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《音楽x絵画》ハロウィン~ヒヤっとスプーキー 幽霊編~

10月といえばハロウィンの季節。
その起源は紀元前のヨーロッパ・古代ケルトといわれ、収穫を祝い、悪霊払いもしていたお祭りのことだそうです。10月31日というのは日本でいうお盆のようなもので、人間世界と黄泉の世界をへだてる扉が開くとか。先祖のみならず悪霊までもが現世に来てしまう、とのことで仮装や焚き火をして追い払おうとしたのがハロウィンの仮装につながったそうです。連想されるのは魔女、おばけ、お墓、ガイコツ、かぼちゃ等でしょうか。
今回はその中でも、不気味な「幽霊系」の絵画とクラシック音楽をご紹介したいと思います。

一枚目の絵画はこちら。

ジョン・コリア『All Hallows’ Eve』

タイトルのAll Hallows’ Eveとはハロウィンの語源となった言葉です。
夜遅く、少女はロウソクの火を照らして鏡をじっと見ています。私たちから見える鏡は真っ暗で何も見えません。しかしなんともいえない少女の表情が、鏡の中に「何か」がいるように感じさせます。

次の絵画はいかにも幽霊がいるような…?

ジョルジュ・ルー 『Spirit』

白く光るピアノを弾く女性と、彼女を見て驚く男性。女性をよく見ると、足元のドレスが透けているうえに足が見えません。そう、彼女はピアノを弾いている幽霊なのです。この男性はこの女性を知っているのかな…もしかして彼女は二人が知っている曲を弾いているのかな…などさまざまな推測ができる絵です。

クラシック音楽にも、聴いていると不気味でゾクゾクさせられる曲があります。
ラフマニノフ作曲の交響詩『死の島』です。

          ラフマニノフ 交響詩『死の島』

ベックリンが描いた同名の絵からインスパイアされたといわれるこの曲。さくっと聴ける音楽ではありませんが、ぜひ最後まで聴いてみてほしい一曲です。まるで本当に「死の島」にたどり着くような大きな世界観に入り込める音楽なのです。全体に流れる不穏な5拍子のモチーフはまるで波のよう。中盤は幸せな記憶を思い出すかのような美しいメロディも聴こえてきます。

次は曲中に「幽霊的」な登場人物がでてくる、シューベルト作曲『魔王』です。

                        シューベルト 歌曲『魔王』

熱がでた息子を抱え父親は馬に乗り、道を急いでいます。苦しむ息子には魔王の声が聞こえてきます。「私と一緒においで」そうささやく魔王の声におびえる息子。父親がやっとの思いでたどりついた時、息子はもう息をしていなかった…そんな恐ろしい物語です。
印象的なピアノの連打が、必死の思いで馬に乗ってかけていく情景を描きます。魔王のささやきは本物か、それとも子どもの幻聴か…目に見えない怖さが感じられる一曲です。

「お墓」を描いた絵はこちら。

フリードリヒ『オークウッドの修道院』

フリードリヒという画家は内省的で不気味な絵を多く残し、墓地や墓も多く描きました。枯れた木々の中には古い修道院が見えます。下を見るとそこにはポツポツとお墓があり、棺をかついだ修道士たちが入口にいます。絵の三分の一が暗く描かれた異色作です。

お墓がでてくる音楽といえばこちらでしょうか。

     ムソルグスキー『展覧会の絵』より『カタコンベ -ローマ時代の墓-』

カタコンベは地下墓地を指す言葉です。重苦しい和音が続き、一瞬で地下深くの暗い空間に導かれます。そして「死者の言葉をもって死者とともに」という言葉は添えられた次のセクションに進むのです。『展覧会の絵』はラヴェル編のオーケストラ版と、ムソルグスキー本人によるピアノ・ソロ版がありますが、『カタコンベ』は筆者個人的にはピアノ版がより怖く聞こえる気がします。


幽霊系のクラシック音楽と絵画を集めてみましたがいかがでしたでしょうか?姿が見えず不穏な音だけが聞こえると、実際に見えるものよりも恐怖を感じるのではないでしょうか。
ハロウィンの季節、ぜひダークな世界観を楽しんでみてください。

角田知香

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