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社会的結合(Social Bonding)、社会的橋渡し(Social Bridging)

📖 文献情報 と 抄録和訳

社会的ネットワークと認知機能。社会的橋渡しと結合のメカニズムの評価

📕Perry, Brea L., et al. "Social networks and cognitive function: An evaluation of social bridging and bonding mechanisms." The Gerontologist 62.6 (2022): 865-875. https://doi.org/10.1093/geront/gnab112
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✅ 前提知識1:社会的結合(Social Bonding)と社会的橋渡し(Social Bonding)
- 社会的結合と社会的橋渡しの違いは、社会集団やコミュニティにおける関係や結びつきの性質に関係する。
- 社会的結合は、グループやコミュニティ内のものであるのに対し、社会的橋渡しは、社会グループ間、社会階級、人種、宗教、その他重要な社会人口学的特性や社会経済学的特性を持つものである。社会的結合と社会的橋渡しの区別は、様々な関係性やネットワーク特性との関連で行うことができる。
- 以下の表に違いをまとめた
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スライド2

✅ 前提知識2:ネットワーク閉鎖(Network closure)と構造穴(Structural hole);上図参照
- 2つのノードを比較すると、リンク数が同じでも、ノードAの方がノードBよりも新規情報を得やすい。これは、Bに接続されているノード同士も高度に接続されているためである。したがって、Bから得られる情報は、他のノードからも容易に得ることができる。さらに、Bが異なる接続から得る情報は重複している可能性が高いため、ノードBを含む接続は冗長であると言われています。逆に、ノードAの位置は、3つの異なるクラスタ間の橋渡し役、つまり「ブローカー」の役割を果たすことになる。従って、ノードAはそのコンタクトから冗長でない情報を受け取る可能性が高い。非冗長なコンタクト間の隔たりについては、「構造的な穴」という用語が使われる。2つのコンタクトの間に穴がある結果、それらは第三者に(ノードAに)ネットワーク利益を提供する。
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[背景・目的] 社会的つながりは認知機能の加齢と関連しているが、この関係を促進する社会的メカニズムについてはほとんど合意が得られていない。本研究では、社会的つながりの2つの形態-緩くつながった個人の広範で多様な集合へのアクセス(すなわち、社会的橋渡し)および密接なつながりの支持的ネットワークへの統合(すなわち、社会的結合)に焦点を当て、社会的つながりの9つの測定法を評価した。

[方法] Social Networks in Alzheimer Disease研究に参加した311人の高齢者の自心的ネットワークと認知データを使用した。社会的絆とグローバル認知機能、エピソード記憶、実行機能との関連を推定するために線形回帰を使用した。

[結果] 社会的橋渡しを示す指標(ネットワークの大きさ、密度の低さ、弱いつながりの存在、非親族の割合)は一貫して認知機能の向上と関連していたが、社会的結合を示す指標(密接なつながり、多重の支援、接触頻度の高さ、関係の質の高さ、既婚)はほとんど効果を示さなかった

[考察] これらの知見は、認知機能と記憶に対する社会的つながりの保護効果は、主に、より大きく多様な周辺他者集団との不規則な接触によって駆動される認知的予備メカニズムを通じて作用する可能性があることを示唆している。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

以前、社会的ネットワークと認知機能の関係を明らかにした論文を抄読した。

その論文中では、社会的ネットワークが1つのものとして認識されていたが、今回抄読の研究では社会的ネットワークが①社会的結合と②社会的橋渡しの2種類に分類され、その後者の方が認知機能改善に寄与していることが明らかとなった。

いつもの人間関係というのは、『楽』なものだ。
いつもの家族、いつもの同僚、いつもの友達、いつもの研究仲間。
だが、この研究は『それでは認知機能は改善せぬぞ』を明らかにしたのだ。
人間の環境と快適さ、成長を示す3つのゾーンが示されている。

✅ 人間の環境と快適さ、成長を示す3つのゾーン
- Comfort zone(コンフォートゾーン): 「心地よいゾーン」。良くも悪くもストレスなくいられる心の状態を表す。安心していられる状態でもあり、どっぷりぬるま湯につかっている状態とも解釈できる。
- Groan zone(グローンゾーン): 「うめきのゾーン」。ストレスや葛藤がある状態。
- Growth zone(グロウスゾーン): 「成長ゾーン」。コンフォートゾーンを飛び出して、グローンゾーンを乗り越えた先に辿り着く成長した状態のこと。それは大きく広がった新たなコンフォートゾーンでもある。
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このゾーンの中で社会的結合は、Comfort zoneで終始しており、社会的橋渡しはGroan zone、Growth zoneへ足を踏み出す。
新規へのストレスを伴った冒険が、脳を活性化させるためには必要なのかも知れない。

近年の研究において、SNSは現実より社会的橋渡しが強調されるコミュニケーション方法であることが示されていた(📕Brandtzæg, 2010 >>> doi.)。
高齢者のデジタルスキルが向上し、SNSを日常的に用いることは、認知機能の改善に威力を持つかも知れないと思った。

人生の妙味は、冒険とChallengeにあるのだ
神谷美恵子

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