【創作大賞2024応募作・恋愛小説部門】 きっとここにしかない喫茶店で(10)
第九話はこちらです。
第十話
春の陽気にも久しく会わず、曇りや雨の日が多くなってきた。梅雨の季節だ。
自称恋愛中、名実ともに会社員の沼田ミカは、今日も仕事を終え、傘を片手に歩いている。雨の日の日暮れ直前、背景は灰色で、紫陽花の赤紫が目立つ。ヘクソカズラの黒紫色の花でさえも、この景色には映えるようだった。
ミカは「今日こそあの人に会えるかな」と思いながらいつもの道を歩いている。先月、覚悟を決めたミカは相談屋の予約をした。あの男とぶつかってみようと気持ちを整え、準備