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言葉に出来ない感情 前編

  「うおおおおお!何じゃこの感情!どう表せば良いだ!?」



 私はベッドの上でスマホ片手に悶える。そして、久しぶりに涙を流す。

 いや、あんな情熱的な涙を流したのは生まれて初めての体験だった。

 私はお気に入りの黒いスキニーを履いて、Gジャンを羽織るとすぐに家を出た。

 愛車のママチャリに飛び乗る。勢いが余ってペダルを一度踏み外す。バランスが崩れるが、構わずもう一度ペダルに足を乗せる。

 今度はしっかりと足が乗り、ゆっくりと自転車が進み出す。

 外の世界は冷めていた。青春や情熱という言葉を嘲笑う様な人々を尻目に自転車はアオハルを乗せて加速していく。

 すぐに目の前の信号機が赤色に変わって、私は立ち止まる。その間も興奮状態が続き、一秒が数時間にも感じて気持ちが焦りだす。

 目の前には車が何台も通り過ぎていく。頭の中にはドレスコーズの「ピーター・アイヴァース」が流れていた。


「はためいて きりひらいてゆけ 俺のフューチャー!!」


 そして、信号が青に変わる。スタートダッシュは完璧。 

 それから、少し自転車を漕いで此処らじゃ一番大きい本屋に着いた。

 駐輪場にママチャリを止め、鍵を掛けることも忘れ自動ドアを潜った。


 私は、他のものなんて一切見ないでニ階にある漫画コーナーに向かった。

 ジャンプに、コロコロコミックに、ヤンマガに、少女漫画にラノベ。

 全てを無視してお目当ての漫画を探す。しかし、其奴はどこを探しても見つからない。何度も何度も同じ場所を行ったり来たり。

 最後は指で漫画のタイトルを一冊一冊、丁寧になぞっていく。

 結局、自分の力では見つけることが出来なかった。私はどうしても諦めきれず今度はタッチパネル式の液晶モニターに漫画のタイトルを打つ。

 そして、震える手で検索ボタンを押した。しかし、そこには在庫が無いと書かれていた。

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