滑膜炎の弊害。変形性関節症の鍵媒介者
📖 文献情報 と 抄録和訳
滑膜炎は変形性関節症における骨髄病変と膝痛の関連を媒介する
[背景・目的] 変形性膝関節症の痛みの原因として、軟骨下骨髄病変(Bone marrow lesions, BML)と滑膜炎が重要であることはよく知られているが、BMLと膝痛の関係において滑膜炎が仲介役を担っているかは不明である。
[方法] 米国国立衛生研究所変形性関節症バイオマーカーコンソーシアム(FNIH)コホートにおいて、ベースラインと24ヶ月目に磁気共鳴画像(magnetic resonance imaging, MRI)を撮影した600人の被験者を分析した。BMLと滑膜炎は、MRI Osteoarthritis Knee Score(MOAKS)スコアリングシステムに従って測定した。BMLは5つのサブリージョンでスコア化された。滑膜炎のスコアは、浸出液とHoffa-synovitisの合計で算出された。膝の痛みはWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index(WOMAC)により評価した.線形回帰モデルを用いて、BMLと滑膜炎がそれぞれ膝痛に及ぼす自然直接効果(NDE)、および滑膜炎を介した自然間接効果(NIE)を解析した。
[結果] 590名(女性58.8%、平均年齢61.5歳)が本解析に参加した。NDEについては、膝痛は横断的に内側大腿脛骨BML(β = 0.23, 95% CI: 0.09, 0.38)および滑膜炎(β = 0.40, 95% CI: 0.20, 0.60)と関連していた。縦断的な関連は有意であった[内側大腿脛骨BML(β = 0.37, 95% CI: 0.21, 0.53); 滑膜炎(β = 0.72, 95% CI: 0.45, 0.99)].NIE解析では、滑膜炎はベースライン(β = 0.051, 95% CI: 0.01, 0.09)および24ヶ月間(β = 0.079, 95% CI: 0.023, 0.15)における内側大腿脛骨BMLと膝痛の関連を媒介し、媒介割合はそれぞれ 17.8%, 22.4%であった。
[結論] 滑膜炎は、内側大腿脛骨BMLと膝痛の関連を部分的に媒介する。
🌱 So What?:何が面白いと感じたか?
Silent Knee OAという用語をご存知だろうか。
Silent Knee OAとは、画像所見(KL分類≧1)を有するにも関わらず、膝疼痛などの症状を有さない膝OAのこと。
過去の報告では、KL分類≧1の患者のうち、19〜85%がSilent knee OAであることが分かっている(📕Bedson, 2008 >>> doi.)。
このような画像-症状の不一致は膝OA以外でも報告されているところだが、その不一致のBlackBoxの中で、膝疼痛に手引きしている鍵となる媒介者が明らかになった。
それが『滑膜炎』である。
今回の場合には、関節裂隙狭小化ではなく、BMLと膝疼痛の間を媒介しているが、構造的変化と症状という視点では一括りにして良いだろう。
そうなると、滑膜炎を引き起こすトリガーが気になるところだ。
なんらかの力学的負荷なのだろうが、自分の中ではまだ不明である。
Silent Knee OAでも不均衡な力学的負荷は加わっているはずなので。
とにかく、その部分にアンテナ強度を最大にして生活していこう。
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