みですか?」
的確に答えていただける場合が多いだろう。
一方で、中学生や高校生に対する問診では、「覚えていない」「言われたことが曖昧」など、的確な答えが得られない場合が多い。
おそらく、子どもはそのような情報への関心が比較的乏しく、親に依存している場合が多いからではないかと思っている。
とにかく、現病歴や既往歴などの聴取が難しい場合が多い。

このような問題点がある中で、もしスポーツ現場に電子カルテが導入されていた場合、何が起こるか?
・抗忘却:現病歴はリアルタイムにマネージャーが記録しているから忘却はなくなる
・共有可能性が高まる:月に数度の参加であってもその他の日に、誰に何が起こったか一目瞭然
・EMRよりEHRが重宝しそう:EMRではなく、EHRとしてトレーナーのデバイスでも状態が確認できるなら、いつでも状況を確認可能

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だからこそ、その教育は重要だ。
電子カルテ記載方法を学習する『AEHR』などの教育ツールは、今後さらに輝くだろう。
そういえば、学生のとき電子カルテの書き方などをしっかり学習しておく、という授業がなかったことは不思議なことだ。
臨床現場に出てから役立つスキルの10の指には入るのではないか。
新人指導にも、もちろん重要な項目。
『AEHR』、要チェックだ。

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