短編小説 「笑おうじゃないか!」
私の名前はユリン。シャドウグレーの制服を身に纏っている新顔、そう、私がそれだ。何が特別かって?それは私の顔だよ。
いつでも、どんなときでも、どんな状況でも、私の口角は上がり、目尻は下がって、耳まで届きそうな大きな笑顔を浮かべている。
生まれつきそうなんだ。理由はわからないけど、私にはそれしかできないんだ。
この新しい高校で初めて私を見た人々は、目を見張る。私の顔がそのままの形に凝固したような笑顔に、彼らは一瞬、息をのんでしまう。
でも、それはすぐに慣れてくれるから、私は気にしていないんだ。だって、笑顔は人を元気にする魔法のようなものだから。
この学校の雰囲気は重苦しく、何となく息苦しさを感じさせる。校舎の壁は灰色で、生徒たちの視線も同じく灰色だ。先生たちは口角が下がったままで、生徒たちは言葉を交わさずに、ひたすら下を向いている。
笑い声はほとんど聞こえない。だけど、だからこそ私は、ここで何かを変えられるかもしれないと思った。
「笑おうじゃないか」それが私の口癖で、私の信念だ。
初日、私は堂々と自己紹介をした。「こんにちは!私はユリンです。新しくここに転校してきました。これからよろしくお願いします!」
私の声は教室全体に響き渡り、一瞬、皆の目が私に注がれた。その瞬間、教室は静まり返り、私の顔を見つめる目が次々と集まってきた。
初めて話しかけてきたのは、教室の一番後ろから声を上げた女子だった。
「なんでずっと笑ってるの?」
「それは生まれつきこの笑顔なんだ。だから、いつもどんなときでも笑顔でいられるんだ!」
彼女は小さく笑いながら言った。
「そうなんだ。でも、それはすごいことだね」
私は一人一人の生徒を見つめながら、力強く言った。
「ありがとう。だから、皆も一緒に笑おうじゃないか!」
私の提案に、初めは誰もが、ただ茫然と私を見つめるだけだった。でも、それはすぐにいくつかの生徒の口元がゆっくりと上がり始める光景に変わった。
彼らの表情はまるで春の花が咲くように、少しずつ明るさを増していった。そしてその中に、見覚えのある少女の顔があった。
彼女は私の話を聞いて、ぽつりと笑みを浮かべていた。それを見て、私はうれしさで胸がいっぱいになった。
私の笑顔が皆を元気にする。それが私がこの学校に来て一番に望んでいたことだ。だから、これからも私は笑顔を絶やすことなく、元気な気持ちをみんなに伝えていく。どんなに難しい状況でも、どんなに暗い気持ちでも、一緒に笑って前に進もうという気持ちを。
「笑おうじゃないか」それが私の信念であり、生きる道だ。
ここでの生活はまだ始まったばかり。全てが新しく、全てが未知の領域。でも、私はこの陰鬱とした雰囲気を一つ一つ変えていこうと決心している。
その理由はシンプル、私の顔はいつでも笑顔だから。この固定された表情が、人の心を動かし、暗い雲を晴れに変えると信じている。
だから、これからの日々を想像すると、ワクワクして止まらない。この学校の廊下や教室に満面の笑顔が溢れ、皆が楽しく学校生活を送る日々を。皆と一緒に過ごす時間、その一瞬一瞬を楽しみにしている。
だから、「笑おうじゃないか」この言葉を胸に、私は新たな一日を迎える。
笑顔が心を軽くし、前向きな気持ちを呼び覚ます。
それが私の存在意義だと信じているから。
時間を割いてくれて、ありがとうございました。
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