詩 〈泳人 壱〉
アフリカから
Asiaへの十万里
黎明の沖を
泳ぐひと
抜手を切って
マゼランの
喜望峰を
回りこむ
彼女の滑らかな
水をはじく
背中から
昇る朝陽
広大なブルーグレーの
塩辛い水を
湛える陸の窪みから
聳え立つ
巨岩に滴る
緑と緑とさ緑の
樹木たちの
数えきれない
祝祭の日々
蠕動と褶曲の
地の皺
斜面に
穿たれた
参道を歩む
ああ
数万の白い脚絆が
目に染みる
五山の教えを
繰り返し
地を這うような
baritone が
口誦する
やがて
対岸の
深い闇夜に
赤々と
浮かび上がる
大文字
いや
むしろ
アフリカから
Asiaへの
十万年の
歴代を
抜手を切って
泳ぐ母の
その背中を
追って
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