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愛を与えるタッチ速度。快感を感じさせる一貫した速度

📖 文献情報 と 抄録和訳

肌タイプ別の感情的な触覚の快感を個人レベルでモデル化することで、信頼性が高く安定した基本機能が明らかに

📕Crucianelli, Laura, Marie Chancel, and H. Henrik Ehrsson. "Modeling affective touch pleasantness across skin types at the individual level reveals a reliable and stable basic function." Journal of Neurophysiology (2022). https://doi.org/10.1152/jn.00179.2022
🔗 DOI, PubMed, Google Scholar 🌲MORE⤴ >>> not applicable.

🔑 Key points
🔹触覚は、ゆっくりとした愛撫のような速度で与えられるときに最も心地よいものとして知覚され、C-触覚求心性神経を活性化することが知られている。
🔹集団レベルでは、触覚の快感と触覚の速度は、毛深い皮膚で信頼できる関係パターンを示す。
🔹また、個人レベルでも、皮膚の種類やテストセッションを問わず、触覚的快感の知覚は一貫したパターンを示すことを見出した。
🔹しかし、相互受容能力の個人差や自己申告のうつ病が関与している。

[背景・目的] 触覚は、C触覚求心系を最適に活性化することが知られている速度で与えられると、最も心地よく知覚される。グループレベルでは、0.3~30cm/sの速度で触ったときの快感の評価は逆U字型の曲線を描き、1~10cm/sの間で快感が最大となる。しかし、この関数の個人レベル、および毛髪密度に基づく肌タイプ別の有病率、信頼性、安定性はまだ不明である。

[方法] そこで、123名の被験者を対象に、毛深い皮膚(前腕、手背)と毛のない皮膚(掌)の両方において、柔らかいブラシで行う7種類の速度(0.3、1、3、6、9、18、27cm/s)のテストを行った。

[結果] その結果、毛深い皮膚(67.1%)と毛のない皮膚(62.6%)の両方で、快感と接触速度の関係は個人レベルで負の二次モデルで有意に最もよく記述されることが示唆された。インターセプトの精度および自己申告の抑うつ度は、それぞれ二次モデルの適合度および曲線の急峻さに関連していた。個人レベルでの二次モデルの適合率は、身体部位(62.6%, 実験1)、2回の実験セッション(73%-78%, 実験2)、各速度の繰り返し回数(実験3)に関係なく、安定していた。

[結論] 個人の触覚的快感の知覚は、皮膚の種類によらず特徴的な速度依存関数に従うとともに、特性的な特徴を示している。今後、精神疾患の行動バイオマーカーとして、触覚を利用する可能性をさらに検討することができる。

🌱 So What?:何が面白いと感じたか?

愛の実体は、単なる『触覚』である。
この大胆すぎる結論を下されたのは、有名なハーローによる猿の実験である。

✅ ハーローによる猿の実験
アカゲザルの赤ちゃんのいるオリに、お母さんザルを模した人形を入れる。
この「お母さんザル人形」は2タイプ用意する。
①針金がむき出しだが、おっぱい(哺乳瓶)があるタイプ
②おっぱいが出ない(哺乳瓶がついてない)が、肌触りのよいフェルトでくるんだタイプ

そうすると、赤ちゃんザルは明らかに②の「フェルトお母さん」を好み、①の「針金お母さん」にはお腹がすいたときだけに近寄る、という行動パタンを示すことが分かった。
つまり、赤ちゃんザルにとって、お母さんに求めるものは
「肌触りの良さ・心地よさ」>「栄養」
という優先度があるらしいことが示された実験。

📕 Harlow, Harry F. "The nature of love." American psychologist13.12 (1958): 673. >>> doi.

もしかしたら、触覚による絆は、マズローの欲求段階において、衣食住より底辺に位置する最も根源的な欲求なのかもしれない。
そんな触覚において、『速度が重要だ』ということ、そして『その快感パターンは一貫している』ことが示されたことは、患者さんへのタッチを生業とする理学療法士として興味を持たないわけにはいかない。

3-10cm/s。
自分のマッサージ、筋モビライゼーションの速度はこれに比べると、たぶん早かった。
今日からは、目的もよるのだろうが、基本的には『ゆっくり』を意識してみようと思う。
マッサージ、モビライゼーションの質を考える上でのパラメータが、1つ増えた。
明確な漸進、嬉しい。

毎日1センチずつでいいから、
より良い未来に近づくことをやろう。

ダグ・ファイアボー

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