必殺ブローを手に入れ補導された話Ⅱ
中編 Analyze Blow recipe
ー 前回(前編)の実録 ー
要約:
ゲーセン帰りに不良集団に囲まれてカツアゲに合う。無慈悲な暴力に抗うスナフキン(私)が偶然繰り出した拳が必殺ブローだった。
今回はその続きから。
Hero's come back
翌日、友人と昨日のカツアゲ事件がクラス学校中で話題になった。何より不良高校生を倒したという嘘のような話が盛り上がり、クラスで話題の中心になった。だが、ヒーローになったわけではない、私が不良高校生を倒したのはマグレだという川口探検隊のように追求が始まったのです。漫画のような事が起こるわけがない!の大合唱。
新日本プロレスは最高だぜー!
休み時間、放課後を通してもこの話題が続く。
「秘孔」をつけるわけがない!「空手チョップ」「廬山昇龍覇」なのでは?と少学生(男)らしい定番な意見と憶測やらで一悶着あり、その日はチョップゴッコをしまくった。「秘孔つきゴッコ」と発展しいつもの流れで 「プロレスごっこ」になり次第に”喉仏”を狙う遊びで着地していった。
友人G君のサソリ固めが決まっるタイミングで学校で1,2を争う頭のいい新日派のF君(開成中合格)が皆に向けて演説を始めた。
”喉もどけ”ゴッコではなっく、実際に再現できないか検証するべきではないか?スナフキン(私)の疑惑も晴れる。俺たちは”一撃必殺の技を会得する事”と同時に”ゲームセンターを支配できる”のではないか?
と見事なプレゼンを披露した。
私達:『おおおおおおー、それだ!』の大合唱。
私も嘘つき呼ばわりされるのも勘に障ったが、彼の提案した”ゲームセンターを支配する”という魅惑に心が踊った。何より彼とは新日派でウマが合う、やっぱりF君は頼りになるぜ!新日本プロレスは最高だぜー!
Mission Possible
学区外の地域は危険と隣合わせ課題は山積していた。地域のゲームセンターに中高生が我が物顔で支配し、人気ゲームを占領されゲームの技量とは別次元のヒエラルキーに小学生キッズは悩まされていた。何より夕刻-魔の時間-にカツアゲに遭遇する危険な旅路をしなければならず、小学生の我々は圧倒的な数の暴力でしか身を守る術がなかったのが最大の課題だったのです。
我々キッズは少年ジャンプ愛に満ちた平和な世界とゲームの技量が支配するユートピアを求めていました。ゲームセンターはゲームの上手い奴が支配し君臨しなければならないと信じ、『ゲーム愛ゆえに小学生キッズは悲しまねばならぬ!!』と何度も呟いていたものです。
何としても必殺ブローの再現性を確立し、安全圏を確保する事。この甘美な果実は聖域(サンクチュアリ)を羽ばたくペガサスのような提案だったのです。少年達のオモイを乗せた翼は壮大なプロジェクトに変貌していきました。
まさに小宇宙(コスモ)を燃やせ!って奴です。
やれ。
やれる。
やるんだ。
やるしかない。
うおぽおおおおおおおおおおおお!
まさにスパルタンXもとい、プロジェクトXの挑戦者でした。
昭和用語集
会議は踊る、されどドアは出現せず
放課後はT君(5LDK)の家で必殺ブローの再現性を練る会議が始まった。昨日の再現を何度も皆に説明し、”喉ぼとけを殴れば大人を倒せる”という結論にいたり、我々はそれを再現実験をするプランに纏める事になった。
ネットのない時代、クソガキの足りない頭でも呼吸困難になる恐れは何となく理解できた。医学知識を調べる術をすっ飛ばして、どのぐらいの強さで喉仏目掛けて”必殺ブロー”を当てるのかが争点となった。
少年ジャンプメゾットに倣う
当時の少年ジャンプは既に一定のメゾットが存在していたので会議の進行は序盤はスムーズでした。(通称ジャンプメゾットです。)
{強敵⇒修行⇒倒す 以下ループ}のフォーマットが確立されており、修行方法は多種多様だったが大抵が負荷を少しづつ上げていくのが慣習化されており数多く登場していた。また、少年青年向け雑誌には筋トレの折込広告が掲載されていたので、何の疑いも持たずに負荷を掛ければ成長できるという刷り込みがあったと思います。それを参考にした。
重い空気とゲームオーバーの音
私達は単純に体重(体格)の小さい順に喉仏を狙う修行を行い、
一番大きいTK君(172cm※彼は198cmの大男になる)が痛がったり降参するまでが修行のゴールと定めた。
ここまでは予定調和です。
試しに必殺ブローは一発当てるだけの模擬戦を実施したが喉もどけに命中させるだけでも至難を極めた。喉を拳にヒットさせる前に防がれたり、頬に拳が当たって痛いのです。喉仏に命中させるには精度が必要になることがわかった。最初の壁にぶつかった。
どのようにして『必殺ブロー』を当てるかの練習をするのか。この難所は身体を酷使するだけでなく、毎回『必殺ブロー』を外されつづけたら練習ができない状態になる。色々な案が出てきたが、皆が納得できる解決策には至らない。
答えは出て来ない、
沈黙が重くのしかかる。
会議は行き詰まる。時計の刻む音とファミコンの失敗音が聞こえて来る。
他のメンバーも同時並行(交代制)で行っているファミコンソフト
『ドルアーガの塔』のフロア28Fの宝を取りそこねている。ゲームオーバーの画面が再三流れる。
どん詰まり、2重に嵌っている。場の空気は増々重くなっていたのです。
突破口は国是にあり!『友情・努力・勝利』
この窮地を何とかしたかった。
手持ち無沙汰ばかりが増えていった。会議は一行に進まぬ。
このままでユートピアへの実現が崩れてしまう。
あああ、無念。”海のリハク”にも負けぬ懇願を天に向けて仰いだ。
強敵(友)よ、どうか、アイデア、知恵を授けてくれ。頼む。。。
強敵(友)、T・O・M・O、、、、。
友だと!
そうだ!
新日本プロレスのライバル(強敵)は全日本プロレス(全日)だ。
当時の私達男子は強敵(キョウテキ)と書いて、友と読むように洗脳がされていたのです。今現在、お茶の間で人気者である事業家ひろゆき”氏(おフランス在住)が主に用いる論理のすり替えテクニックを用いて<<強敵=ライバル=友>>の三段論法のすり替えから糸口をつかんだのでした。
全日本プロレスは伝統的に水平チョップを受け継ぎ至高の技にしてるレスラーが多数いる。力道山→ジャイアント馬場がチョップを磨き上げてるではないか。当てる事に特化したからチョップは狙いが定まり強いのだ。
なんで、こんな事に気づかなかったのか!
なんと、ここでも少年ジャンプの基本テーマ『友情・努力・勝利』がすっぽりとハマった。”ライバル=友”から”新日本プロレス”のライバル全日本プロレスで見受ける相伝の”水平チョップ”にたどり着いたのです。
すべての道はジャンプに通じる。
この言葉が真実であり、少年達を導いたのです。
ローマに鎮座するアテナ像が微笑むかの如し、
私の脳内が活性化し、瞬時にスキル(能力)が発動しました。
ピキーーーン。
Science memory
”スキル発動”??本記事はファンタジーもの?
いい加減にせーやと思わないで下さい。
この記事の読者はご存知ないかもしれませんが、
私達の地域(TOKYOキューポラ・アンダーグランド)の小学生の初期常時スキルとして2週間メモリーという技能を有しているのです。
え、言ってる意味がわからないだって。。
簡単に言えば、
2週間だけ学校で習った事を記憶できるという特殊スキルが自動発動できるのです。※2週間経過後、対策しないと学校の授業内容はほぼ忘れます。
通常、日本の小学生は鳥頭(3日で忘れる)が標準仕様なのですが、この地域では首都遷都以降、一宮神宮五芒星の加護を受けて東京外郭環状線の内側に限り通常3日間の記憶容量が4倍強(誤差はある)とされています。
※詳細は民明書房の[護符の効果範囲]の章を参照願います。
丁度先週に、私達は理科(小5)の実験で物質の分け方の実験をしていた記憶が残っていたのです。科学の力は偉大だ、似たような物質でも分離実験で本質を見極める事を学んだばかりだったでした。
必殺ブロー体得の構成要素が脳裏で組み上がっていったのです。もう、それは手に取るように必殺ブローの構造が手に取るようでした。
難所を突破した手応えがあり、
皆にスナフキン(私)が藁半紙に図解で説明を試みました。
※株式会社集英社の地下金庫に今も眠ると噂されてる『ゆで理論』と全く同じ理論構築に私は到達したと今でも思っています。
『必殺ブローの拳』を喉もどけに当てるのは1軸の直線運動と瞬間圧力があればいい事にスナフキン(私)は考えたのです。
一、一軸の修行
水平チョップで等速直線運動で加速度をつけて、
拳のつきを狙うのではなく、ヒット当たる面への確率を上昇させる。
二、『型』の修行
正拳突きのような拳を繰り出すのではなく、型を形成できれば接点が[点]でいいことが重要。何より当たる瞬間に型ができていれば同様な効果が見込める。
私は図解入りの紙を掲げながら、
身振り手振りで雄弁を吐いた。
同士一同:『それだな!』『明日から修行だ!』
どうやら、『ドルアーガの塔』を60階到達するより、修行が早く終わりそうだなと皆が思いながら必殺ブロー会議の<第1回目>は幕を閉じたのでした。
昭和用語集
Training of heroes
僕らのヒーローその名は成龍
翌日もT君の家(鍵っ子)で会議2回目が開催されたのでした。
チョップの練習(修行)は直ぐに飽きた。
学校で休み時間でもやってるから仕方ないのです。
会議は主題は肝心の必殺ブローの型をつくる修行をどうのように実行するかで議論は止まった。またまた難題にぶつかったのです。
しかし、思いの外この課題は直ぐに解決ができたのです。T君の部屋にはある一人の英雄(ヒーロー)のポスターが貼ってあったのです。簡単な事だヒーローはヒーローを手本とするだけでいいのです。
彼の名はアクションスター:成龍
英語表記名Jackie Chan、そうジャッキー・チェンだ。
ジャッキーは、壺を使って修行するので我々もそれに従うだけでよかった。子供の発想は無限大と言うが、TOKYO&キューポラ・アンダーグランドのキッズは単細胞なのです。
壺に砂を入れて拳を叩く、そして、例の拳”中指の第2関節”を曲げる型を習得できると信じた。っていうか疑う事はしなかった。だって、ジャッキーはいつも修行で確実にマスターという称号を得ているのだから。
彼の映画が放送した翌日は学校中で「酔拳」「木人拳」「蛇拳」などのモノマネをする。壺や鍋を使った修行シーンは私達小学生男子と厨ニ心&男気を爆上げさせた。修行をすれば技を習得できるとイメージ操作されていたのです。
修行から学んだ守破離
いよいよ、修行が始まった。
最初は各自がバケツを持参し砂を入れてインパクトの強度を体で覚える修行に取り組んだ。しかし、いまいちバケツでは熱が入らないという事で、壺をどこかで入手できないのか?という事になったのです。
いきつけの駄菓子屋、スーパーを回ったのだが、壺がどこにも売っていないのです。仕方ないので近所の知り合いの庭先に家に忍びこんで、植木鉢を拝借した。植木を川に投げ捨て壺ではないが鉢をゲットした。
※昭和後半でも知り合いの庭先に入り込むのはそこまでご法度ではない。
雰囲気も大分変わった。
バケツから鉢に変わるだけで気分がジャッキーになったようだった。
次第に修行も熱が入り、型をつくる事に没頭した。
今にしてみれば子供時代は何でこんな馬鹿な事をしてるのだろうと思うかもしれないが、当時は本気で取り組んだ。
このシンプルな修行はまさに、膳の守破離ではないか。
週間少年ジャンプ普遍テーマ『友情・努力・勝利』を基軸とした「守」、
全日本プロレス伝統のチョップを改良する「破」、
ジャッキー・チェンの修行シーンの砂入り壺たたきを取り入れ、改良して実践してる「離」。
はからずも私達は日本人の心”膳”を理解したのかもしれない。(笑)
計画の概要
ここからは実際の計画はどのようになったのか当時の記憶を遡り、
纏めてみました。
ユートピアに向けて少年達は年密に計画を練り上げていくのです。
・ターゲットをどうするか?
この中で私立中学に行かず、地元の学校にいくメンバーも当然いる。自分達が、中学生になった時に上級生として君臨されててはマズイ。従って現在”中二”以上がマストとなった。
とはいえ、前回の教訓から高校生、特にガチの不良はマジで怖かったので避ける事を私は熱弁した。これには兄貴達(アニジャタチ)がいる人でも中々理解しづらい部分だったが、ガチガチの不良は『人殺しをしても問題なし』ってぐらい雰囲気がある事を何度も皆に伝えた。それぐらい、昭和ドヤンキーは怖い。あと余りにも体格差がない事を付け加えた。
明らかに弱そうな連中に狙いを定める。
これには異論でなかった。
この選考は難しいと思われがちだが容易なことでした。
「人は外見ではない中身だ」と言われるが、このエリアでは通用しない。
容姿が整ってるやつは大抵オーラも纏ってる。強そうなやつも類似のオーラを纏ってる。いわば勝ち癖、優越癖がついてるのだ。強者の自負をもっている。私達はテレビアニメ[聖戦士ダンバイン]にちなんでオーラを纏う人々のことをオーラバトラーと呼んでいた。
※自分アフィリエイターじゃないです。参考までに画像貼ってるだけネ。
この地域(TOKYOキューポラ・アンダーグランド)で生存していくには、
このオーラバトラー検知能力も研磨しないとスクールライフどころか実生活にも影響を及ぼす。また、自身もそれに習う努力し、オーラに共鳴すればするほど検知能力も磨かれるのです。それほど必須能力だったのです。
※スタンド使いはスタンドに惹かれ合うみたいな感じですね。
このような理由で私達は明らかに弱そうな非オーラバトラー情報収集をする事になった。これには家族(兄弟)から情報を集める事でリストアップしていく事になったのでした。
・誰がやるか?
一番最初は自分が経験者であり、修行考案者がお手本を示すしかほかなかった。私の次の順番が次々決まっていき、修行にも熱が皆入っていった。
・逃走経路はどうするか?
今度は襲われないように人数は5~8人程度で、野球バットは最低1人は常備する。分散し逃走方法は分散3人1組。逃走後の集合場所など作戦を練った。勿論、逃走経路の逃げる修行もした。(笑)
このようにして計画が練り上げられ、
修行の成果を試す時を待っていたのです。
少年達は飢えていたのだ。オモロイ事とスリルを。
必殺ブローは今か今かと待ちわびてるのでした。
長い文を最後まで読んで頂き
ありがとうございました。
○次回予告を読む前に下記の音源を聞くとテンションあがるかも?
後半笑い転げる。。草
◆ 次回予告 ◆
遂に必殺ブローを手にいれた少年達。
スナフキン(私)の求めるユートピアは何処へ。
拳に宿す必殺ブローは何をもたらすのか?!
・ギャラルホルンは鳴り響く
・集えし荒野の少年7人、ターゲットロックオン
・獲物を求め勢力拡大
・下剋上上等、ボンタン刈りじゃー!
・激アツ逃走劇!高島平ランデブー
・ピーポー君参上、確保!少年達の行方。
・いつかの少年 受け継がれし必殺ブロー
実録ノンフィクション思い出横丁シリーズ
隙間時間でポチポチ記載していきます。
誤字脱字は暇なときに修正します。
■一言コメント■
本記事はどこまで脚色してんねん!と思われるかもしれませんが
余すことなく当時の少年の気持ち、雰囲気、ジャンプ愛を伝えたいのです。
若干大げさとおふざけがありますが、
内容は全て事実ノン・フィクションであります。
文才がないのでお見逃し下さい。
ただのオッサンの備忘録ですが、応援コメントなど頂ければ励みになります。