2022ファジアーノ岡山にフォーカス36『 絶望の”軌跡” 』J2:40節:甲府戦

 今季の岡山にとって、自動昇格を意識した時期は限られる。そこを意識した時に、常に岡山の意識があったのは、横浜FCではないだろうか。横浜FCが1位であった時期も長く、4位が長かった岡山として、序盤から中盤にかけての目標は、横浜FCであり続けた。2位との差が縮まって行く中でも、立ち塞がったのは横浜FCであった。直接対決で敗れ、差を縮められそうでも縮められない。そういったことを繰り返してきたシーズンである。

 岡山は、ほぼ横浜FCの背中を見て、戦って来た。常に終われる立場であった横浜FCもまた強く、最後の一線を割らせなかった。今節の甲府戦(40節)を勝利して終えたことで、勝ち点差5に縮めることができたが、数字上は絶望的である。

 今季の岡山は、試合結果の絶望である敗戦が8度あり、その度に立ち上がって来た。ただ、岡山の敗戦の多くは、そのまま降下していく可能性もあったダメージの大きいものが数多くある。中でも終盤戦の横浜FC戦、徳島戦、金沢戦。いずれもかなりダメージがあった。

 一方で、この試合で戦った甲府は、天皇杯準決勝で、常勝軍団と言われていたが、ここ数シーズンは無冠であったため、タイトルを目指して士気の高かった鹿島に勝利して、決勝に勝ち上がるという歴史的な勝利をしたばかりである。リーグ戦では、6連敗こそしていたが、決勝に勝ち上がったことは、J2のレベルが上がった証拠でもあり、同じJ2クラブである岡山としても甲府のことを誇りに思うし、J2代表とも言える甲府のことを応援したいと思っている。

 とはいえ、リーグ戦では、自動昇格に僅かに可能性を残している岡山としても負けるわけにはいかない一戦であった。多くのJ1クラブを破って来た甲府の強さと、岡山のアプローチを振り返っていきたい。

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1、明確な意志


 圧倒的なボール保持数を記録した甲府であったが、ロングパスをあまり交えないパスを細かく繋ぐスタイルではなく、状況に応じて、ロングパスを織り交ぜてくる柔軟性のあるサッカーであった。

 パスを繋いで、前に運べる時はしっかり繋いで運び、ボールロストするリスクが生じそうな時は、迷いなくロングパスを蹴っていく。山形が、同じパスコースに同じ質のノールックパスを連発していたように、それが甲府の約束事に近い選択のパスであり、シンプルに10ウィリアン・リラをターゲットにすることで、セカンドボール勝負に持ち込むという明確な狙いであった。

 ここで、混戦にならなかったのは、セカンドボール回収後の攻撃へのスムーズさにある。距離感を意識した上で、スペースでのポジションが的確で、少人数でもそこからパスを繋いで、ゴールを目指す形が非常に丁寧であった。無理して回収しないことを徹底することで、攻守でのバランスが崩れないことが、甲府のサッカーの強みである。

 また、岡山の金沢との試合を踏まえて、甲府は、岡山のサイドのスペースを狙う動きを見せていたが、チームの基本布陣と意識の変化から、そこへの警戒度は高く、岡山の弱点とまでは言えない程度に岡山が対応していたことで、探り合いのような時間が続く事となった。

 岡山としては、雉プレスを実施しようにもロングパスという選択肢をはっきりと掲示されることで、10ウィリアン・リラの存在もあり、雉プレスの発動には極めて慎重であった。そのため、14田中 雄大と8ステファン・ムーク、15ミッチェル・デュークの3人を軸にした単発の寄せに留まることも多かった。

 お互いにリスクの少ないサッカーを展開して行く中で、決定機が少なくなるかと思われたが、天皇杯決勝に勝ち上がった甲府の強さを証明するように、ポゼッションとロングパスをバランスよく織り交ぜた攻撃からのパスワークで、岡山のゴールに迫るシーンを少しずつだが、作って行く甲府。

 岡山は、ボールを甲府に保持されたことで、パスワークや速攻が嵌った時にゴールを破られそうになるも23ヨルディ・バイスと5柳 育崇、35堀田 大暉の中央の強さで、しっかり対応して、無失点に凌いでいた。

 そういった劣勢と言える中で、一瞬の隙とも言うべきか。ロングパス一本で、24成瀬 竣平が裏へ抜け出すと、中の様子をしっかり見極めて、中に折り返すと、38永井 龍が巧く蹴ったシュートで、GKの1河田 晃兵の守備範囲をかわす絶妙なコースへの軌道のシュートを代えて、岡山が先制に成功する。

 38永井 龍の岡山の加入後初めての得点でもあり、38永井 龍にとっても2年ぶりの得点となった。これまでも38永井 龍が決めるチャンスがあった試合が多かっただけに、待ちに待った得点であり、ここから調子が上がっていく可能性も高く、岡山にとって価値のある得点であった。それだけストライカーにとっての最初の得点は大きい。40節時点であるが、これから重要な試合が控えている岡山にとっては、1点以上の価値がある。

2、90分の力


 前半の45分は、岡山が先制こそしたが、ほぼ甲府が主導権を握ったという前半であった。今季の岡山は、CKが少ない通り、ボールを保持する。もしくは、主導権を握るというのが、苦手とも言えるサッカースタイルである。どちらかと言えば、この試合のように高い守備意識の対人守備の強さで耐え凌いで、ロングパス一本でもチャンスを作れる強力なストライカーの質を活かして、勝利してきた。

 ただ、そこに辿り着くまでは大変であった。ロングパスのみでは、決定機と言える決定機をなかなか作れないからである。先制点を奪って、カウンターを狙えれば別だが、そう簡単にその先制点を決める事はできない。特に開幕戦の甲府での快勝が、印象的で、その後は警戒されることとなったためだ。

 もちろん、岡山のサッカースタイルも未熟であった事も大きいが、それは、開幕戦の甲府も同じで、この試合の両チームの内容と結果を見ての通り、派手に点の取り合いになるような隙を両チームとも魅せる事はなかった。岡山は、どちらかと言えば、前節の金沢戦の敗戦のダメージと反省もあり、かなりバランスにシフトしたサッカーとなっていた。

 そのため、甲府は、ボール保持するもゴール前を固める岡山の守備の壁を打ち破れず、時間だけが過ぎて行く。岡山も甲府のパスワークの隙を探しての高い位置でのボール奪取や背後のスペースを狙って行く攻撃を見せていたが、甲府のサッカーの完成度も高く、追加点を奪うことができずにいた。

 ボール保持はともかく、ロングパスという一見確立の低い攻撃も10ウィリアン・リラの高さ・強さ・速さの3拍子揃ったターゲットがいたことで、まさに隙のない攻撃を続ける事で、岡山の守備の攻略の糸口を探っていた甲府。

 この甲府の持続性のある攻撃が実ったのは、後半28分。主導権を握っていた中で、得たCKで、ショートコーナーで、岡山の守備の視点をずらすと、僅かな空間のスペースに頭で合わせた2須貝 英大。35堀田 大暉が反応して触るも弾ききれず、ゴールネットを揺らして、甲府が同点に追いつく。

 岡山の14田中 雄大も頭でも決める事ができるように、2須貝 英大が、172cmというCBとしてはあまり高くない身長でもCBを任されている通り、空中戦の強い選手もいる。この得点は、しっかりミートされた打点のヘッドで、正確にゴールの隅を狙ったヘッディングシュートでもあり、まさに技有りのゴールと言える。頭で得点を決めるためには、高さだけではなく、打点で合わせる技術とそこに入っていく巧さが求められるということを改めて感じた得点でもあった。

 主導権を握る中で、シュートを重ねて、それで得たCKの機会の1つで、しっかり得点を奪うという甲府の良さと意地、勢いを肌で感じた。そして、10ウィリアン・リラが下がった後もタイプこそ違うが、9三平 和司が、その役割を引き継ぎ、ゴールにあと一歩と迫った。全く同じ役割は無理かもしれないが、90分間高いパフォーマンスを発揮できるという点は、9三平 和司の活躍から甲府の強さの源泉は、この辺りにあるのではないかと感じた。

3、1分の力(木山マジック)


 一方で、今季の終戦の岡山は、失点してからも粘りがある。序盤戦こそ、そこから勝ち切る術が足りなかったが、終盤に大きく勝ち点を稼いでいる通り自分達の武器を磨きつつ、その武器を活かせる場面を増やしていった。どんなに結果が欲しくても継続と変化をバランス良く決断し、チームを強化してきた。シーズン途中での選手の入れ替わりが激しかった事が示す通り、今季の岡山は、常に強くなる事を意識して戦って来た。

 甲府のように90分間で、主導権を握るサッカーを岡山ができないかもしれないが、岡山は、サイド攻撃を磨いてきた。4-1-2-3からスタートした通り、サイドから崩して、中で決める意識が高かった岡山であるが、中盤やDFラインでの組み立てが不安定であったことからダブルボランチや3バックを中心に試行錯誤を続けて来た。

 そして、辿り着いたのが終盤に採用することが多くなった3-1-4-2である。実は、これは4バックでもあり、3バックでもある可変式のOkayama Styleという独自スタイルなのである。全てを説明すると、膨大な文章量になるので、この試合で、勝負を分けた強みだけを紹介していく。

 この3-1-4-2は、サイド攻撃をより強力にするための工夫が織り込まれている。有馬ファジの時は、SBとSHの連係で崩していくという事をどちらかと言えば主体においていたが、今季の木山ファジでは、岡山の矢(三本の矢)を明確に、独立した武器にすることを狙いにしている。

 まず、一本目の矢が、16河野 諒祐の右足であり、右サイドである。フォーメーション図上では、右WBだが、基本的には右SBである。チャンスの時だけオーバーラップして、クロスやパスで右サイドからアシストを量産してきて、機を見たインターセプトからのカウンターも鋭い。これは、有馬ファジ以上に役割の範囲は広く、右SBと右SH、右WGの全てを任されている。この自由性で、対応の難しいサイドを攻撃を可能としている。

 そして、2本目の矢は、左WB(WG)の攻撃の自由である。22佐野 航大と24成瀬 竣平が、このポジションを任されている。時には、5-4-1のようにサイドの低い位置まで下がって守備をすることもあるが、基本的には、仕掛ける自由と崩す自由が与えられたポジションである。守備の負担を極力軽くして、リスクを冒すことが許されている。DHとSBが本職で一定の守備の力があるとはいえ、両選手の武器は、攻撃にある。そこを活かすためのポジションである。そのため、このポジションには、9ハン・イグォンが入る事もある。22佐野 航大の成長も大きいが、チームが成長して行く中でより、22佐野 航大も輝いたのもこの役割の工夫の効果は、決して小さくないだろう。

 最後の三本目の矢は、41徳元 悠平がロングスローである。本職がSBであり、攻撃参加をすることもあるが、4-4-2や4-2-3-1の形であるとどうしても長い距離を走る事が求められる。そのため、怪我のリスクが高くなってしまう事と90分間出場が難しい試合が出てきてしまっていた。それが、CBとしての守備のタスクがより多くなることで、オーバーラップが減り、逆に負担が減って、90分間ロングスローをすることが可能となる試合が増えたのである。

 岡山は、この3本の矢をフル活用することで、終盤の勝利に繋げてきた。特に3本目の矢は、今季最大の木山マジックだと思っている。そして、それは、この試合でも結果に繋がった。ロングスローのこぼれ球に反応した22佐野 航大がシュートを放つとGKの1河田 晃兵が、弾いた。このこぼれ球を9ハン・イグォンが押し込んで岡山が、後半35分に押し込んで、甲府の反撃を凌いで、岡山が逃げ切る事に成功した。

 41徳元 悠平のCB兼任によるDFラインの組み立ての安定や16河野 諒祐とのSBらしい守備の対応力や22佐野 航大や24成瀬 竣平の守備も献身的に行う中で、攻守一体で安定感と力強さを、木山ファジは生み出す事にも成功したのである。

 この3本の矢は、主導権を握るという部分では、大きな役割を果たせないかもしれないが、攻撃の1つの局面に移ると、絶大の個の力を発揮することに繋がっている。この3本の矢が輝くことで、この試合で得点を決めたCFの38永井 龍、9ハン・イグォンがシュートを打つことに繋がり、15ミッチェル・デュークや7チアゴ・アウベスの大活躍に繋がったのである。

 この3本の矢は、残り試合で、勝利に繋がる武器になって欲しいと願うばかりである。90分間の内1分間しか岡山が有利な場面がなくても勝てる可能性がある。それが岡山の強さでもある。

4、試合雑感


 この試合は、両チームの良さが出た試合と言える。逆の展開になっても不思議ではなかったが、甲府が水曜日に試合(天皇杯)があったことやリーグ戦での状況の違いが、この結果に繋がったかもしれない。甲府は、この試合に敗れて、7連敗となったが、それによって、天皇杯の勝利が幸運であるという結論にはしたくない。

天皇杯では、主導権を握れていないかもしれないが、ロングパスとポゼッションのどちらでもハイレベルに使える甲府の攻守の柔軟性は、守備の安定感に繋がり、一瞬の隙を突いて、得点を決める力もある。リーグ戦では、ボール保持する点ばかりが目立つが、総合力の高さこそ甲府の武器であると感じた。

 また、9ハン・イグォンが熱くなった場面は、接触プレーがあって激怒したものと思っていたが、先に突き飛ばされていた。だからといって、突き飛ばし返して言い訳ではなく、熱くなりすぎて退場となって、敗れる事となってしまえば、チームとしても本人としても悔いの残ることとなってしまうので、こういったことは気をつけなければならない。

 9ハン・イグォンだけではなく、8ステファン・ムーク、15ミッチェル・デュークの3選手は、熱くなり易い場面もあり、岡山としての心配している点ではあるが、よく考えると熱くなり易い選手の気持ちを巧くケアしている木山 隆之監督の凄さ(1人出れない事への配慮と交代のタイミングの巧さ)を感じるところではる。

 7チアゴ・アウベスはラフプレーはしないが、演技している面もある。23ヨルディ・バイスもラフプレーはしないが、接触プレーを恐れない事に加えて、その強さを活かした守備をすることもあり、デュエルの激しさや強さが、J2で目立ってしまうことで、時には批判の的になることがあるが、この両選手は、前者の3人と違い非常に冷静で、怪我をさせない配慮が感じられる。

 抽象的ではあるが、例をあげると、CBは抜かれてしまうことで、失点に繋がるリスクが高いので、どうしても手を抜いたプレーができない場面が多くなるが、23ヨルディ・バイスが、後から危険なタックルや手で引っ張ってカード覚悟で止める対応をしていたというシーンは、少ない筈である。1対1でデュエルや空中戦で、どうしても激しい接触が生じてしまうことは致し方ないが、彼らのこうしたサッカーへの紳士的な姿勢は、評価されているからこそ愛されている選手で、言葉だけではない。

 悪質なプレーを仮にしてしまった場合は、批判されても仕方ないが、岡山サポーターとして、こうした23ヨルディ・バイスのプレーをまじかで見える事は、本当に幸せなことであると改めて感じている。残り試合も彼のプレーや言葉を眼と耳、心にしっかり残したい。

 そして、守備のシーンで、「怖い・危ない」ではなく「強い・凄い」といった守備で、勝利に繋げて欲しい。

 残り試合は、2試合で、自動昇格できる可能性も僅かだがある。岡山は、ここまで、絶望した事が何度もあったが、そこから希望に変えてきた試合もあった。残り2試合で、絶望の軌跡の延長で、プレーオフに回る可能性もあるが、自動昇格の奇跡。もしくは、プレーオフを勝ち抜いての昇格の奇跡を信じて、最後まで応援していきたい。

 また、そこに向けて準備する6喜山 康平、17関戸 健二、18齊藤 一樹、11宮崎 智彦、2廣木 雄磨の想いを背負って戦う岡山の22シーズンの戦いを最後まで見届けたい。

文章・図・写真=杉野 雅昭
text・figure・Photo=Masaaki Sugino

追加のファジ造語
岡山の矢(三本の矢)
雉語録

アディショナルタイム(おまけ)

ファジ造語

チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー
は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベスを軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2。効果的なサイド攻撃やカウンター攻撃は切れ味鋭く、中央ラインの強固さで、J2屈指の堅守となった。

ヤバスギタ山城
 柳の「ヤ」、バイスの「バ」と「ス」、喜山の「キ(’’)」、堀田と梅田の「タ」、そして本山と喜山の「山」。まさしく攻略の難しい山城。そしてセットプレー=飛び道具が効果的な組み合わせとして、岩政 大樹時代を彷彿させる高さと強さを感じる。今後も色々な選手や形を試して行く中で、より強固にして欲しい。

木山ファジVer2.5α
 現状の個の力に赴きをおいたサッカーに組織力を強化することで、攻守でのより高みを目指す。特に重視するのが、「主導権を握るサッカー」。ただ、現状は、後で回すだけに留まり、プレスを受けてしまうことやパスコースが限定される中で、前線の選手の自由が制限されてしまうことで、パスがカットされたり、ゴールに向かってシュートに行く前に奪われたりと、逆にカウンターを受ける事が多くなってしまっている。もしかすると、別の形を模索することとなるかもしれないが、現状は明確な方向性のサッカーを体現できていない。

木山ファジver3
 前半は、15ミッチェル・デュークを軸としたサッカーを展開し、7チアゴ・アウベスの投入を皮切りに、パスに赴きを置くサッカーに展開して行く中で、22佐野 航大のプレーの変化や15デュークと7チアゴの連携、SBの関与、セットプレーの回数を増やす事で、ゴールに迫るスパークをかけることで、90分間での得点機会増に繋がっている。ただ、自分達が主導権を握るサッカーという点では、依然として課題が残っている。そこを残り約10試合で、カバーできるかどうか。

雉プレス(ファジアーノプレス)
 90分間のフルタイムの間、岡山式のハイプレスを続けること。2トップ、2列目、アンカーの7選手が積極的に、前からプレスをかけて、相手の組み立てを大きく牽制し、ボールを奪えれば、強力な2トップと2列目の選手が襲いかかる。そのプレス網を抜けても最終ラインの選手が、前に出て対応し、プレスバックで、自由を与えない攻守一体の岡山式プレス。

木山ファジBEST Ver1
 木山ファジの完成形。岡山が採用してきた3バック、4バック、5バックを1つのサッカースタイルとして体現。時間帯によって形を変える事で、対戦チームの対策を許さない。個性豊か選手を巧く起用することで、個の力を最大限引き出す。チアゴタイム、本山丸、ヤバス要塞、雉プレスと組織と個を融合した攻守にアグレッシブな完成形の1つ。

木山マジック
 あらゆる選択肢と可能性にセオリーや絶対はない。挑戦から修正、そして正解に近づいて行く中で、サッカーの完成度、総合力を高めていく。チームとしての戦術の幅は広がり、対応できないサッカーにより近づく。徹底した個人戦術と、組織的に戦術を兼備。予測不可かつ大胆な起用や策は、実は最適格。正攻法もしっかり採用し、その本質を見抜く慧眼と決断する豪胆さを持った勝負師でありながらリアリスト。その一手で、勝利を手繰り寄せる。

岡山一体
 輪笠 祐士が「秋田一体」のDNAを岡山に持ち込んだ。その時と同時にチームは、コロナで主軸に陽性者が続出の危機的状況に陥った。ただ、「秋田一体」のようにチームの総力戦で、新加入の輪笠を含め、横浜FCにこそ敗れたが、結束して2勝1敗に乗り越えた。こうした経験がチームを一つにし、粘り強さと勝負強さを兼ね備えた結束力が、今の岡山にはある。

「岡山一体」のファジ造語の由来は、もちろんブラウブリッツ秋田の「秋田一体」

Okayama Style 
「ハードワーク・堅守・デュエル」の3本柱をベースに4バックと3バックのメインシステムを軸にしつつ、攻守や状況に応じて変化する可変式を採用しつつも、システム自体も変更できる点が武器で、戦術の幅が広い。自由な発想をベースに個の力も躍動。自由と組織が一体となった新しいKIYAMA STYLEとも言える2022シーズンのファジアーノ岡山のサッカースタイル。

マリオネットストラテジー
 操り人形という意味ではなく、操り人形の構造をイメージしたファジ造語。選手と監督が意図(糸)で繋がっているが、選手と監督に主体性が存在して引っ張り合っても、切れない意図(糸)。それが、絶妙な組織力として強さに繋がっている。2022シーズンのJ2においては、試合の意図したように操る。この戦い方を極めていくことで、岡山の土俵で戦える術を岡山は、磨いてきた。対戦チームには、異質(別の競技)のサッカースタイルにも映るかもしれないが、これが、Okayama Styleの完成を目指すマリオネットストラテジー(主導権を握る戦略)によって、作り出されたサッカーなのだ。

ウルフシステム
 後方の守備のバランスとパスの選択肢を増やす事で、攻守でより手堅く戦える受けの守備スタイルカラーを強めた形。スペース(隙)を少なくして、距離感を良くすることで、安定が生まれた。その結果、前線の1トップ2シャドーは、攻守でより自由に動けるようになった。中盤からのインターセプトからのカウンターの切れ味や中盤から前に出て行く推進力もこの形の武器であり、魅力。今後のオプションの1つで、雉プレスも新たなフェーズに突入した。

岡山の矢(3本の矢)
 試行錯誤の経て3-1-4-2をベースとした3バックと4バックの可変式に辿り着いたOkayama Styleで得た3本の矢。1本目は、右サイドの全権を握る16河野 諒祐の攻守の上下動からの右足で生み出される攻撃の矢。2本目は、左WBを任せられるタイプの違う選手達の仕掛ける自由と崩す自由のゴールへ向かって行く攻撃の矢。3本目は、41徳元 悠平がCBを兼任することで負担を軽減し、90分間ロングスローをする可能とする攻撃の矢。

雉語録
 ファジアーノ岡山も歴史を歩むごとに多くの人がそれだけ絡んで来た。監督や選手だけではなく、スタッフやサポーター、ボランティア、記者の方々など。その1人1人想いは、歴史として語り繋がれる。中でも木村元社長、岩政先生や椎名選手、バイス選手の言葉は、人の心を掴んで来た。その言葉は、記事のように多くの人に伝わり、多くの人の心を動かした。そして、その言葉の数々は、雉(ファジアーノ)の言葉として、将来の世代へと羽ばたいていく。そうした言葉の1つ1つは、岡山の力となる。それが、雉語録である。

代表作


2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」
は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907

筆者紹介

-杉野 雅昭
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。