記事一覧
クレア・ビショップの2023年ベスト10について
クレア・ビショップが自身のブログで、ARTFORUMの編集長であったデイヴィッド・ヴェラスコが解雇されたことへの抗議として、ARTFORUMの2023年ベスト10記事を取り下げていたことを明かし、そのベスト10記事をブログに掲載していた。
ビショップが何を選んでいるのかは実際の記事を見てもらいたいが、ここで取り上げたいのは、ビショップが10位を「ARTFORUM, 1962–2023 (New Y
クレア・ビショップ「『人工地獄』10周年記念再版本への序文」について
もう一昨年のことになるが、2012年にクレア・ビショップの『人工地獄』原書が刊行されてから2022年で10年となった。それを記念して同年VERSOから10周年記念再版本が発売された。それに際してビショップが「10周年記念再版本への序文 (Preface to the Tenth Anniversary Re-edition)」という文章を新たに執筆し、10周年記念再版本に増補されている。これは、
もっとみるクレア・ビショップの論考「情報オーバーロード Information Overload」について
クレア・ビショップが『アートフォーラム』誌の2023年4月号に「情報オーバーロードInformation Overload」という論考(BISHOP, CLAIRE. “Information Overload.” Artforum International, Apr. 2023, pp. 122–89.)を発表したので、久しぶりに(本格的には3年ぶりくらい?)noteを更新してざっくりと紹介す
もっとみる「ジョルジョ・モランディ―終わりなき変奏」(東京ステーションギャラリー)
註)かつて2016年に「ART CRITIQUE ウェブ版」というところに投稿した文章なのだが、ページ組みまで終わってあとはサイトにアップするだけという段階になって初めて原稿料が支払われないということが知らされるという最低なことをされた経緯があるので、ここに転載しておく。
ほとんど重大な出来事が起こらなかった人生を神秘化する形や、もしくはその作品の「静謐さ」や「精神性」を詩的に礼賛する形で、モラ
ボリス・グロイス「Trump’s America: Playing the Victim トランプのアメリカ:被害者を演じる」について
今回は、e-flux journal 2017年9月号に掲載されたボリス・グロイスの論文「Trump’s America: Playing the Victim トランプのアメリカ:被害者を演じる」を紹介したい。原文は以下で読むことができる。https://www.e-flux.com/journal/84/150668/trump-s-america-playing-the-victim/ 2年
もっとみるボリス・グロイス「The Museum as a Cradle of Revolution 革命の揺籃としてのミュージアム」について
今回は、e-flux 2020年2月号に掲載されたボリス・グロイスの論文「The Museum as a Cradle of Revolution 革命の揺籃としてのミュージアム」について書いてみたい。原文は以下で読むことが可能だ。https://www.e-flux.com/journal/106/314487/the-museum-as-a-cradle-of-revolution/ 芸術の有
もっとみるタニア・ブルゲラ「NOTES ON POLITICAL TIMING SPECIFICITY」について
前回の続きで、タニア・ブルゲラが「ポリティカル・タイミング・スペシフィシティ」という概念について論じた文章に関して書いてみたい。前回のクレア・ビショップの論考と同じARTFORUM2019年5月号に掲載されたものようだ。以下のサイトで全文を読める。https://www.artforum.com/print/201905/notes-on-political-timing-specificit
もっとみるクレア・ビショップ “Rise to the Occasion”
『ARTFORUM』2019年5月号に掲載された、クレア・ビショップ “Rise to the Occasion”という文章を取り上げ、その簡単な紹介と感想を記しておきたい。原文は以下で全文読むことができる。 https://www.artforum.com/print/201905/claire-bishop-on-the-art-of-political-timing-79512
一
ネット上で読める僕の文章やインタビュー
展評
2024
「いかにして美術史を語るか、もしくは語らないか──3つの展覧会を中心にして:「TRIO」「シアスター・ゲイツ展」「異文化は共鳴するのか?」」(Tokyo Art Beat)
「カール・アンドレ 彫刻と死、その間――アナ・メンディエタとともに見ること」(RELATIONS)
2023
「有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:菅原伸也(美術批評家)」(ウェブ版美術手帖)
グレイソン・ペリー『男らしさの終焉』
グレイソン・ペリー『男らしさの終焉』小磯洋光訳、フィルムアート社、2019年
本書の原書のタイトルは『The Descent of Man』。「The Descent of Man」でググるとまず出てくるのはチャールズ・ダーウィンの同名の著書である。その邦訳は『人間の由来』もしくは『人類の進化』という題名になっている。おそらくそれなりに素養のある英語話者であれば、本書のタイトルを見るとすぐにダー