藤花スイ

恋愛やファンタジーの小説を書いてます。

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  • きっとここにしかない喫茶店で

    「きっとここにしかない喫茶店で」という小説のまとめマガジンです。 以下あらすじです。 22歳の沼田ミカは短大を卒業後、第一志望の会社に就職し、順調な日々を過ごしていた。しかし、突然の恋人との別れと親友の裏切りにより、失意のどん底に突き落とされる。新しい部署への転属も重なり、ミカは心身ともに疲弊してしまった。そんな彼女は、偶然見つけた喫茶店「ai's cafe」で、カフェの女店主や謎の相談屋との交流を通して次第に癒されていく。ミカは自分の価値観や人生を見つめ直し、前向きに生きる力を取り戻す。これは困難を乗り越え、成長するミカとそのきっかけとなった喫茶店を描く心温まる物語である。

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藤花スイについて:自己紹介や作品サイトへのリンク

初めまして藤花スイと申します! 私は恋愛やファンタジーを中心にウェブ小説を書いている者です。 電子書籍を出版したこともあります。 新たにnoteを使って小説サイトへのリンクや作品の投稿をしたいと思いますのでよろしくお願いします。 こちらのページがポータルになります! note投稿作品リンクきっとここにしかない喫茶店で 以前カクヨムで投稿していた作品を改稿したものになります。 電子書籍リンクAmazonで出版した電子書籍のリンクになります。 君のランタン屋さん:読む

    • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(16)

      第十五話はこちらです。 エピローグ:フラットホワイトのお姉さん第十六話  沼田ミカは二十五歳。顔つきは地味目だが、肌ツヤはよく、自然に上った口角が彼女の人の良さを表している。服装や化粧もこれといった特徴がないようだが、よく見ると綺麗にまとまっており、細かい部分に個性が出ている。そのためか全体として統一感があり、なんとなく目を引く雰囲気があった。  彼女は今日良永ミカとなる。その協力をしてもらうために最近は足が遠のいてしまった道を踏みしめながら、ゆっくりと進んでいる。

      • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(15)

        第十四話はこちらです。 第十五話 「話には聞いていたけど、おもしろい人たちだったね」  タクミはベンチに座りながら、フラットホワイトに口をつけた。 「これ、すごいおいしいよ⋯⋯」  タクミはしっかり味わった後で紙のカップを見つめながらそう言った。すっかり気に入ったようで、目を輝かせながら何度も飲んでいる。その様子を見て、ミカもカップに口をつけた。ゆっくり味わいたかったので、良い場所が見つかるまで我慢していたのだ。 「本当だ⋯⋯おいしい⋯⋯」  口に液が入ってきた

        • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(14)

          第十三話はこちらです。 第十四話  今日は秋祭り。ミカとタクミは二人で訪れていた。さまざまなお店が大きな公園に集まり、出店を出している。出店は大掛かりで、木を屋台のように組んで調理場やカウンターを作っているところもある。  広場では次々に人が出てきて、さまざまな音楽を奏でている。みんな手には食べ物や飲み物を持ち、楽しそうに出し物を見ている。  この公園は紅葉で有名だが、あいにくカエデの色は変わり始めたばかりで、絶好の日和にはまだ早い。けれど、ハナミズキの葉っぱは八割ほ

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        • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(16)

        • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(15)

        • 【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(14)

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        • きっとここにしかない喫茶店で
          16本

        記事

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(13)

          第十二話はこちらです。 第十三話  夜、ai's cafeに二つの人影があった。ミカとマスターだ。二人は店の真ん中にあるテーブルに向かい合って座っている。  マスターに相談したいと言った手前、ミカは勇んでここまで来たものの、考え続けるうちに自分が何に苦しんでいるのか分からなくなってしまった。マスターはそんなミカの煮え切らない様子に気がついたようで、ミカの話を一旦止めた。 「ねぇ、ミカちゃん。せっかくだし、何か飲もうか。何が良い?」 「そうですね⋯⋯」  そう問われ

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(13)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(12)

          第十一話はこちらです。 第四章:秋祭り限定! 木の実のキャラメルブロンディ第十二話  沼田ミカは普通の女の子。特段可愛いというわけでもなければ、見るに耐えないということもない。いわば普通、というより地味な顔つきをしていた。背も高いというわけではなく、低いというわけでもない。体はやや細いけれど、人目を引くほどスタイルが良いということなんてない。  お洒落にも興味がある。たまにちょっと高級なワンピースを着て出掛けるとウキウキするけれど、それほど流行に興味があるわけではないし

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(12)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(11)

          第十話はこちらです。 第十一話  三日前に梅雨が明け、夏がやってきた。七夕には間に合わず、二人の高貴な者たちの逢瀬も叶うことなく過ぎ去って行った。  ある男は「水無月というのは、天から水がなくなるからそう呼ぶのだという説があるくらいなのだから、問答無用で毎年二人を会わせたっていいんじゃないかなぁ」と言った。  それを聞いたある女は「ねぇ、水無月って和菓子のこと知っている? ういろうの上に小豆が乗っていてすごく美味しいんだよ!」と言った。  そしてもう一人の女は「あ、

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(11)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(10)

          第九話はこちらです。 第十話  春の陽気にも久しく会わず、曇りや雨の日が多くなってきた。梅雨の季節だ。  自称恋愛中、名実ともに会社員の沼田ミカは、今日も仕事を終え、傘を片手に歩いている。雨の日の日暮れ直前、背景は灰色で、紫陽花の赤紫が目立つ。ヘクソカズラの黒紫色の花でさえも、この景色には映えるようだった。  ミカは「今日こそあの人に会えるかな」と思いながらいつもの道を歩いている。先月、覚悟を決めたミカは相談屋の予約をした。あの男とぶつかってみようと気持ちを整え、準備

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(10)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(9)

          第八話はこちらです。 第九話  はてさてと、二人の馴れ初めを改めて頭の中にインストールした私は「誰かに聞かせるわけでもないのに誇張して思い返しちゃったなぁ」と思いながらスリランカカレーを待っている。  凪とあやめちゃんは慣れたもので、私の精神がこの場にないと悟ると、こちらには一瞥もくれずに二人で話をしていた。いやぁ、凪もあやめちゃんも自分の世界に閉じこもって精神が飛んでいることがあるのに冷たいなぁ⋯⋯。そう思っていたらあやめちゃんが気がついた。 「あ、沙絵ちゃん帰って

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(9)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(8)

          第七話はこちらです。 第三章:夏期限定! スリランカ式スパイスカレーと紅茶セット第八話  私の名前は緑川沙絵。とあるカフェの店主をしている。  今日は友人である若苗凪に誘われて、家から三十分かけて馴染みのない駅に来た。  いつも私の方が遅れるのだけれど、今日は珍しくこちらの方が早いみたいだ。毎回こうやって行動できればいいのに中々うまくいかず、結局焦らされることになる。どうしたものだろうか⋯⋯。  そんなありきたりのことを考えていると、改札を抜けて来た男女がこちらに向か

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(8)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(7)

          第六話はこちらです。 第七話  春が本格的にやって来た。桜が一斉に咲き、そして夢であったかのように散っていった。夜はまだ寒さが抜け切らないが、昼間はお日様が気持ち良い。街を歩いてみると早咲きのツツジが花をつけている。やっと暖かい季節になったのだ。  自然はそんな風に移り変わっているが、ミカは最近ため息が多い。来る日も来る日もある人のことを考えてしまっている。  あの時、相談屋の男——若苗凪——との関係についてミカに質問されたマスターは、刹那の逡巡ののちに答えた。 「

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(7)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(6)

          第五話はこちらです。 第六話  マスターを一人にしておこうという男の意向のもと、二人は店を出ることにした。駅まで送ってくれるという男の申し出を受け入れていつもの商店街を歩いている。  夜も深まり、風が冷たくなっている。体が徐々に温度を失っていくのに反して、ミカの心は暖かいままだった。 「ミカさん、今日はありがとうございました。いつもとは違う風が入ってきて、僕にもマスターにも良い刺激がありました。何より楽しかったですね」  また相談屋モードに入り気味の男だが、軽い空気

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(6)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(5)

          第四話はこちらです。 第五話  試食会が始まって二十分ほどが経ち、いまは三人で話し合っている。議題は「それぞれの春のイメージ」で、すごく抽象的だ。  これまでの話し合いを見ていると、議論をまとめているのは男の方だった。マスターの意見を汲み取って整理し、話し合いを進行している。相談屋をしているだけあってか、意をキャッチアップするのが早い。  男が話を聞いて、違う言葉で言い換えながらまとめて、また意見を聞く。それを繰り返すことで議論がテンポよく進んでいく。男はミカに分かり

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(5)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(4)

          第三話はこちらです。 第二章:春期限定! サクラコーヒー&ケーキセット第四話  沼田ミカは自称一般人の会社員。今日は手早く仕事を終え、夜の道を歩いていた。最近は気温の高い日が増えてきているが、まだ冬だ。ミカは昼の暖かさに気を取られて薄着にしてしまったため、徐々に体が冷え始めていた。 「今週は忙しかったなぁ」  今日は金曜日。ミカは久しぶりにai's cafeで夕飯を食べて、すっきりとした気持ちで休日を迎えるつもりでいた。退勤後、普段とは違う電車に乗ってカフェに向かって

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(4)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(3)

          第二話はこちらです。 第三話  部屋を出てから数秒間、ミカは立ち尽くしていた。全てがジェットコースターのようで、大切なものが頭から抜けてしまったような、逆に大切なものを胸に取り戻したような、そんな新しい感覚に呆然としてしまっていた。 「あのぉ、大丈夫ですかぁ?」  ミカの様子に気がついたのかマスターが声をかけてきてくれた。なぜか話し方が芝居がかっている。 「おつかれさまでした。その顔を見るに得るものがあったようですね」 「えっ、私の顔何か変わってますか?」  ミ

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(3)

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(2)

          第一話はこちらです。 第二話  待ちに待った予約の日、ミカは開店と同時にai's cafeに来ていた。いざ来てみて、自分が思っていたよりも緊張してしることに気が付いた。  ミカが席について十分ほど経った頃、一人の男が店に入って来た。男はマスターを見つけると、手を挙げて「よっ」と言って笑いかけた。そして和やかな雰囲気でマスターと話している。元々とても人当たりのよいマスターだが、今は普段にも増して当たりがよく楽しそうだ。そんな二人の様子はどこかいたずらめいていて、ちょっとし

          【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(2)