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スポーツのもたらす熱さと感動に心を奪われる韓国ドラマ4本

ドラマももちろん好きなのですが、私はもともとサッカーを始めとしたスポーツを観ることがとにかく大好物で、スポーツを通して受け取る情熱や想いにはことさら感じ入るものがあります。韓国ドラマを観ていても、時折そういったスポーツならではの魅力を存分に表現した作品に出会うとより一層深い感動を得るので、特にその視点で刺さったものをピックアップしてみます。

ストーブリーグ(ナムグン・ミン、パク・ウンビン、オ・ジョンセ)

文句なしにスポーツドラマの傑作です。扱われるのは野球ですが、タイトルどおり「ストーブリーグ」をテーマにしているのが意欲作でもあると思いますし、日頃からスポーツが好きで何かしら応援しているチームがあるというような人には結構グッと来るところ。すなわち一般的な試合が行われるレギュラーシーズンではなく、シーズンオフに選手や監督を始めとするスタッフが移籍して次シーズンに向けたチーム作りをしていく季節を主な舞台とし、金銭面を始めとする球団のシビアな裏側やチームを支えるファンの心理なども描いていくので、華やかな勝負の表舞台よりむしろそんな試合の現場が生まれるための背景だけを緻密に魅せていく秀逸な一本。スポーツの名勝負、名試合には大体そこに至る過程があり、過程があるからこそ心に響くのだとこのドラマを観ると実感します。スポーツに留まらない組織を描く作品でもあり、日本で言うと(観てはいないのですが)「ノーサイド・ゲーム」に近い世界観かもしれません。物語はもちろん、ナム・グンミンのハマりすぎな主演をはじめ、最近も「恋慕」「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」などで難役を鮮やかにこなして存在感を見せつけているパク・ヨンビン、どんな立ち位置でも強烈な存在感で作品力を高める最強バイプレイヤーのオ・ジョンセなど、メインキャスト陣がとにかく豪華。また野球選手たちを演じるメンバーもアスリートとしての説得力を感じさせる面々揃いで見応え豊かです。名作ドラマとしてド直球とも言える仕上がりなので常に必見リストに入れています。

「ストーブリーグ」 - 9回裏ツーアウトなら逆転ホームランを打てばいい


二十五、二十一 (ナム・ジュヒョク、キム・テリ)

青春ドラマの位置づけのドラマかもしれませんが、スポーツものとしてだけ見てもとても素晴らしいと思いました。主人公であるナ・ヒドはかつてはフェンシングで神童と呼ばれたもののスランプに陥って競技をやめる瀬戸際にまで追い込まれている女子高生。ですがその才能と、何よりフェンシングへの愛情が誰よりも強く、根性で這い上がってオリンピックの金メダルを目指していくのです。ヒドとコ・ユリムというもうひとりの天才少女との絆は、人生における「ライバル」という存在の価値を教えてくれます。ときに疎ましいこともあれど、リスペクトしあって切磋琢磨できる相手がいてこそ、生まれる成長や超えていける限界があるのだと思います。そして本気で向かい合わなければ結果が出ないのがスポーツの残酷さでもあります。だからこそアスリート同士にしか分かりあえない辛さがあり、アスリート同士ならば分かりあえる本心もあるのでしょう。人間らしい苦悩を経てヒドとユリムが到達していく高みは本当に美しいものでした。そして彼女たちの情熱は競技を観る人には自然と伝わるほど強いのです。ヒドが金メダルを手にしたあとで世間からバッシングを受けてしまったとき、食堂で彼女を居合わせたおじちゃんたちが労うシーンは、視聴者目線でも喝采を送りたくなるもの。何よりすごいと感じたのはやはり、スポーツのドラマとしてこんなにも感動的なのに、それに留まらず青春、恋愛、友情といったテーマにおいて全方位的に傑出した出来の良さである点かもしれません。

「二十五、二十一」 - 眩しくて切ない、何のために青春が存在するかを知る傑作


刑務所のルールブック(賢い監房生活)(パク・ヘス、チョン・ギョンホ)

スポーツものと考えるとなかなか変化球かもしれませんが、私がこのドラマを観て一番感じたのは、プロスポーツ選手というのがいかに人々に夢を与える存在であるかということでした。韓国野球界のスター選手であるジェヒョクが妹を守ろうとした勢いで人を傷つけてしまい監獄に入ることに。ですが彼は本当にスーパースターなので囚人たちや看守たちは色めき立ちます。もちろん犯罪者が集っている場所でそんなポップな展開が待っているわけはないのですが、それでもジェヒョクの存在が暗闇の中にいるたくさんの人々にとって予想外の光になっていくのです。ジェヒョク自身、仲間を得てその支えを受け、信じられないほどの逆境から再びプロ野球の世界に舞い戻ろうと必死に努力をしていくことに。それこそ実際にスポーツの場面が描かれることはほぼないのですが(ジェヒョクの投球練習などは別として)、スポーツがあることで生じていく人間ドラマを分厚く積み重ねていく、これも文句なしに名作ドラマ。

「刑務所のルールブック(賢い監房生活)」 - アスリートの本分を思う


ナビレラ -それでも蝶は舞う-(ソン・ガン、パク・イナン)

70歳のおじいちゃんが生まれて始めてのバレエに挑戦する。バレエに求められるアスリートとしての肉体を考えたときにあまりにも無謀に思える話ですが、それでも挑戦することに年齢制限がないこと、いつだって今をスタート地点にすればいいのだということを粘り強く伝えてくれるドラマです。その努力はきっとどんなシチュエーションであっても美しいのです。この作品ではバレエという結果が目に見える舞台で努力していく人々を応援する、周囲の人々の変化にも話が広がっています。スポーツというのは頑張るアスリートだけのものではなく、アスリートを支える周囲の人々にとっても世界の見え方を変えるものだと思わされました。そして誰かを応援しようという気持ちがまた人を大きく育てる。冷静に考えたら、何かの大会で誰かが優勝するみたいなことは人の生活に必要なものではありません。でも人間が人間として生きて成長していく上で、スポーツがいかに意味を成すか。手触りをもって感じられる一本でした。

「ナビレラ -それでも蝶は舞う-」 - 夢を追う美しさ、誰かの支えになる意味


国が違えば文化が違い、同じドラマでも表現は異なってきます。ですがスポーツを通して伝わってくる喜怒哀楽というのは不思議と国が変わって同じもののように思います。もちろん環境に左右される部分は少なからずあるでしょうが、スポーツで頂点を目指すということが根本的には純粋な努力を必要とするからかもしれません。シンプルに頑張る人がいて、その姿に心動かされる人がいること。それこそがスポーツだからこそ、ドラマの題材となったときにもスポーツは格別の感動をもたらしてくれる気がします。


▼その他、ドラマの観賞録まとめはこちら。

喜怒哀楽ドラマ沼暮らし

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