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無作為化比較試験の未完率○%。研究計画登録の質が低いほど未完に

📖 文献情報 と 抄録和訳

無作為化試験の非登録、中止、非公表。メタリサーチの繰り返しによる分析

Speich, Benjamin, et al. "Nonregistration, discontinuation, and nonpublication of randomized trials: A repeated metaresearch analysis." PLoS medicine 19.4 (2022): e1003980. https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1003980

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar, medical tribune (日本語)

[背景・目的] 2000年から2003年にかけて承認された1,017件の無作為化臨床試験(RCT)のうち25%が早期に中止され、44%が12年間の追跡調査期間中に未発表のままであったことを我々は以前に明らかにした。10年後の現在、(1)完了率と出版率は向上しているか、(2)未発表のRCTは試験登録でどの程度特定できるか、(3)プロトコールの報告品質とRCTの早期中止や未発表の関連について評価することを目的としている。

📕 JAMA掲載❗️20年前のRCT未完率についての研究
Kasenda, Benjamin, et al. "Prevalence, characteristics, and publication of discontinued randomized trials." Jama 311.10 (2014): 1045-1052. >>> doi.

[方法] 2012年にスイス、イギリス、ドイツ、カナダの研究倫理委員会で承認された326件のRCTプロトコールをこのメタリサーチ研究に含めた。パイロット試験、フィージビリティ試験、および第1相試験は除外した。各試験のプロトコールから試験の特徴を抽出し、対応する試験登録(プロトコールで報告されていない場合)および全文公開を2022年2月まで系統的に検索した。試験登録については、(i)World Health Organization: 国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)、②米国国立医学図書館(ClinicalTrials.gov)、③欧州連合医薬品規制当局臨床試験データベース(EUCTR)、④ISRCTN登録、⑤Googleを検索した。全文掲載の論文については、PubMed、Google Scholar、Scopusを検索した。RCTの登録、中止(中止の理由を含む)、公表の有無を記録した。RCTプロトコルの報告の質は、33項目のSPIRITチェックリストで評価した。多変量ロジスティック回帰を用いて、独立変数であるプロトコールの報告品質、計画サンプルサイズ、対照の種類(プラセボ対その他)、募集予測の報告、単一施設対多施設試験、企業対研究者派遣と、2つの従属変数(①RCT結果の公表、②募集不良による試験中止)の関連を検討した。

[結果] 対象となった326試験のうち、19試験(6%)が未登録であった。98試験(30%)が早期に中止され、その多くは募集不良が原因であった(37%;36/98)。5件に1件(21%;70/326件)の試験が10年後も未発表のままであり、未発表の試験の21%(15/70件)は未登録であった。医師がスポンサーとなった147の試験のうち23の試験(16%)が試験レジストリに結果を報告したのに対し、企業がスポンサーとなった179の試験のうち150の試験(84%)が結果を報告した。RCTプロトコルで報告されたSPIRIT項目の割合の中央値は69%(四分位範囲61%~77%)であった。試験の中止と関連する変数は見つからなかったが、試験プロトコールの報告品質が低いことは非公表と関連していた(オッズ比、SPIRIT項目の割合が10%増加するごとに0.71、95%信頼区間、0.55~0.92、p = 0.009)。研究の限界として、サンプル数が少ないため、回帰モデルによる有意な関連性の同定が困難であった可能性がある。

[結論] 我々は、早期試験中止の割合は過去10年間変化していないことを観察した。RCTの未発表は減少しているが、依然として多い。未発表試験の21%は登録で確認することができなかった。医師がスポンサーとなった試験のうち、試験登録で結果を報告しているのは16%のみであった。RCTプロトコルの報告品質が高いほど、結果の公表と関連していた。臨床研究の効率と透明性を向上させるためには、すべての関係者のさらなる努力が必要である。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

すべてのものは2度つくられる
7つの習慣

計画されたRCTの21%が、未完(非論文化)であった。
今回抄読の研究は以上の結論を明らかにし、20年前よりは向上しているものの、まだまだ未完が多いという考察をしている。
その中で、注目したいのは「RCTプロトコルの報告品質が高いほど、結果の公表と関連していた」という結果。
良き計画は、良き実りを約束するらしい。

その仕組みの1つに「プリコミットメント効果」がある。

✅ プリコミットメント効果
- 周囲に宣言することで、実現に向けた行動をさせる自己制御の方法
- 「夢は宣言すると叶う」という言い回しがあるが、発言することで実現しようとする心理効果に基づいている。
- 人は公の場で発言すると、その発言に見合う意思決定や行動をするようになる。「約束」「言質(後で約束の証拠になる言葉)」という意味の英単語であるコミットメントに由来し、プリコミットメント、または事前コミットメントという。
- プリコミットメントは、目標を達成するための仕掛けであるコミットメントデバイスの1つで最も頻繁に利用される。
🌍 参考サイト >>> site.
📕 Sunstein, 2014 >>> doi.

かくいう僕も、数回、研究登録サイトに登録をかけたことがある。
登録をかけると、いくつかのことが起こった。
・インターネットで公開されているので、常に身が引き締まる感じがした
・国際誌・国際学会から「〇〇の論文ができたらウチへ投稿してくれ」的なメールがバンバン届く
・研究実践の最中に道に迷ったときに、登録した研究計画に立ちもどる(閲覧する)ことが多かった

etc...
つまり、自分自身の手でつくって登録した研究計画は、
自分自身に怠惰を許さない「鎖」となり、
自分自身と研究の存在を知らせる「狼煙(のろし)」となり、
岐路を選択する際の「地図」となった。
その研究計画の質を極限まで上げることは、そりゃ成功につながる!、と思う。

そして、よい研究計画には、すでに定義がある。
たとえば、RCTの研究計画なら33項目の「SPIRITチェックリスト」がある。
そのすべてにチェックが入るよう、計画を立てる「だけ」だ。
「だけ」なのに、僕を含め、ほとんどの人ができない。
失敗するためにはじめる人は1人もいないのに、
成功するための労苦に耐えないというのは、一体どうしてだろう?
わかっている。
怠惰。
僕は、自分の怠惰に克ちたい。
そのためには、意志力よりも知識と技術が役に立つ。
最良の研究計画を立てて、登録せよ。
それが鎖・狼煙・地図となり、お前を縛り・宣伝し・導くだろう。
勝ってから、始めるのだ。

誘惑のないこと、それを感じないことが尊いのではない
それに打ち勝っていく処に尊さがあるのだ

神谷美恵子

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