2022ファジアーノ岡山にフォーカス27 J2 第32節 横浜FC vs 岡山(Away)『 無情の結末と滾る決意 』

2022 J2 第32節(Away)
横浜FC vs ファジアーノ岡山
『 無情の結末と滾る決意 』

 32節の開始前地点で、勝ち点差は9。勝利することができれば、6点差に迫り、追いつく事も視野にできた重要な試合であった。しかし、横浜FCと群馬の試合は、台風で延期となった影響で、中3日で、この試合を迎えることとなった。岡山も、15日にトップチームに陽性者が出てしまっていた。

 これで済めばまだ良かったのだが、恐れていた事態が起きた。試合当日に6人の陽性者が追加で出てしまった。濃厚接触者を含めると、実に11人も試合にエントリーできない状態が、生じてしまった。まさかこのタイミングでという岡山関係者に衝撃が走ったニュースが、よりによってこの試合でと強く感じた。

 しかし、適性ポジションに選手が揃わない可能性もあった中で、守備の要の3選手を含めて、自分達のサッカーができるメンバーを辛うじて登録することができた。岡山が、欠場となってしまったのは、出場停止の5柳 育崇とコロナで欠場の可能性の高い26本山 遥、14田中 雄大、44仙波 大志、38永井 龍、41徳元 悠平、16河野 諒祐、7チアゴ・アウベスという主軸8選手が、メンバー外となってしまうという緊急事態であった。

 特にチーム得点王(リーグ2位)、チームアシスト王(リーグ1位)の将棋で例えると飛車と角に当たる攻撃の要の欠場は大きい。ルーキーで、ここまで全試合出場を続けてきたルーキー2選手。唯一無二のロングスローの超攻撃的SB。そして、流れを変えることのできる切り札の2選手も欠場。特徴などを挙げるだけも頭が痛くなるような欠場選手達ばかりであった。

 この試合にかける両チームの監督や選手も多かった中で、ベストの状態で組めなかった両チーム。ただ、アクシデントは付き物であるのも事実であり、試合は待ってくれない。色々な意味と価値があり、色々な感情が入り混じる試合で、笛を吹くのは、山下 良美主審。調べて見ると、女子サッカー代表のワールドカップでの笛を吹いた経験もあり、着実に内外の評価を高めて、ステップアップしてきた。カタールワールドカップでも主審を務める可能性のあり、日本屈指の女性の方の審判員の一人と言えるだろう。男子の試合での経験こそ少ないものの、女子サッカーで培ったレフリングは、確かなものがある。

 判断の難しいジャッジを迫られたシーンが多いだけでなく、両チームの選手が熱くなるシーンも多く、非常にジャッジでのゲームコントロールが難しい試合となったが、100点満点とまではいかなくても、見事にゲームコントロールされた試合は、退場者がでることなく、90分間終える事ができ、この激闘を主審として評価を高めた試合になったのでは、ないだろうか。

 さて、色々な感情や背景など、言葉で表現できない感情の中で行われた試合を振り返っていく。また、山下 良美さんの審判としての経歴などに興味ある方もいらっしゃると思うので、Wikipediaのリンクを貼っておきますので、興味ある方はどうぞ。

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2022 J2 第32節 横浜FC vs ファジアーノ岡山 フォーメーション図

1、戸惑いのイレブン


 岡山を迎え撃つ横浜FCは、13サウロ・ミネイロこそ、前節の群馬戦で負傷し、欠場こそしたが、リーグ得点ランキング1位を独走する18小川 航基を1トップに据えて、シャドーにここまで5得点の8伊藤 翔と、アシスト7本と16河野 諒祐を猛追する38長谷川 竜也。中盤には、経験豊富な6和田 拓也が引き締める。最終ラインには、攻撃的な左右のCBである19亀川 諒史と、3中村 拓海の中央に5ガブリエウが構える形。守護神の49スベンド・ブローダーセンも岡山の15ミッチェル・デュークが、岡山に加入したルートと一緒で、東京五輪の流れで、日本でプレーすることとなった選手の1人である。センターラインが盤石であった横浜FCの隙のない陣容で、難しい試合になることは間違いないメンバーであった。

 一方で、岡山は、今季初めて、スタートから3-4-2-1を採用。7チアゴ・アウベスに代わり8ステファン・ムークがシャドーとして久々の出場。同じ豪州代表に招集される可能性(8ムークは世代別での経験に留まっているが)のある両選手のコンビプレーは、可能性を感じる。その横のポジションで、10宮崎 幾笑が、こちらも久々で初のシャドーでの出場。WBには、22佐野 航大と24成瀬 竣平。一般的なWBと違った現代型のサイドプレーヤーの二人がサイドを任された。

 そして、守備的なボランチには、秋田から新加入の攻守の武器がある34輪笠 祐士と、サッカー王国清水で愛された27河井 陽介。最終ラインには、左から11宮崎 智彦と23ヨルディ・バイス、4濱田 水輝のタイプの違う3人が並び、守護神には、35堀田 大暉。スタメン11人に関しては、戦えるメンバーが揃った。

 最悪の事態も考えていたが、戦えるメンバーであると感じた。特に守備の要がしっかり揃えられたことは大きかったことは間違いない。

 では、この両チームの試合がどうであったか、振り返っていく。


2、試行錯誤と電光石火


 当日の陽性反応の出た岡山は、準備期間がなく、試合開始寸前まで、メンバーが決まらなかったと試合後に木山 隆之監督が語っている。ぶっつけ本番という言葉があるが、まさしくそういった感じで、試合を迎えた。一方で、横浜FCは中三日という事もあり、勝利して迎えるこの試合には、勢いを持って入って来た。

 ただ、ぶっつけ本番という意味では、横浜FCも一緒であったのか予測不可能であった岡山の戦い方の前に戸惑うシーンもあり、両チーム激しい立ち上がりとなった。岡山が、3バックという奇襲で岡山が攻守で、ゴールに迫る形を作ったと思えば、岡山の連係ミス1つから、横浜FCが、一気にゴールまで運び、GKとの1対1やポストバーに当たるシュートなどの決定機を作った。前半の岡山は、このように絶体絶命のピンチとなるシーンが何度もあった。

 前半は、「シュートに結びつけた横浜FC」に対して、「形を作りながらもシュートを打てない岡山」という構図であった。スコアが動かなった事で、一進一退の戦いが繰り広げられた前半。

 横浜FCのシュートまで行ける形として、岡山のパスワークでの乱れからの速攻の形が多かった。守備時の組織的な対応(連動した守備)ができない岡山の被シュートが多くなってしまうことは、致し方ない。

 一方で、岡山は、スタメンの11人に関しては、スタメンの選手が5人欠場したとは思えない攻撃の形も作っていた。22佐野 航大と24成瀬 竣平というドリブルやクロスだけではなく、パスワークで崩せるOMFのようなプレーができる両サイドのWBの選手が、シャドーの10宮崎 幾笑と8ステファン・ムーク、ボランチの34輪笠 祐士と27河井 陽介の両ポジションの選手と、意思疎通が巧く行った時のパスでの崩しは、秀逸で可能性を感じた。

 22佐野 航大が、人数をかけてシュートを狙ったシーンや気が付いたらフリーとなってクロスまで行ける24成瀬 竣平。裏へと抜けだすシーンも作った10宮崎 幾笑。ボール奪取から形を作る8ステファン・ムーク。

 ただ、準備期間が短かった事で、どうしてもシュートをなかなか打てなかった岡山。一方で、シュートで終えることができた横浜FC。この前半を凌げたことは岡山にとっては大きかった。善戦した岡山と、仕留め損ねた横浜FCという構図であったが、後半になると、この構図に変化が生じることとなった。


3、無情の失点と底力


 後半は、前線と打って変わって、岡山が攻める時間が長くなる。中三日の影響がここに出てきたのか、チームスタイルによるものなのか。それとも38長谷川 竜也が下がった影響なのか。横浜FCの運動量が低下して行く中で、岡山が、シュートまで行ける形が増えて行く。安易な連係ミスが減って行く中で、存在感を増しているのが、34輪笠 祐士である。対人守備の巧さでピンチの芽を未然に防ぐと、高い基礎技術と視野の広さに裏打ちされた攻撃参加とパスでのチャンスメークで攻撃に絡む。34輪笠 祐士のプレーにより岡山のパスワークのスピードは加速する。いつも以上に、決定的なパスを出せる27河井 陽介。横浜FCの守備強度が、そこまで高くないものがあるとはいえ、一定エリア以上に進入すると、当然厳しい守備で、岡山の進入を阻もうとする中でも高いパフォーマンスを続けていた。

 そのプレーは、今季のストーブリーグで、徳島に移籍した白井 永地を彷彿させる活躍であった。個人的には、アジリティの部分やチャンスメークの部分で、白井 永地以上のプレーもできる選手にも感じられた。縦横無尽にピッチを走り、局面での数的有利を作れる上に、26本山 遥になかった球離れが早く、正確なパスワークは、4-4-2からスタートして、3-1-4-2に移る時のサッカーを1ランク押し上げてくれる選手であると確信することができた。

 8ステファン・ムークが、守備にプレーを寄せる事で、ストライカー色が強まる15ミッチェル・デューク。次第にゴールに迫るシーンも増えて行く。24成瀬 竣平のDFラインを無力化するパスワークからの動き出しで、裏へ抜け出すシーンも増えていき、22佐野 航大の予測できないプレー、岡山の良さが出ていて手応えを感じていた時間帯が続く。

 10宮崎 幾笑に代えて、9ハン・イグォンを投入すると、推進力を活かした仕掛けも増えて、横浜FCにプレッシャーを与えることもできるようになった。ただ、岡山が1人目の選手交代した時には、横浜FCは、既に3選手の交代を終えていた。内容は、岡山が押していた時間帯であったが、その影響は少しずつ出ていて、ボディーブローのように効いていたことは間違いない。

 セットプレーと流れの双方からシュートまで行ける形を作っていた岡山であったが、その時は突然訪れた。岡山のCK。キッカーは27河井 陽介。27河井 陽介の右足から放たれたクロスに、4濱田 水輝が合わせることができて、ゴールに向かって行く。しかし、横浜FCの選手がゴールラインの前でクリアされ防がれてしまった。

 この直後の流れで、岡山の選手が抗議していたのに対して、すぐに切り替えて攻撃に動き出していたのが横浜FCの選手。ファーストディフェンスが遅れた岡山の守備網の隙をついたパスが繋がり、そこからロングカウンターが始まる。

 ボールを持った30山根 永遠は、長い距離をドリブルで持ち運ぶとスルーパスを、48山下 諒也へと通すことに成功し、48山下 諒也は、PA内に侵入する。GKの35堀田 大暉が詰めてコースを塞いでいて、簡単ではないシュートであったが、気持ちを籠めて蹴ったという魂のシュートは、GKの35堀田 大暉が手で触ったにもかかわらず、軌道の終着点は変わらず、無情にもボールはゴールへと吸い込まれていった。

 岡山が、動きを止めて抗議していた理由が何か、何度も確認してようやく分かったが、4濱田 水輝が、腕で抱き着かれるようにされて倒されていた可能性(あくまで可能性)があったようだ。これは、VARがあっても吹かれる可能性も低そうな(どうなるか分からない)ジャッジとなるので、笛を吹くのは困難であった。確かに、抗議したくなるシーンではあったが、横浜FCの選手が、次のプレーに備えて動いていたことで、ロングカウンタ―に繋がってしまい。岡山にとってチャンスからの急転直下の失点を喫してしまうことになった。そして、4濱田 水輝が、試合後に語ったように、この時、すぐに準備出来ていれば、防げた可能性のあった失点であったかもしれない。まさに一瞬の隙と言える失点までの流れであった。

 失点してしまっても、より攻勢にでていく岡山であったが、4人までの交代に踏み止まった通り、流れを変える事ができる選手を欠いたことで、交代カードを切ることのできない木山 隆之監督。結局、その1点を奪うための力が足りず、横浜FCの前に敗れ去る事となった。こういった上位の強いチームと対戦した時に、交代カードをきれない事は、昨季終盤の京都戦のように、チームの総合力が低下し、相手に隙を与えてしまう可能性がある場合には、交代カードを切る事を断念する時に起こる場合が多い。

 しかし、これは長く岡山を応援してきたサポーターほど、ショックを受ける選手起用でもあった。17関戸 健二を投入することが、チームとしてプラスになる状況でなかった。2廣木 雄磨に関しても同様のことが言える。そして、足を痙攣した24成瀬 竣平に代わって入った25野口 竜彦も存在感を出す事ができず、プレーに関与できる回数は限定的であった。交代選手が、勝負を決めた横浜FCと、交代選手を5人使えなかった状況であった岡山。

 厳しいチーム状況の中、勝利できる可能性のあった岡山。健闘したと言えば聞こえが良いが、突き付けられた現実は非常に重いものとなった。今後、岡山の事態がより悪化する可能性や、他のクラブも同じ状況に陥ることもある。この試合の岡山のようにあらゆる事態を想定して、その時のために準備して、少しでも勝ち点を積み重ね最後まで勝ち点3を狙って、昇格を目指して行くしかない。

 それでも岡山としては、アンカーに6喜山 康平を据えて、22佐野 航大と34輪笠 祐士のIHを据え、WGに18斎藤 和樹と9ハン・イグォンという形で、攻勢を強めて、15ミッチェル・デュークの惜しいシュートなど、リードを守るために自重して、ゴール前を固めている横浜FCを攻め立て、CBも上がるなど、岡山は果敢に攻め続けたが、最後まで横浜FCのゴールを割る事はできず、悔しい敗戦となった。


4、勝敗を左右したもの


 今季の岡山は、最後の質で、僅かに上回り勝ち点を積み重ねてきた。横浜FCの完勝という訳では無く、決定機も作っていた岡山であったが、前半の横浜FCの猛攻の形や再三のカウンタ―で再現された切れ味の鋭いシュートまで行ける攻撃の質と、完成度の高さを活かした攻撃の部分での両チームの差は明確であった。そのため、後半の劣勢の中でも、一瞬の隙を見つけて、確実にゴールを決めきって、苦しみながらも残り時間を凌いで横浜FCが勝利した。この勝利の形は、今季の岡山に似て重なる部分もあった。

 ゆえにこの試合で、横浜FCに苦しい時間帯があった中でもしっかり勝ち切る強さが、本物であったことは、岡山サポーターの1人であるからこそ、強く感じることになった。普段の私であれば、「悔しい」という言葉を使うことは少なく、「完敗であった」と対戦チームを称賛することも多く、悔しさどころか、対戦チームのハイレベルなサッカーに対して感動して、そのサッカーを見る事ができた喜びが勝ってしまうことすらあるが、この試合は、とにかく悔しかった。

 それは、岡山のしたかったサッカーで、横浜FCが、勝利したからであることに他ならない。だからこそ、その強さの持っている横浜FCに対して、ここまで戦えた岡山の選手達と監督には、岡山サポーターとして「心から誇りに思う」。

 もし、前半すぐの1対1のシーンを決められていて、ポストバーに当たったシーンで、横浜FCの選手のシュートが決まっていたら、確かに大差のゲームになった可能性もあった。4濱田 水輝が18小川 航基を掴んで倒したシーンでPKを取られていたら、1人少ない状況にもなった可能性もあった。それでも、岡山が、懸命に戦い抜いたことで、1-0という僅差のスコアにできた。

 岡山視点でもこの試合を迎えるにあたって、不安の大きかった試合であったことは間違いないが、サポーター・選手・監督の多くは、このメンバーであれば、勝利できると信じて、キックオフを迎え、繰り返しになるが、最後まで戦いきったからこそ、勝利こそできなかったが、1-0という最少得点差のスコアの試合にできたのだ。

 横浜FCとしても中3日で、群馬戦に勝利する前に2連敗しており、ベストメンバーでない岡山に負けるわけにはいかないという心理的なプレッシャーもなかったということはない筈である。試合途中で映った四方田 修平監督の険しい表情も印象的で、横浜FCにとっても大きな勝ち点3であったことがよくわかる。

 苦戦することは横浜FCも覚悟していたことであると思うが、もしも「まさかここまで岡山が戦えるとは思わなかった」と、感じた横浜FCの選手や監督、サポーターが1人でも内心抱いていたとするならば嬉しい。しかし、選手や監督は、口にすることは決してないだろう。それは、岡山としても同じで、言い訳にする選手や監督はいなかった。

 欠場選手の多かった岡山が、横浜FCにここまで善戦できたことで、他クラブへプレッシャーをかけることができたのは、間違いない。この試合の選手の健闘は、決して無駄になることはなく、今後の試合に活かしていくためにも勝ち点を1点でも積み重ねていくことが必要である。岡山サポーターの1人として、J1昇格の可能性を信じて、ベストを尽くす選手達を、最後まで信じて応援していきたい。

 この試合の横浜FCは強かった。だからこそ、次こそは勝ちたいと、強く思った。新潟も勝利し、岡山の自動昇格はより厳しくなったかもしれないが、監督・選手・サポーターなどの横浜FCファミリーと、次に対戦することがあれば、両チームが良い状態で戦って、勝ちたい。

 その試合の舞台が、来季のJ1であれば、より燃えるよね。両チームともまだ何も手にしていないが、J1昇格に向けて、残り試合ベストを尽くすことで、来季の「J1」というリーグ戦での対戦実現するかもしれない。戦って勝ちたい。そういった悔しさを抱けた。サッカーの勝負を楽しむことができたのもまた事実で、横浜FCには、感謝の感情も同時に生まれてきた。素晴らしい熱戦を有難うございましたと、両チームには伝えたい。

5、岡山への試合雑感


 34輪笠 祐士の活躍は、岡山にとって、この試合の最大の収穫である。例えば、26本山 遥でスタートして、途中から24成瀬 竣平、44仙波 大志、22佐野 航大、34輪笠 祐士といった2列目を形成することで、相手を圧倒するパスワークもできる戦術的な幅の広がりや、チームの総合力の底上げに繋がる。今後26本山 遥、34輪笠 祐士、27河井 陽介といった3選手が、ハイレベルな競争と共存により、チームの追い上げのキーマンとなると確信できた。前述した流れで、触れたが、26本山 遥に足りなかったチャンスメークの部分で、一段回押し上げる事ができる。この横浜FC戦のような試合でこそ、その力は輝くこととなるだろう。左SBや左WB、左CBなどでの起用もテストする中で、チーム力を、まだまだ伸ばすことができる選手の1人である。

 スタートから採用した3-4-2-1システムでは、8ステファン・ムークや10宮崎 幾笑が持ち味を存分に発揮した。ターンオーバーが求められる連戦で、採用する形としても視野に入れる事ができるゲーム内容であった。それだけに温めていた形かもしれないが、今後も機会があれば、テストする価値があり、勝ち点3に繋げる事もできるシステムの1つだと感じた。

 そして、この試合終了時点で、実戦で採用したフォーメーションの形は、4-4-2をベースに、4-2-3-1、4-1-2-3、3-1-4-2(5-3-2)、3-4-2-1(5-4-1)、3-3-1-2(5-3-2)など、戦術の幅が広がった。多くの選手が起用されてきた今季だが、まさに戦術と戦力を総動員した総力戦で、チームとしての上積みは着実にできている。

 一番欲しかった結果こそ手に入れる事はできなかったが、収穫の多い試合でもあった。この悔しさを、今後の結果に繋げる事で、23ヨルディ・バイスの試合後のコメントで語った。

「我々は勝者になるべきなので、言い訳を言うことは無い。」

23ヨルディ・バイス(横浜FC戦試合後コメント:一部抜粋引用:ファジアーノ岡山公式HPより)

 最後に勝者になるという強い意志表示とも感じ取れるコメント。このコメントを聞いたサポーターが、心強いと思ったのは間違いなく、帯同できなかった選手達も決意を新たにしたことも間違いないだろう。

 また、横浜FCに対して、それなりに攻める事ができた試合でもあったが、1つの条件が違うだけで、内容は大きく変わって来る。岡山は、ベストメンバーではなくても、ある程度、健闘できるメンバーであったように、23ヨルディ・バイスの

「簡単に負ける我々ではないが、簡単に勝てる試合もない。」

23ヨルディ・バイス(横浜FC戦試合後コメント:一部抜粋引用:ファジアーノ岡山公式HPより)

という言葉通り、選ばれたプロの18人で、同じカテゴリーのチームに対して、楽に勝てる試合はないのは、当然であり、どういった状況でも最後まで勝負を目指すという気持ちの強さを感じた。

 だからこそ最後まで、諦めずにチームを信じて、応援していきたい。そう改めて強く思った。最後に、公式HPより3つ目の23ヨルディ・バイスの言葉を一部抜粋し、レビューを終えたいと思う。最後まで読んでいただき有難うございました。

「絶対に立ち上がる強い力が、我々にはある。」

23ヨルディ・バイス(横浜FC戦試合後コメント:一部抜粋引用:ファジアーノ岡山公式HPより)

文章・図=杉野 雅昭
text・figure=Masaaki Sugino

おまけ

ファジ造語

チアゴ・タイム
 7チアゴ・アウベスのプレーの一つ一つにサッカーを楽しむという遊び心があり、そこに技術が伴った左足の凄さを称えて「悪魔の左足」と、呼ばれている。その左足を活かして、何処からでも何時でも狙っていて、7チアゴ・アウベスが出場している時間帯は、岡山の大きな得点源と言える。

本山丸(イメージは真田丸)
 大阪の陣で、大阪城に迫る徳川の軍勢に対して、真田丸は、大阪城の弱点を補う出城として築かれた。23ヨルディ・バイスと5柳 育崇の弱点は、釣り出されたときや、スピードであるが、26本山 遥かが主に、そういった守備対応をすることで、3選手の良さをお互い引き出すことで、守備が安定して、堅守を構築に繋がっている。

参考
2022ファジにデータでフォーカス2
「中盤の真田丸(本山丸)」
2022 J2第2節 岡山 1-1 徳島 レビュー

は、こちら(別サイト:SPORTERIA)。
URL:https://sporteria.jp/blog/sugi8823/6905499896963403777

ヤバス要塞
 語呂を意識して、5柳 育崇の「ヤ」と、23ヨルディ・バイスの「バとス」の二文字を抽出して、「ヤバス要塞」と、表現した。防衛において重要な地点の砦。砲台もある砦のことも指す。高い対人守備だけではなく、ロングパスの精度やセットプレーの得点力があり、まさしく要塞と言える。攻守で強みを発揮できる「ヤバス要塞」として、難攻不落を目指す。

梅田アウォール
 ファジの最後の壁。ファイアウォールに比喩した表現。戦術や個の力、連動性といった攻撃で、ゴールを狙ってくる様々な攻撃をシャットアウトする。そして、バックパスの受け手として、フィードや組み立てる一人として、パス交換(情報通信)。後方からの冷静なコーチング(情報の発信)。多くの情報を整理し、最的確な決断ができるGKである1梅田 透吾の良さを表現したファジ造語。

0バックシステム
 攻撃的で積極的なオーバーラップや得点力のあるCBである5柳 育崇や23ヨルディ・バイスのCBの2選手と、SBが本職である26本山 遥といった流動性のあるDFラインを形成することで、攻守において、自由に動くことで、攻守での手厚い状態を作り、数的不利になりがちな局面で、数的有利の攻撃シーンを演出し、守備でも積極的なアクションで、事前にピンチの芽を摘み、流動性から生じる集中力と緊張感から、カバー&フォローで、リズムを作り出す戦術システムのファジ造語。

木山ファジVer1
 2022シーズンの開幕からトライした新システムの4-3-3。超攻撃的なサッカーで、7チアゴ・アウベスを軸とした、自由と個の力を前面に展開していく。選手のコンバートやルーキーの積極起用で、勢いと爆発力があった。攻撃だけではなく、前からの守備でも効果的で、嵌める・奪うから得点に繋げることのできた試合もあった。ただ、対戦チームの対策が進む中で、勝ち点3が遠く、順位を下げて行く中で、4-3-3の戦術的アップデートの一時中断からの路線変更を余儀なくされた。

木山ファジVer2
 10節という節目で採用された4-4-2。4-2-2-1-1とも言える形で、4-2-3-1とも言えるが、ダブルボランチを採用することで、攻守での安定感が高まった。有馬ファジの4-4-2とは違い攻撃的な選手と、ロングパスの得意な選手が多く、速攻を主体として、速さ・強さ・高さを前面に出して、ゴールに出したことで、今季のメンバーに寄せた4-4-2。効果的なサイド攻撃やカウンター攻撃は切れ味鋭く、中央ラインの強固さで、J2屈指の堅守となった。

ヤバスギタ山城
 柳の「ヤ」、バイスの「バ」と「ス」、喜山の「キ(’’)」、堀田と梅田の「タ」、そして本山と喜山の「山」。まさしく攻略の難しい山城。そしてセットプレー=飛び道具が効果的な組み合わせとして、岩政 大樹時代を彷彿させる高さと強さを感じる。今後も色々な選手や形を試して行く中で、より強固にして欲しい。

木山ファジVer2.5α
 現状の個の力に赴きをおいたサッカーに組織力を強化することで、攻守でのより高みを目指す。特に重視するのが、「主導権を握るサッカー」。ただ、現状は、後で回すだけに留まり、プレスを受けてしまうことやパスコースが限定される中で、前線の選手の自由が制限されてしまうことで、パスがカットされたり、ゴールに向かってシュートに行く前に奪われたりと、逆にカウンターを受ける事が多くなってしまっている。もしかすると、別の形を模索することとなるかもしれないが、現状は明確な方向性のサッカーを体現できていない。

木山ファジver3
 前半は、15ミッチェル・デュークを軸としたサッカーを展開し、7チアゴ・アウベスの投入を皮切りに、パスに赴きを置くサッカーに展開して行く中で、22佐野 航大のプレーの変化や15デュークと7チアゴの連携、SBの関与、セットプレーの回数を増やす事で、ゴールに迫るスパークをかけることで、90分間での得点機会増に繋がっている。ただ、自分達が主導権を握るサッカーという点では、依然として課題が残っている。そこを残り約10試合で、カバーできるかどうか。

筆者紹介

筆者紹介
 某ゲームから野球派からサッカー派へと移籍。当時チーム名が、ジェフユナイテッド市原であった現ジェフユナイテッド千葉に興味を持つ。オシム(監督)と阿部 勇樹(選手)を中心にJリーグと代表をチェックしてきた。2008年より地元クラブであるファジアーノ岡山のサポーターデビュー。そこから、多くのファジの試合を見てきた。忘れることのできないエピソードが年々増え、シーズンを重ねる毎に想いは強く深くなり、2021シーズンは、初めて号泣。心からサッカー好きで、戦術の奥深さや、プレーの凄さなど、サッカーの本質での攻防にフォーカスを当てて、客観性と冷静さを意識した文章を投稿している。そのレビューへと突き動かす原動力は、サッカーへの情熱。熱さと冷静さを兼ね備えたフォーカスを今後も目指して、投稿を目指していくことで、サッカーの魅力の発信と、サッカーを通じた交流による、感動の共有と縁の繋がりが、楽しみ。ただ、たまに調子に乗り過ぎて失敗する悪癖もあるので、治したいとは思っている。そんな私ですが、noteやSNS、スタジアム等で、交流できたら嬉しく思いますので、今後ともよろしくお願いいたします。

代表作

2021ファジアーノ岡山にフォーカス46
J2:第42節:ファジアーノ岡山 vs ジェフユナイテッド千葉
「有難う有馬さん、有難う椎名さん、有難うファジ」

は、こちら(別記事)。
URL:https://note.com/suginote/n/n511a1b501907

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自分の感じた事を大事にしつつ、サッカーを中心に記事を投稿しています。今後とも、よろしくお願いいたします。