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「モンドリアン展」をもっと楽しむ~展示に関連するジャズ音楽~

2021年3月23日から東京・SOMPO美術館で展示がはじまった「モンドリアン展」。早速足を運んできた方、これから行きたいと思っている方、興味がある方、そんな方々に「モンドリアン展」をもっと楽しんでいただくために、美術から少し世界を広げて、本展に関連した「音楽」をご紹介していこうと思います。

前衛芸術のパイオニアでもあるピート・モンドリアンはオランダ出身の画家。どこまでもそぎ落とされて抽象化された線と平面そしてビビッドな色彩はとても実験的で、アート界に衝撃を与えました。その代表作が「コンポジション」と呼ばれるシリーズで、あらゆる色と図形・線が組み合わされた幾何学的な抽象画です。開催されている「モンドリアン展」には50点もの作品が集結し、アムステルダム時代の素朴な風景画から、印象派、神智学との出会い、キュビズムの影響を受け、独自の抽象画に向かう過程をじっくりと味わうことができます。
モンドリアンは晩年ニューヨークに移り住みますが、ヨーロッパで活動していたころにはすでにアメリカのジャズ音楽を好んでいたそうです。ニューヨークに住みだしてからは本場のジャズを知り、さらなるインスピレーションを受けました。モンドリアンはジャズにおいて、リズムがときに中断したり途切れたりする自由さを持っていることに魅力を感じていました。
線・格子が自由に交差しあうコンポジションのシリーズは、ジャズとの関連性が指摘されることも多く、どこかプリミティブな「リズム」を感じさせる作品です。 

モンドリアン コンポジション 1921

 モンドリアン『大きな赤の色面、黄、黒、灰、青色のコンポジション』

そしてもっとジャズ音楽の影響を感じさせる作品がこちら、『ブロードウェイ・ブギウギ』です。今回展示されていませんが、ニューヨーク近代美術館に所蔵されています。

モンドリアン ブロードウェイ・ブギウギ

 モンドリアン『ブロードウェイ・ブギウギ』

ブギウギとはジャズのスタイルのひとつ。まずは聴いてみるのが一番でしょう。映画『マジェスティック』でジム・キャリーがブギウギを弾きはじめるシーンをご覧ください。

映像のように、聴くと自然に体をスウィングしたくなり、踊りだしてしまう、ブギウギはそんな音楽です。その秘密はひたすら繰り返されるベースラインと、自由にアドリブするリズム。ジム・キャリーが弾いている曲は『ブギウギ・ストンプ』、ブギウギピアニストのアルバート・アモンズの曲です。画家モンドリアンは実際にアルバート・アモンズを含むジャズ演奏家たちからインスピレーションを受けていたと言われています。

こちらは実際にアルバート・アモンズが演奏している『ブギウギ・ストンプ』です。

この曲を聴きながらモンドリアンの『ブロードウェイ・ブギウギ』を見てみましょう。私には黄色のラインがベースライン、赤や青の小さい四角は自由に長さが変わるリズムのように見えます。

あるグラフィック・デザイナーはこの絵を、「ニューヨーク・マンハッタンが抽象された地図のようだ」とも表現しています。モンドリアンの中で、ニューヨークの喧騒と本場のジャズ音楽が混ざり合い、このようなリズミカルな抽象絵画が生まれたのかもしれません。

「モンドリアン展」から一歩すすんで、モンドリアンが愛したジャズ音楽をご紹介しました。
楽しんでいただけたでしょうか?
「観る」体験を「聴く」体験にまで広げて、もっとアートを楽しんでいただけますように!

角田知香


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