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何回も世界と出会い直したい

SFは世界と出会い直すための装置

「世界は贈与でてきている」を読んで、一番はっとしたのは、SFについての定義を読んだ時でした。

GW明けに「7日間ブックカバーチャレンジ」というバトンを受け取りました。本の表紙を7日間毎日紹介するバトンでしたが、私はマンガでやってみました。

スライムライフ
パールガーデン
風の谷のナウシカ⭐︎
きぐるみ防衛隊⭐︎
宝石の国⭐︎
世界終末旅行⭐︎
世界はハッピーエンドでできている⭐︎

紹介した7冊中⭐︎印の5冊がSFでした。自分がそんなにSF好きとは知らなくて驚いたものの、その事を忘れていました。

第7章で、SFは世界と出会い直すための装置と説明されていているのを読んで、はっ!そっか私はもっと世界の事を知りたかったんだな。と気付きました。

さらにSFとは根本的な問いかけをエンタテインメントとして受け取れる装置と書かれていましたが、SFだけじゃなくて、そもそも物語の全てがそういう装置なんじゃないかなと思いました。

マンガ「スライムライフ」は贈与の話

私はマンガ「スライムライフ」が大好きです。

プライドが高めの黒魔道士ダルルのお店にやってきたのは何も出来ないスライムくん。
そんなスライムくんが、たくさんの人と出会いながら成長していく物語です。

スライムくんは最初は本当に何も出来なくて、ネズミにかじられて泣いてしまったりするのですが、言われたことを真っ直ぐに信じて、努力を続けて、魔法が使えるようになったり、出来ることが少しずつ増えていきます。
最初はダルルやみんなから与えてもらってばかりだったスライムくん。でもピンチの時には大活躍して、問題を乗り越える力になっていきます。

贈与の意味が確定するまでにはかなりのタイムスパンを必要とします。

と第2章に書かれているのですが、スライムライフの物語の中でも、時間が経過してから贈与の意味がわかるお話が登場します。

また、スライムくんのライバル、ピクシーのポコナちゃんが白魔道士のシロロに助けてもらった時に、シロロがこんな風に言います。
「他の人が困っていたらその人を助けてあげて。そしたら困っている人がいなくなるでしょ。」
これは、シロロから受け取ったポコナちゃんがメッセンジャーになる瞬間が描かれていて、とても好きなシーンです。

また、贈与の呪いの事も描かれています。
ダルルは有名な大魔道士の家系の生まれで、才能があり、将来をとても期待されています。その事で家を飛び出したダルルは魔法道具店を始めてスライムくんと出会うのですが、期待が呪いに変わってしまう事が描かれています。これは第3章 贈与が「呪い」になるときに書かれていることです。

さらにダルルがある事で追い込まれた時に、
「みんなに助けてもらって…
こんなに助けてもらって…
これ以上助けてもらって…
…最後に私が失敗したらと思うと…
怖くて」
というセリフがあり、贈与をうまく受け取れない事も描かれているのです。

スライムライフの単行本の帯には「癒し120%ふるぷにコメディ!!」と書かれていますが、物語の中に贈与がたくさん登場する物語です。

そしてスライムライフからたくさんの贈与を受け取った私は、思わずシェアしてしまうメッセンジャーになりました(第9章 贈与のメッセンジャー)。そしてなんとそれは作者に届いていたのです。

贈与の擬似体験をしていた

誤配の手紙は僕ら自身で読み解かなければならないのです。
届いてしまっていた手紙を読み解く能力、其れが想像力なのです。

第9章で贈与は誤配の手紙に例えられているのですが、手紙で思い出した事があります。

鮫ヶ浦水曜日郵便局を知っていますか?
水曜日だけ開く郵便局。
そこに届くのは誰かの水曜日の出来事が書かれた手。
届いた手紙は配達員の手で、知らない誰かへと転送されていきます。
日本中の水曜日の物語が、手紙で繋がれていく、参加型のアートプロジェクトでした。

プロジェクトはもう終わってしまったのですが、「世界は贈与でできている」を読んで、水曜日郵便局に参加した事を思い出しました。

水曜日の出来事だけで繋がっている誰かへ、届くと良いなと思って手紙を書いて送ること。
誰かの水曜日の出来事を受け取ること。

あの不思議な体験は、贈与の擬似体験のようだったなと思いながら本を読んでいました。

何回もはっ!として少しだけ目が開く

「世界は贈与でてきている」という文字だけの表紙。
NEWS PICKSから出版されている。

この2つの事だけを見て、この本は経済の本で硬そう。だから読まない。って思っていました。

キナリ読書フェスの5冊の課題図書の中でこの本だけが硬そうに見えて、最後まで読めなさそう。とも思いました。

でも全然違いました。

私はアマビエの鱗みたいに瞼にびっしりと鱗を付けて生きていて、鱗のせいで瞼が重たくなって、ちゃんと開いていなくても、もともと鈍感なのと面倒くさがりなので、その事に気づかずに日々を過ごしています。

でもたまに「はっ!」となって、ちゃんと目が開いてなかった事に気づかせてくれて、瞼の鱗がポロポロ取れる本に出会う事があります。

「世界は贈与でてきている」この本がそうでした。

「はっ!」には色々な種類がありますが、
この本の「はっ!」は、世界の見方が変わった「はっ!」でした。

私は物の見方や考え方が変わる瞬間の「はっ!」がとても好きなのです。

キナリ読書フェスの期間が過ぎていますが、「世界は贈与でてきている」を読んで、いろいろな事を思い出したり、考えた事をどうしても書きたくて、読書感想文を書きました。

この本に出会えて本当に良かったです。

(おまけ)
岸田奈美さんと近内悠太さんの対談もめっちゃ面白いので是非見て欲しいです。常識を膝カックンさせる、とか本の内容が違う言葉で語られていて面白いです。

キナリ読書フェスがすごく楽しかったのでnoteを書きました。

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