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社会人1年目の読書感想文#2「舟を編む」三浦しをん

どう生きて生きていたとしても、この世界は言葉で溢れている。

とくにこの情報社会では時として多すぎるくらいの言葉が生活のあちこちに散らばっており、そのひとつひとつをすくってかんがえるなんてことは少ない気がする。

それでも、季節の変わり目になるとふと言葉の意味を生い立ちを考えたくなるときがあって「五月雨」や「短夜」なんててにとるとひかってこぼれそうな言葉たちをとにかく検索する毎日だ。


そんなわたしが次はちょっくら辞書で調べてみるか、と思った本「舟を編む」


映画化もされた小説で、「読んだことないけどしってる」ってひとも多いかと思う。そして、わたしもそのひとり。

出版社の営業部員がセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれたところから物語は始まる。


ことばって、生き物なのだなとそう思った。

言葉にできること・できないこと。

言葉にしたいこと・したくないこと。

どんな感情も、どんな風景も、残しておきたい記憶も
そのすべてを永遠に伝え続けるための手段が言葉なのだ。

たとえそれが、言葉に表せられないような人の叡智の結晶を超えてしまうようなものだとしても、「言葉にできないほどの」というのがまた、その表したいものを表す言葉になる。

記憶を分け合い、伝えていくために
まだ生まれ来ぬものたちとつながるために

誰もが「言葉」のために時間と手間と愛をかけている。

そのあたたかさがこの本には詰まっている。
馬締の言葉や人に対する熱く静かな思いや

一見仕事に対しても辞書編集部に対しても思い入れのなさそうな
佐々木の仲間への気持ち。

登場人物のすべてが優しく、あたたかい。

言葉と同じように、人の心や気持ちにかたちはないけれど
それをすくってつむぐためには
ことばがとても重要なものなのだと思わせてくれる。



「舟を編む」
辞書はこの膨大な言葉の海を渡るための船なのだろう。
そして、その舟を何年も何十年も時間と手間をかけて
一つずつ編んでいく。


言葉の1つ1つには多くの意味がある。

時代とともにその言葉が使われなくなり「死語」となっても、その言葉が使われていたという事実は変わらない。

言葉の舟は、一生沈むことなくこの広く果てしない海を航海し続けるのだろう。


そんな舟に乗って、わたしも新しい海にとびだしたい。



(これを読んだ人は、櫻坂46の「無言の宇宙」の歌詞を読んでみてほしい。言葉ってなんなのだろう?と、考え込んでしまう)



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