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膝痛を10年間追跡(n=947)。『筋肉質な身体』が重症化を防ぐことが明らかに

📖 文献情報 と 抄録和訳

筋肉の機能、質、相対的な質量は、10.7年間の膝の痛みの軌跡と関連する

Pan, Feng, et al. "Muscle function, quality, and relative mass are associated with knee pain trajectory over 10.7 years." Pain 163.3 (2022): 518-525.

🔗 DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 関節周囲筋は運動器痛の病態に重要な役割を担っている。我々は最近、痛みの集団が異なるサブグループからなり、その原因やメカニズムが異なる可能性があることを報告した。本研究では、除脂肪体重、筋力、筋の質と10.7年間の痛みの軌跡との関連を検討することを目的とした。

[方法] 人口ベースのコホート研究からの947人の参加者を分析した。除脂肪体重と脂肪量の評価には、二重エネルギーX線吸収法を使用した。脚力、膝伸展筋力、下肢筋質の測定・算出を行った。膝の痛みはWestern Ontario and McMaster Universities Osteoarthritis Index pain questionnaireで評価した.X線写真による変形性膝関節症の評価を行った.

[結果] 3つの明確な痛みの軌跡が確認された。「最小限の痛み」(53%)、「軽度の痛み」(34%)、「中程度の痛み」(13%)であった。除脂肪体重の割合は、「軽度の痛み」(相対リスク比[RRR]:0.95、95%信頼区間0.92-0.98)および「中程度の痛み」軌道(RRR:0.92、95%信頼区間0.87-0.96)の低リスクと関連していた。膝の伸筋力と筋肉の質の向上は,「軽度の痛み」と「中等度の痛み」の軌跡と関連していた(RRR:0.52-0.65,すべてP<0.05).同様の結果は、X線写真による変形性膝関節症の患者でも見られた。

[結論] 下肢の筋力と質、および相対的除脂肪体重が高いほど、膝痛の重症化リスクが低下することが示され、筋機能と筋組成の改善が、膝痛の好ましくない経過の持続から保護する可能性が示唆された。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

約1000人を10年間追跡したというのは、圧巻である。
そして、その結果下肢の筋力と質、および相対的除脂肪体重が高いことが膝痛の重症化リスクを低減することが明らかとなった。
すなわち、『太るな、マッチョになれ』、ということだ。
惜しいかな。この研究をさらにグレードアップさせるとしたら、「歩行時の運動学(三次元動作解析)」を加えることである。
なぜなら、筋肉質な身体が膝痛の重症化を防ぐルートは、大きく2つ考えられ、そのどちらの要因の威力が大きいかを知るヒントを得ることができるからだ。

✅ 筋肉質な身体が膝痛の重症化を防ぐ2つのルート
▶︎ ルート1 - 力学的な要因
・筋肉量増大、筋力増大が歩行時の関節運動や関節間力を変化させ、力学的負荷による膝痛発生を予防するルート
・研究例:大腿四頭筋の筋力は、男女ともに歩幅や歩行時の膝の運動量の変化と有意に相関していた(📕Nishino, 2021 >>> doi.)。
・推奨される介入は、筋力トレーニング+運動学習(運動制御、歩容の改善)
▶︎ ルート2 - 代謝的な要因
・筋肉量増大、筋力増大が膝関節周囲の代謝状況を変化させ、例えば異化傾向から同化傾向に移行させるなどして、膝痛発生を防ぐルート
・研究例(以下note参照):膝OA者の筋トレは、膝周囲組織の異化を防ぐ(📕 Vasilceac, 2021 >>> doi.)
・推奨される介入は、筋力トレーニング onlyでOK

筋肉は裏切らない。強く共感する。
筋肉は、あらゆる面で裏切らない。
その証拠が、また1つ増えた。
春だ、貯筋しよう🌸!

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