角田知香

ピアニスト・ピアノ講師・音楽学者。芸術講座の講師として「音楽と絵画」に関する講座を開催…

角田知香

ピアニスト・ピアノ講師・音楽学者。芸術講座の講師として「音楽と絵画」に関する講座を開催またはゲスト講師として招かれることもしばしば。イギリスに留学し音楽学で修士号取得。記事執筆・英語翻訳も手がける。http://www.chikasumida.squarespace.com

最近の記事

「キュビスム展」をもっと楽しむ~展示に関連する音楽~

国立西洋美術館で開催中の「キュビスム展 美の革命」。早速足を運んできた方、これから行きたいと思っている方、興味がある方、そんな方々に「キュビスム展」をもっと楽しんでいただくために、美術から少し世界を広げて、本展に関連した「音楽」をご紹介していこうと思います。 キュビスムが誕生したのは第一次世界大戦の前、芸術の都パリには個性的なアーティストたちが集まっていました。中でも異彩を放っていたのがロシア・バレエ団、通称バレエ・リュス。ロシアからやってきた興行師や振付師たちは、革新的な

    • 《音楽x絵画》ハロウィン~ほん怖、魔女編~

      ハロウィン仮装の定番といえば魔女。ヨーロッパで信じられてきた魔女は、悪魔と契約を結んだ女のこと。たいてい老いて醜く、呪術をあやつり、子どもを食べてしまう恐ろしい存在でした。魔女が本当にいるかどうかはさておき、何か社会のはけ口的に多くの無実の女性が「魔女裁判」にて裁かれる、ということも歴史的に多くありました。その場合、男性も含まれ、若い女性から小さな女の子まで処刑の対象になった、というおそろしい話です。 今回はそんな「魔女」にまつわる絵画とクラシック音楽をご紹介します。 スペ

      • 《音楽x絵画》ハロウィン~ヒヤっとスプーキー 幽霊編~

        10月といえばハロウィンの季節。 その起源は紀元前のヨーロッパ・古代ケルトといわれ、収穫を祝い、悪霊払いもしていたお祭りのことだそうです。10月31日というのは日本でいうお盆のようなもので、人間世界と黄泉の世界をへだてる扉が開くとか。先祖のみならず悪霊までもが現世に来てしまう、とのことで仮装や焚き火をして追い払おうとしたのがハロウィンの仮装につながったそうです。連想されるのは魔女、おばけ、お墓、ガイコツ、かぼちゃ等でしょうか。 今回はその中でも、不気味な「幽霊系」の絵画とクラ

        • 「アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」をもっと楽しむ~展示に関する音楽~

          2022年12月10日から大阪・あべのハルカス美術館で展示がはじまった「アリス― へんてこりん、へんてこりんな世界 ―」。早速足を運んできた方、東京の方の展示を見た方、これから行きたいと思っている方、根っからのアリスファンの方…多くの方に展示をもっと楽しんでいただくために、その世界観、そしてアリスから広がった「音楽」をご紹介していこうと思います。見て聴いてお楽しみいただければと思います。 本展の見どころは、ルイス・キャロル作「不思議の国のアリス」「鏡の国のアリス」が生まれた

        「キュビスム展」をもっと楽しむ~展示に関連する音楽~

          《音楽×絵画》オトナのディズニー シンデレラ編

          ディズニープリンセスの王道中の王道といえばシンデレラ。「灰かぶり姫」の名をもつ主人公シンデレラは、継母と姉妹にこき使われいじめられる毎日を過ごしていました。そんな哀れなシンデレラのもとに魔法使いや動物たちが現れ、不思議な魔法で美しいお姫様に変身させてしまいます。でもその魔法は夜中に解けてしまう…。王子との恋、ガラスの靴、カボチャの馬車など、ディズニー映画『シンデレラ』には女の子がときめく要素が盛りだくさんです。 そんなシンデレラはグリム童話を原作としていますが、その魅力的な

          《音楽×絵画》オトナのディズニー シンデレラ編

          「3」にまつわるフランスの歌 レクチャーコンサートのお知らせ

          2022年6月3日大阪にてフランス歌曲の中で数字「3」にまつわる歌をあつめたレクチャーコンサートを開催します。 3人の娘、3羽の鳥… 「3」が入る詩は一見シンプルでまるでおとぎ話のようです。しかしそこにはミステリアスで意味の深い世界が…。 ラヴェルやフォーレ、シュミットなどフランス音楽を彩った作曲家たちが、「3」にまつわる詩を選んで曲をつけたとき、どんな音世界が生まれたのでしょうか?そんなことに思いをはせた内容です。 ピアノの私と一緒に演奏してくださるのはフランス本場仕込み

          「3」にまつわるフランスの歌 レクチャーコンサートのお知らせ

          ウェス・アンダーソンの世界を彩るオシャレすぎるクラシック音楽

          熱狂的なファンを持つ奇才の映画監督ウェス・アンダーソン。 ついに新作映画「フレンチ・ディスパッチ」が公開されるということで、今回は彼が映画に用いたクラシック音楽をご紹介したいと思います。 ファンの間では有名ですが、映画はもちろんのことウェス・アンダーソン映画はサウンド・トラックもとんでもなくお洒落なのです。オリジナルで作曲される場合もあれば、ロックやポップスからジャズや民族音楽までさまざまなジャンルの楽曲が登場します。彼のユニークでポップな映像とクラシック音楽が合わさると

          ウェス・アンダーソンの世界を彩るオシャレすぎるクラシック音楽

          すべての祈る人のための教会、その空間から生まれたフェルドマンの音楽『ロスコ・チャペル』

          今回は20世紀アメリカの美術と音楽について書いています。画家マーク・ロスコは「観念」の絵画を描くといわれた抽象画の先駆者。アメリカ・ヒューストンにある、「すべての祈る人のための教会」のための壁画・建築デザインを依頼されたロスコは、その完成披露を見ることなく自らこの世を去りました。 完成した教会はロスコ・チャペルと名付けられ、ロスコによる、静かながらも神秘的なパワーを持つ壁画が14枚飾られています。どこまでもミニマムでシンプルな八角形の教会と、宗教に関係なく、祈りに訪れた人み

          すべての祈る人のための教会、その空間から生まれたフェルドマンの音楽『ロスコ・チャペル』

          《音楽×絵画》オトナのディズニー 塔の上のラプンツェル編

          シンデレラやアリエルに加えてディズニーの新たなプリンセスといえば「ラプンツェル」。彼女の黄金に輝くスーパーロングヘアは魔法の力を持ち、その力を知った老婆ゴーテルは王国の王妃であったラプンツェルを塔の上に閉じ込め、自分が母親だとウソをついて育てます。成長したラプンツェルは大泥棒フリンによってゴーテルからの呪縛そして長い髪の魔法からも解き放たれ外の世界に飛びだす、そんな物語です。 今回はディズニー映画が生まれる前のラプンツェルの挿絵や絵画、そして印象的な「髪」にまつわる音楽をご

          《音楽×絵画》オトナのディズニー 塔の上のラプンツェル編

          《音楽×絵画》オトナのディズニー リトル・マーメイド編

          ディズニー映画で憧れのプリンセスの一人といえばリトル・マーメイドのアリエル。魚の足と真っ赤なロングヘアに大きな瞳、そして絶世の美声を持つアリエルは、人間界に憧れる人魚です。ある日偶然通りかかった船にいた王子エリックへの一目ぼれから彼女の旅は始まります。 この映画リトル・マーメイドの元ネタは、17世紀を代表するデンマークの童話作家アンデルセンの『人魚姫』。1837年に発表された『人魚姫』は、ひたむきに人間になろうとする人魚姫とファンタジックな海の世界が切なくも美しく描かれ老若

          《音楽×絵画》オトナのディズニー リトル・マーメイド編

          「モンドリアン展」をもっと楽しむ~展示に関連するジャズ音楽~

          2021年3月23日から東京・SOMPO美術館で展示がはじまった「モンドリアン展」。早速足を運んできた方、これから行きたいと思っている方、興味がある方、そんな方々に「モンドリアン展」をもっと楽しんでいただくために、美術から少し世界を広げて、本展に関連した「音楽」をご紹介していこうと思います。 前衛芸術のパイオニアでもあるピート・モンドリアンはオランダ出身の画家。どこまでもそぎ落とされて抽象化された線と平面そしてビビッドな色彩はとても実験的で、アート界に衝撃を与えました。その

          「モンドリアン展」をもっと楽しむ~展示に関連するジャズ音楽~

          「テート美術館所蔵コンスタブル展」をもっと楽しむ~展示と関連した音楽~

          2021年2月20日から東京・三菱一号美術館で展示がはじまった「コンスタブル展」。早速足を運んできた方、これから行きたいと思っている方、興味がある方、そんな方々に「コンスタブル展」をもっと楽しんでいただくために、美術から少し世界を広げて、本展に関連した「音楽」をご紹介していこうと思います。 「コンスタブル展」は、イギリスの風景画家コンスタブルの絵画を中心に、ライバルとしてよく比較される画家ターナーの絵画、そして同時代の絵画も含め60点もの作品が一挙に介した、スケールの大きい

          「テート美術館所蔵コンスタブル展」をもっと楽しむ~展示と関連した音楽~

          「眠り展:アートと生きること」をもっと楽しむ ~展示絵画から生まれた音楽~

          2020年11月25日から 2021年2月23日までの期間、東京国立現代美術館では企画展「眠り展」が催されています。この記事をクリックしてくださった方は「もうこの展覧会見てきた」もしくは「これから見に行く」または「見てはないけれど興味はある」など、様々な方々がいらっしゃると思います。 本記事では「眠り展」に展示された絵画やアート作品にまつわる音楽にフューチャーします。美術館でのアート体験を、ぜひ音楽まで広げてみてください。 「眠り展」は、スペイン絵画の巨匠ゴヤの版画作品を

          「眠り展:アートと生きること」をもっと楽しむ ~展示絵画から生まれた音楽~

          ピカソとストラヴィンスキー、奇跡のコラボレーション~刺激を与えあった二人の天才~

          今回は20世紀を代表する二人の天才アーティスト、ピカソとストラヴィスキーの知られざる友情について書きました。 あっという間に意気投合し、音楽ストラヴィンスキー・美術ピカソといったコラボレーション作品を生み出した二人。出会ったとき、二人はまるで学校で気の合う趣味を見つけたときのように、お互いの作品について語り合い、コラボレーション作品を創ります。彼らはどんな刺激を与えあったのでしょうか? 共作したバレエ『プルチネルラ』はびっくりするほどモダンでスタイリッシュな傑作です。

          ピカソとストラヴィンスキー、奇跡のコラボレーション~刺激を与えあった二人の天才~

          冒険と魔法、野蛮そして官能的…魅惑の『アラビアン・ナイト』が生み出した絵と音楽

          今回のテーマはアラビア語最古の書物である『アラビアン・ナイト』です。ディズニー映画『アラジン』がこの書物から生まれたということは皆さんご存知だとは思いますが、すこしディープな『アラビアン・ナイト』の世界はなんともセクシーで妖艶、幻想的なエキゾチズムにあふれています。 『アラビアン・ナイト』の魅力はなんといってもその物語の多さ。 冒険物語、ハリーポッターばりの魔法物語、マヌケな商人のおとぼけ話から、人生訓、男女のてんやわんやまで…子供から大人まで楽しめる物語集なのです。

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          絢爛豪華な音楽に生まれ変わった!?ボッティチェリ『ヴィ―ナスの誕生』

          この世で一番有名と言っても過言ではないボッティチェリの絵画の、「音楽化」に挑んだ音楽家がいました。彼はイタリア人作曲家レスピーギ。ボッティチェリの絵画三枚『プリマヴェーラ(春)』『東方三博士の礼拝』そして『ヴィ―ナスの誕生』にそれぞれ管弦楽曲を作曲しました。その名も管弦楽曲『ボッティチェリの3枚の絵』。 これらの絵画を見るためにフィレンツェのウフィツィ美術館に人が行列を作っている一方で、なぜかレスピーギのこの音楽はいまだマイナーな作品のまま…しかし聴いてみると目からウロコ!

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