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ビューイング仮説。視覚FBは与えるほどいい

Super Human | 理学療法士/保健学博士 Ph.D.

📖 文献情報 と 抄録和訳

脳卒中後の地上側歩行非対称性に対するフィードバックの頻度の影響

📕Powers, Jessica, et al. "The effect of frequency of feedback on overground temporal gait asymmetry post stroke." Topics in Stroke Rehabilitation (2021): 1-10. https://doi.org/10.1080/10749357.2021.1943796
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[背景・目的] 一時的な歩行非対称(Temporal gait asymmetry: TGA)は脳卒中患者の55%に影響を及ぼす。本研究では、地上歩行訓練中の増強されたフィードバックがTGAに及ぼす影響について検討した。

[方法] 18名の慢性期脳卒中患者が、2種類のフィードバック表示(AまたはB)と3種類のフィードバック頻度(フィードバックなし(0%),交互歩行試行後(50%),毎試行後(100%))のいずれかを受けるよう無作為に割り付けられた。ディスプレイAは、TGA比を横軸に沿った縦線で表示し、中央で完全対称になるようにしたディスプレイBは、片脚の立脚時間を棒グラフで示したものである。参加者は、与えられたフィードバックで30秒間の試行を25回繰り返した(acquisition)。24時間後、参加者はフィードバックなしで30秒試行を10回繰り返した(保持)。感圧マットがTGAと速度を記録した。TGAと速度の変化は、個々の運動学習曲線をプロットし、フィードバック群ごとに局所推定散布図平滑化(LOESS)を用いて曲線をあてはめることによって調べた。フィードバックの効果は、事前に、LOESSでフィットした曲線が、習得から保持まで勾配が減少しているものと定義した。

[結果] LOESS曲線は、TGAについては100%FB (typeB)群のみ、速度については50%FB (typeA)群および0%FB群において減少勾配を示した

[考察] 本研究は、地上歩行中に高い頻度で行われる視覚的フィードバックが、歩行速度を低下させることなく脳卒中後のTGAを変化させることができるという予備的な証拠を提供するものである。脳卒中後のTGAを改善するために、高頻度の視覚的フィードバックを用いた地上歩行介入は、調査する価値があると考えられる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

まず、パフォーマンスに対するフィードバックとして、大きく内在的と外在的に分かれる。

✅ 内在的フィードバック、外在的フィードバック
- フィードバック(feedback)は練習中、あるいは練習後に用いられるもので、運動の結果として利用可能なものを指す
- 内在的フィードバック(intrinsic feedback):視覚、固有受容感覚など
- 外在的フィードバック(extrinsic feedback):外部から人工的に与えられる言語的FBなど
📕谷浩明. 理学療法科学 21.1 (2006): 69-73. >>> doi.

スライド2

FBの頻度を考えたとき、言語的FBにあたる外在的フィードバックには『ガイダンス仮説』というものがある。

✅ ガイダンス仮説とは?
- 1984年にSalmoniらが提唱したガイダンス仮説
- 結果の知識(knowledge of results: KR)は学習にとって必要だが, 練習試行中の過剰なKRは, KRが与えられない想起テスト試行中のパフォーマンスの低下を招く
- 毎試行後にKRが与えられると, そのKRに過剰に依存してしまうため, 学習が阻害される
- Swinnenらのは、内在的フィードバックへ注意を向けるよう教示した被験者の方が、想起テスト時の正確さにおいて勝ることを示している(📕Swinnen, 1990 >>> doi.)。
📕谷浩明. 理学療法科学 21.1 (2006): 69-73. >>> doi.

ガイダンス仮説によれば、フィードバックは与えすぎないほうがいい。
自転車の補助輪が自立の阻害になるように、言語的FBは依存を生むらしい。
一方、視覚的なフィードバックは「多いほど良い」ことが示された。
こと運動学習においては、聞くことは少なく、見ることを多くするのがいいらしい。
ガイダンス仮説をもじって、『ビューイング仮説』
視覚FBは過剰依存をつくらず、運動学習に正の効果をもたらす。

だが、これはなぜだろう・・・?
いくつか『ビューイング仮説』の仕組みを妄想してみた。
・視覚的フィードバックの方が運動イメージに近い
・視覚的フィードバックは被験者が自分で獲得タイミングを規定しやすい
・注意を向ける部分も規定しやすい
・人的対象(セラピスト)がいないため心理・社会的側面が介在しにくい

「百聞は一見にしかず」とはよく言ったものだ。
運動学習を考えたとき、『百聞』は害であり、『百見』は益をもたらすかもしれない。
フィードバックは、種類、量、タイミングを考慮するようにしてみたい。

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