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🇬🇪ジョージアაბანო(アバノ)編

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コーカサス地方のジョージアに根付く温水浴文化【აბანო(アバノ)】についての、2016年夏のフィールドワークに基づく取材・体験・考察記事シリーズです。
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記事一覧

ジョージアაბანო旅 導入編

ジョージアაბანო旅 導入編

リトアニアの蒸気浴文化Pirtisの取材体験記に続く、サウナ比較文化学旅シリーズ第2弾で取り上げるのは、ジョージアに根付く温水浴文化、აბანო(アバノ)です!

街並みから食まで、とにかく”古今東西”まぜこぜジョージアと聞くと、アメリカの州の名前のほうが先に浮かぶ人もまだ少なくないかもしれません。2015年に「グルジア」から「ジョージア」へと正式改称されたこの国の所在は、黒海とカスピ海に挟まれた

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ジョージアაბანო旅① 温泉に惚れ込んだ国王によって建設された、首都トビリシ

ジョージアაბანო旅① 温泉に惚れ込んだ国王によって建設された、首都トビリシ

ジョージアの温浴文化「アバノ」旅の出発点となるのは、やはりまず首都トビリシです。
首都名が公式的に「トビリシ(თბილისი / Tbilisi)」と定められたのは、ソ連時代の1937年以降のことで、古くはティフリス(ტფილისი / Tiflis)と呼ばれる街だったそうです。

温泉の治癒効果に魅せられた国王が開拓した首都現在のトビリシが置かれる地は、古代すでにいくらか集落はあったものの、まだ

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ジョージアაბანო旅② 温泉街の公衆浴場は、女性市民の身繕い&女子会スポット

ジョージアაბანო旅② 温泉街の公衆浴場は、女性市民の身繕い&女子会スポット

今回は、前記事で紹介したジョージアの首都トビリシの旧市街にある一大温泉街アバノツバニ(აბანოთუბანი)に現存するさまざまな浴場の中で、女性が入れる唯一の共同浴場である、დედოფლის აბანო(デドプリス・アバノ)、通称Queen's Bathという、かなりディープなローカル浴場での体験や観察記をお伝えします。

ジョージアの公衆浴場では、個室浴場か共同浴場をまず選ぶジョージアの浴場「

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ジョージアაბანო旅③ 温泉大国へ最初に入浴文化を根付かせたのは、あの巨大帝国だった

ジョージアაბანო旅③ 温泉大国へ最初に入浴文化を根付かせたのは、あの巨大帝国だった

「アバノの歴史を紐解きたい」という私の要望を知り、ジョージア文化に精通したフィンランドサウナ協会員さんが、とても頼もしい現地のエキスパートを紹介してくださいました。ジョージアの伝統建築や文化財の修復・再建に携わる、建築家・建築史家のDavid Givishliviさんです。

「ジョージアでは、長い歴史のなかで、なぜ蒸気浴ではなく温水浴が主流であり続けたのですか?」という問いを、出発前のやりとりで

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ジョージアაბანო旅④ ローマ風呂が滅びようともジョージア風呂が不滅だったわけ

ジョージアაბანო旅④ ローマ風呂が滅びようともジョージア風呂が不滅だったわけ

やや間が空きましたが、ようやくジョージアაბანო(アバノ=風呂)旅の最終回です。
前回の記事で、ヨーロッパとアジアと中東の交差点ジョージアで、なぜかメジャーな蒸気浴ではなく、日本人同様の温水浴が根付いた発端の理由として、ローマ帝国時代に持ち込まれた古代ローマの公衆浴場での入浴文化の影響力を挙げました。

けれどご存知のように、かつてローマ帝国のすみずみまで伝搬した公衆浴場文化は、帝国の衰退ととも

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