003 旅の間違いはコメディのはじまり / ルーマニアの小さな街でネオナチのおじさまに助けられた日
十代の終わり位からバックパッカーにはまり、定職についてからも何だかんだと旅行にいっているので、もちろん「旅慣れ」しているはずが、僕の場合は「旅での間違いに慣れている」と言った方がきっと実情にそっている。
間違いにも色々あって、飛行機や電車の日や時刻を間違える、といった自分理由のもの。また自分は間違ってないのに、勝手にホテルをキャンセルされるなど、他の人が絡む手違いが理由になる場合もあるけれど、予定通りいかないのも旅を面白くさせるポイントだったりする。
昨年夏に新婚旅行で東欧の小さな街を中心にまわってきた。
コロナで2年以上も延期、ようやく実現した旅行なので、もはや新婚でもないのだけど、その旅の中でブルガリアに友人を訪ねたり(前回参照)したのは、会えるうちに友人や家族にも会っておかないといけないな、という気持ちもあった。コロナの時期は日本に帰ることも難しくて、19年の夏から22年の春までカリフォルニアから出ることが出来なかったという経験も大きく影響した。
さて、ブルガリアの後は、
陸路でルーマニアに渡り、首都ブカレストから電車に乗ってトランシルヴァニアの街々を巡る、という予定にしていた。
しかしながら、ここでまさかの、いや案の定、ミスがあった。
トランシルヴァニア電車旅、のはずが
目的地であるトランシルヴァニアの街シギショアラ(Sighișoara)まで行く途中に古い僧院や古城が現存するシナイア(Sinaia)の街で一泊。
ペレシュ城の豪華な装飾に圧倒され、
シナイア僧院の壁画を堪能した後
さて余裕を持って駅まで。
さて、次はシギショアラだ。
と乗り込んだ電車が、
思っていた方向とは逆に進みだす。
あれ??
トランシルヴァニアを更に北に向かって、
深く山の中へ入っていくはずなのに、電車は南へ進んでいる。。。。。
チーン。
時すでに遅し、電車は目的地と反対方向に向かっている。
時刻は夕方。
引き返してみても次の電車を待って見ても、シギショアラへ着くのが深夜になってしまう。僕一人ならともかく、流石に奥様と一緒だし、深夜に知らない街につくのは避けたいな。
電車の中のルーマニアの方々にとても親切にしてくださり、
色々と対策を考えてみたものの、結局は次の駅でおりることに決めた。
まぁ何とかなるだろう……
一泊知らない街で過ごし、明日の朝にシギショアラへの電車に乗ろう。
降り立ったのは観光案内には出てこないクンピナ Câmpinaという街。
とりあえず一晩の宿泊先を探すと、ホテルは見つからず、一件だけAirbnb(民泊)が見つかった。
アプリで宿泊先は確保できたものの、地図を見ても上手く場所がわからず、どことなく殺風景にも感じるのはツーリストの不安な心象だろうけど、このままだと奥様も疲れてしまう。それはマズイぞ! (一応新婚旅行だしな)
僕等は余程困った顔で歩いていたのだろう、
こわもてのおじさんが、見かねたように声をかけてきた。
でもルーマニア語なのでよくわからない。
すかさずGoogle 翻訳で何とか会話を成立?させ、
僕が日本人だとわかると、こわもてのおじさんは何やら喜んで、
「日本は仲間だ!」と
Google翻訳を通して伝えてきて、
さらに袖をまくり上げて入れ墨を見せてきた。
そのおじさんの肩のタトゥーを見て僕は絶句。
(これはナチスの紋章ハーケンクロイツでは、、、!?)
テンションの上がった(ネオナチ?の)おじさんは、
「私はドイツ系のルーマニア人だ。Netflixでヤクザ映画を見たけど、面白かった」
と、何を間違えたのかカンフーの真似をしてえらく陽気だ。
僕にむかって得意になって
「次はイギリス、フランス、アメリカをぶっ潰そうぜ! はっはっは」
と笑っている。
どんな冗談やねん(いや、本気?)
なるほど、未だ枢軸国と連合国で対立を前提とする世界観なのね、おじさま。
だから助けてくれるのかいな? 何にせよ、ここは助かる。
僕はアメリカ人の奥様に英語で
「もし何か聞かれたら(国籍を)メキシコ人と偽って欲しい」
と小声で囁いた。
奥様も、それはわかっている、と頷く。
ここで敵国と思われたら元も子もない。
結局おじさんに案内されて、
宿泊先もわかり、おまけに市場の場所や近所の美味しいケバブ屋さんも教えてくれた。
何だか無駄に緊張したけど、助かったぞ、おい。ありがとー(ネオナチっぽい)おじさん!
確か、亡くなった数学者の森毅センセも「正しい道だけを進もうとするとしんどい。なんとなく迷っているうちに風景の全体像が見えてくる」なーんて話をされていたけど、確かにそういうこともあるので旅は楽しい。
まぁ僕の場合は単にマヌケなだけなのだけれど。
己のマヌケさを嘆く時間はそこそこにして、旅をコメディ化するしかない。
そのようにして人生(旅)は続く。
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