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運動のリミッター。扁桃体の活動が鍵

📖 文献情報 と 抄録和訳

ラットにおける高強度運動時の心血管系調節と最大運動量制限における扁桃体中心核の関与

📕Tsukioka, Kei, Ko Yamanaka, and Hidefumi Waki. "Implication of the central nucleus of the amygdala in cardiovascular regulation and limiting maximum exercise performance during high-intensity exercise in rats." Neuroscience (2022). https://doi.org/10.1016/j.neuroscience.2022.06.005
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, プレリリース
🌲MORE⤴ >>> Not applicable
🔑 Key points
- 扁桃体中心核が運動の継続時間に及ぼす影響について評価
- 扁桃体中心核の機能を喪失させると運動中の血圧応答が変化し、運動継続時間が延長
- 扁桃体中心核は運動の限界を決める脳部位の一つである
- アスリートの運動能力を引き上げる新しいメンタルトレーニング法の開発へ

[背景・目的] これまで、高強度運動時の中枢性疲労のメカニズムは不明なままであった。ここでは、扁桃体活性化が最大運動パフォーマンスを制限するように作用するという仮説に着目し、高強度運動時の心血管調節の中枢機構を解明する。

[方法] 扁桃体中心核(CeA)の機能を部分的に喪失させたラットで、機能の喪失前と喪失後に、トレッドミルを用いた漸増運動負荷試験を行い、最大運動時間と血圧の変化を観察した。3つの実験のうち最初の実験では、Wistarラットに最大運動負荷試験を実施し、両側CeA病変の前後で総走行時間と心血管系反応を比較した。次に、中枢神経経路の役割を探るため、高強度運動がCeAおよび視床下部室傍核(PVN)ニューロンや孤束核(NTS)へ投射するニューロンを活性化するかどうかを検証した。最後に、最大運動量に影響を及ぼす自律神経機構の可能性を理解するために、麻酔下のラットを用いて、CeA、PVN、あるいはその両方に電気マイクロスティミュレーションを行い、心血管系反応を測定した。

[結果] その結果、(1)CeA病変では、総運動時間および動脈圧の急激な上昇が出現する時間が増加し、疲労が明らかに抑制されることがわかった。(2)高強度運動によりPVN-NTS経路とCeA-NTS経路の両方が活性化されることを確認した。さらに、(3) CeAあるいはPVNを単独で刺激するとともに圧反応が生じるが、同時に刺激すると筋血管抵抗が上昇することを見出した。

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✅ 図. 長時間・高強度運動に対する扁桃体中心核の役割
(A)ラットにトレッドミル走行による最大運動を課すと、扁桃体中心核や視床下部室傍核の神経細胞が興奮する。(B)動脈圧(平均血圧)は疲労困憊に先立ち上昇するが、扁桃体中心核の機能喪失により、変化のタイミングが遅延する。(C)さらに、運動時間も延長する。(D)低強度運動時の循環調節の概念図。運動時には視床下部室傍核と延髄心臓血管中枢(孤束核など)による調節により、適切な循環動態が維持されている(活動筋血流量の増加)。(E)疲労困憊に至るまでの循環調節の概念図。長時間・高強度運動による扁桃体中心核の興奮は、負の情動の発生とともに、視床下部室傍核や延髄心臓血管中枢を刺激し、交感神経系の過剰な興奮と筋血管抵抗の増大を引き起こす。これが、活動筋血流量を低下させ、疲労物質の蓄積や筋力低下と、さらなる負の情動を誘発させるため、最終的に運動意欲の低下と疲労困憊を引き起こすと考えられる(🌍 参考サイト >>> site.)

[結論] 以上の結果から、扁桃体中心核は長時間・高強度運動時の最大パフォーマンスに影響を与える脳部位の一つであることが分かった。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

人間には、リミッターがある。
それは、主に自分自身を守るために。
最大級の出力は、反作用的に自分を傷つけるから。

今回、そのリミッターの1つが『扁桃体』であることを明らかにされた。
扁桃体の機能を消失させると、総運動時間が増加したのだ。
扁桃体というリミッターが外れた身体は、よく動くらしい。

扁桃体といえば『恐怖行動』であろう。
闘争-逃走本能(fight-or-flight response)が生物には刻まれている。
自身への防衛本能によって扁桃体というリミッターが機能するとしたら。
『忘己』こそ、パフォーマンス向上に望ましいマインドセットなのかも知れない。確かに、イチローや大谷翔平などトップ of トップのアスリートは、なにかの「ために」プレーしているようには見えない。
「ために」を忘れ、目の前に没頭しきった時に、全てのリミッターが外れるのかもしれない。

気になるのが、リミッターが外れたときの弊害についてだ。
漫画NARUTOでは、八門遁甲(はちもんとんこう)という門が描写された。

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✅ 八門遁甲(はちもんとんこう)
- 作中でロック・リー・マイト・ガイの師弟と、ガイの父マイト・ダイが使用する木ノ葉流体術の奥義であり、体に8つある“門(経絡の弁≒リミッター)”をチャクラによって無理矢理外すことによって、通常では出すことのできない身体の潜在能力を引き出すことが出来る。
- 有り体にいえば「火事場の馬鹿力」を意図的に発揮させる術で、これにチャクラによるブーストを掛けることで、常人離れした忍すら驚嘆する瞬発力を得る。
- 門は頭に近い場所から、右脳に開門、左脳に休門、胴体に生門・傷門・杜門・景門・驚門、心臓に死門の八つ。
- 非常に強力な技であるが、限界以上の力を無理矢理引き出すことになるために、身体にはとてつもない過度の負担がかかってしまい、開けた門の数によっては使用後に動くこともままならなくなる。そう言った大きなリスクから、八門を開く事で使われる体術含め禁術となっている。
- 八門全てを開いた状態は『八門遁甲の陣』と呼ばれ、自身より遥か格上の相手(五影クラスの大物)でさえ圧倒してしまうほどの力を得られるが、使用者はほぼ確実に死ぬ。
🌍 参考サイト >>> site.

扁桃体というリミッターを外すことは、即時的なパフォーマンスには善をもたらすだろう。
今後は、同時に作用するであろう負の影響についても調査し、知らなければならない。

では 心おきなくあの技をやります…
なぜなら今が その…大切な人を守る時!!

ロック・リー

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