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炎症を鎮める運動者の血:P.S.鬼舞辻無惨への手紙

▼ 文献情報 と 抄録和訳

ランナーの血清は炎症を鎮めて脳を活性化する

De Miguel Z, Khoury N, Betley MJ, et al. Exercise plasma boosts memory and dampens brain inflammation via clusterin [published online ahead of print, 2021 Dec 8]. Nature. 2021

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 運動は,認知機能の老化や神経変性を遅らせるなど,人や動物の健康のあらゆる面で有益である。運動による認知機能の向上には、海馬における可塑性の増加と炎症の抑制が関係しているが、これらの効果を媒介する因子やメカニズムについてはほとんど知られていない。

[方法・結果] 今回、私たちは、28日間、自由にランニングホイールで遊べる環境で過ごしたマウスから採取した「ランナー血漿」を、座っているマウスに注入することで、ベースラインの神経炎症遺伝子の発現が減少し、実験的に誘発された脳の炎症が抑制されることを示した。また、血漿中のプロテオミクス解析により、クラスターリン(CLU)を含む補体カスケード阻害物質が協調して増加することが明らかになった。CLUを静脈内注射したところ、脳内皮細胞に結合し、急性脳炎症モデルマウスおよびアルツハイマー病モデルマウスの神経炎症遺伝子発現を低下させることがわかった。また、構造化された運動に6ヵ月間参加した認知機能障害患者は、血漿中のCLU濃度が高かった。

[結論] これらの知見は、脳血管系を標的とし、脳に恩恵をもたらす、移植可能な抗炎症性運動因子が、運動を行うヒトに存在することを示している。また、運動は凝固や補体に作用する因子の合成を高めることで、炎症を抑えるが、その中の補体カスケード抑制因子clusterinは脳血管内皮に働いて、脳炎症を鎮めることで、間接的に脳細胞の増殖や活動を高めている。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

Natureである。常に首を垂らした状態で謁見しよう!
この論文テーマが「血」だ。
今回の血に関する新知見を見たとき、その思いが詩的に湧いてきた。
以下、鬼滅の刃のパロディ風に表現してみる。

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拝啓
鬼舞辻無惨 様
ご無沙汰しております・・・。
あの最終決戦より、はや百数十年ぶりですね。

このたび、Nature誌において、生き物の血に関する新知見が発表されました。
この研究によれば、生き物の血は「内発的」です。
私たちが動くことで、運動することで、私たちの炎症を鎮める血が生成される。
・・・すなわち。
お前の血は、必要ないことが、改めて明らかとなったのです。
それが伝えたくて・・・。

あなた方、鬼の血は「外発的」です。
だって、与えることしかできないではありませんか。
その個人から湧き上がってくる生命ではなく、単なる輸血、ではありませんか。

私たちは、違う。
私たちの血は、どこまでも内発的だ。
誇らしい、愛しい、手づくりの血だ!
アラジンは、ジーニーに頼らないことを決めてから、ほんとうのアラジンになった。
私たちは、ほんとうの私たちとして、生きて、死ぬことを矜持としている。
私たちは、私たちが動くことによって、新しい私たちをつくってゆくだろう。
そこに、お前の血は必要ない。
お前は変われない、完全だから、完璧だから。

さて、改めて私たちの決心を伝えよう。
私たちは、ほんとうの私、手づくりの私として、どこまでも生きてゆく。
取ってつけたような生命体として、生きるつもりはない。

お前に強く問う

お前の血
私たちの血
どちらが、稀有だろうね?

珠世、胡蝶しのぶ
令和3年12月12日
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僕たちの血は、尊い。 

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