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サッカーで考える「攻めの法務」

日本のGiant Killingに沸いたワールドカップ2022。

各国代表の華麗なプレーを見ながら、サッカーのシステムや各ポジションの「役割」の重要性を素人ながらあらためて感じました。

そしてふと待てよと。

「これって、企業組織も一緒なのでは?」
と思ったのでつらつら書いてみます。

サッカーで考える「攻めの法務」について

これ、法クラ界隈では可燃性が高いワードなのでガクブルです/(^o^)\ナンテコッタイ

サッカーチームと企業組織って似てない?

サッカーってあらためて面白いスポーツだなと。

それぞれのシステムや戦術において、ポジションごとに期待役割があって、各ポジションが期待役割に従って動いて効果的に連動していくことが大事。各人が期待役割を全うしないと強くなれないし勝てない。逆に全うすれば強くなれるし個々の実力が上のチームにも勝つチャンスがある。(ドイツ戦、スペイン戦とかまさにそうな気が)

これ、企業も一緒だと感じました。
企業内の各組織・個人に期待役割があって、それぞれが期待役割を全うしないと強い企業にはなれないし勝てないという点で。

サッカーでは、どのような戦略を定めて、そのために最適な戦力を拡充し、どのような戦術(システム、それぞれの期待役割の設定等)を使って相手に勝つかが重要です。
これは企業も同様で、戦略を定め、最適な戦力を拡充し、それぞれにどのような役割を割り振らせて効果を最大化していくかはとても大事になります。

「法務」も、企業組織の中で、ある期待役割を割り振られているわけで、「攻めの法務」も普通の法務と違った期待役割があるからそういわれているのかしら?
そう思ってここから書いていきます。

そもそも「法務」とは?

そもそも「法務」ってなんでしょう?

辞書を引くと「司法または広く法律関係の事務」とあります。
だとすると、営業の方が取引先との定型的な契約書を締結したりする事務なども「法務」のように思えます。

しかしながら、一般に企業内で組織機能を指して使われている「法務」という言葉の射程はおそらくもっと狭いものだと思います。

ここについては色んな意見がありうるところですが、私は、企業における「法務」とはサッカーにおけるゴールキーパーの役割を担っている組織だと思います。

企業における最大のリスクはなんでしょうか?
私は、リーガルリスクだと思います。

・役職員が贈賄で有罪になる
・業法違反で許認可が取り消される
・カルテルで巨額の課徴金が課せられる
・インサイダー取引で役職員が有罪になる
・巨額の横領が発覚し、過年度修正を迫られる
すべて企業の継続性に対して影響を与えうる事象だと思います。

こうしたリーガルリスクに対して、オーナーシップを持って事前にリスクを把握し、または把握するための仕組みをつくって策を打っておくのが企業における「法務」に一番期待されていることではないでしょうか?(企業が大きくなるとコンプライアンス室とか内部監査室が一定程度その役割を担うこともあると思いますがそれはひとまず置いておきます)

そう考えると、法務とは企業におけるゴールキーパーの役割を担っていると言えると思います。サッカーにおいて一番守備にオーナーシップを持っているのはゴールキーパーですから。

「攻めの法務」とは?

「法務」をサッカーにおけるゴールキーパーだと考えると、「攻めの法務」ってなんなのでしょうか?

そして思うのです。
「ゴールキーパー攻めちゃダメでしょ?」と。

ゴールキーパーは、ペナルティエリア内にいてゴールキーパーとしての働きをするからゴールキーパーとしての価値があります。どんなに足元の守備がうまかったとしても、ペナルティエリア外に出たら手は使えずゴールキーパーとしての役割は果たせません。
ペナルティエリア外にゴールキーパーが出ている状況は、冷静に考えると非常に危険な状態です。

これ、企業も一緒だと思います。

法務を、会社の「守り」についてオーナーシップを持っている組織と定義すると、その法務自身が「攻め」のポジションを取るのは危ういです。

法律には、どうしてもクリアカットに判断できないことがあります。その場合に法務が「攻め」のポジションをとってしまうと、知らず知らずのうちに法務としてのディフェンスラインが上がって行ってしまい、気づけばペナルティエリア外に出ていてピンチを招く(≒白寄りのグレーだと思っていたものが実際は黒だった)ということになりかねません

なので、攻めのポジションを取る法務には自分は否定的です。
攻めのポジションを取ったらそれは「(企業におけるゴールキーパーとしての)法務」ではないので。

その意味で、個人的には「攻めの法務なんてない。法務が攻めたら法務じゃない」と思っています。

法務に求められる攻めの要素とは?

「じゃあ何すか、法務はリスクリスク言ってりゃいいんすか?」

と思われるかもしれませんが、そうではありません。

たしかに法務は「ポジションとしては」守りに徹するべきであり攻めちゃいけないと思います。ただ、サッカーのゴールキーパーと同様に「攻めの手助け」はできます。

ゴールキーパーに例えるなら
「ちゃんとペナルティエリア内にいるけど、フィールド全体を見渡して的確なポジショニングの指示ができる、前線に的確なフィードを送って攻撃の起点となれる」
というイメージだと思います。

きちんと守りとしてのポジショニングを失わず、会社のリスクを把握して事前に手を打つこともできるし、レギュレーションを踏まえて事業の進め方を提案できる、効率的かつ有効な交渉・契約締結プロセスについて提案ができる。そういう法務が「攻めを助ける法務」として期待されているのではないでしょうか。

おそらく、世間一般で言われている「攻めの法務」も、実際は「攻めを助ける法務」という期待役割を指しているのだと思います。

「攻めを助ける法務」として必要なこと

…と、もっともらしいことを言ってみましたが、攻めを助ける法務としての役割を全うすることは、スキルもさることながら、特にスタンスやマインドの点で簡単ではないと思います。

助けるだけのつもりが、じれったくなって自分も攻めに転じてしまいペナルティエリアの外に出ていたというのはありうる話です。

大事なのは相互の信頼関係と組織愛だと思います。

攻撃陣が信頼できない場合、ゴールキーパーもやってられるかという気持ちになります(守ってても勝てないし守備機会多すぎて大変だし…)。(GKではないですが)闘莉王もディフェンス投げ出して上がりっぱなしになってしまいます。

また、法務に限りませんが、バックオフィスは基本的に「ちゃんとやって当たり前」で「減点主義」で評価されがちです。バックオフィスの業務を整えても、コンプライアンス体制を整えても、他部署でその大変さを分かってくれる人は残念ながら多くはないかもしれません。

フィールドプレーヤーに攻めを任せられる信頼があるから守りに徹することができる。組織に対しての愛があるから地味で大変な仕事でもしっかりと役割を全うできる。
そういう面があるように思います。

そう考えると、逆に法務が法務として守りの意見を出すことについて、他のプレーヤーもそういう法務の役割への理解を示すこともとても大事です。

「法務がリスクリスクばっか言って全然ビジネスが進まない」
と感じることももしかしたら場合によってはあるかもしれませんが、法務がリスクを指摘しなくなったら法務としては終わりです。

おわりに

以上、つらつらと書いてみたわけですが、結局、マネジメント視点としては、以下二つが本当に大事なんだなと思う今日この頃です。
・各組織・人に対する期待役割の設定、すり合わせ、浸透
・各組織・人の役割の会社全体への共有と相互理解・尊重の浸透

いやぁ、あらためて感動と共に学びが多いワールドカップでした。
ありがとう日本!!

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