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STAY TUNED!! 99.9MHz presents "BEST TRACKS OF 2020"

コロナ禍の中、自宅で音楽を楽しむ人たちに寄り添う企画として始動したSTAY TUNED!! 99.9MHzですが、音楽を愛するたくさんの人たちにサポートしていただき、個性際立つプレイリストがいくつも生まれました。親しみのある音楽に聴き浸ったり、新しいジャンルとの出会いにより革命が起きたり、もちろんただなんとなく音に身を寄せてみたり。さまざまな楽しみ方を見つけていただくきっかけに、少しでもなれたのではないかなと思います。

そして2020年も残すところあと1日。多くの人たちがベストアルバムを選出する中、STAY TUNED!! 99.9MHzでは、曲単体に焦点を当ててプレイリストを作りました。第一回目の企画「Funs!」にも参加していただいた3名と私を加えた計4名が、今年印象強いと感じたトラックを3曲ずつ選出。各曲にレビューを添えてご紹介します。大掃除をしながら、今年一年を振り返りながら、ほっと一息つきながら…ぜひお楽しみください。


SELECT BY TAKUMI SHIDA(EDITOR & WRITER)

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1. ヒマワリ/The Birthday
チバユウスケはいつだって腐った/狂った世界について歌うが、なぜその歌はいつも美しいのだろうか。それは黒く染まった世界で、ほんのわずかに、でも確かに輝く小さな光に希望を見出しているからであり、その信念こそがロックンロールのロマンに直結している。ニューシングル『ヒマワリ / オルゴール』の2つの表題曲は、どちらも“失われた希望”のモチーフであるが、ノスタルジーに浸るのではなく、ここからもう一度動き出していくために奏でられた“未来への歌”なのだ。どちらも新たな名曲だが、特にチバの詩人としての才が凝縮された「ヒマワリ」は、ロックバンドにしか奏でられない虚無と高揚を同時に鳴らしていて素晴らしい。


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2. Catch a Fade/Nothing
フィラデルフィア出身、Nothingの最新作『The Great Dismal』は、2020年とりわけ感動したロックレコードの1つだ。90年代のグランジやシューゲイザー、特にマイブラへの直球のリスペクトを込めながらも、奥行きのある空間的なサウンド構築によって、ダイナミックかつ目新しいロックを作り上げた。ノイズだけに頼らない絶妙な音圧のコントロールに舌鼓を打つ。なかでも陰鬱で耽美なメロディから、爆発力あるヒロイックなギターソロへ展開していく「Catch a Fade」は屈指の名曲。どこまで行っても低空飛行で、心の深淵を覗き込んでしまう沈んだ人間の性。今日も世界の片隅のどこかで鳴っている、小さな轟音の悲鳴だ。


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3. 北へ向かう/寺尾紗穂
空、海、森、山など、自然や生命の神秘を通して、人間の個人的な感情を描く歌が好きだ。なぜなら、自分が自然から生まれた命であることを実感して、安心できるから。寺尾紗穂は、そうやって景色の中に情感を描き出すという意味での「情景描写」に秀でており、“父の死”という個人的な出来事から、普遍的な生命の愛おしさまでを歌った「北へ向かう」はまさに真骨頂。ウェットで重い楽曲になりそうなところ、あえてドライな歌とアレンジで控えめに仕上げているが、それが感情を押し殺しながら歌っているようにも聴こえて胸が強く締め付けられる。激動の時代に、拠り所にしたい美しさ。自分にとっては2020年で最も包容力のある1曲だった。


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SELECT BY YU ISHIDAKAIMY PLANTS Ba.)

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1. Gospel for a new century/Yves Tumor
新時代の幕開けを高らかに宣言するホーンセクション、艶かしいグルーヴ、グラムロック的なカタルシスが炸裂する名曲。ともすれば難解な印象もあったYvesの変化は2020年最も衝撃的だった。特にイントロのセンスは抜群。


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2. Salt Licorice(with Robyn)/Jónsi
エレクトロノイズクラッシュポップとでも言うべきか。Jónsiのあくなき探究心たどり着いたポップソングのニューフォーム。実験的なノイズをPOPに纏める手腕もさすがだが、何より歌声が素晴らしい。


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3. Sorry/beabadoobee
2020年にオルタナガールとして大きく飛躍した彼女のドラマチックでエモーショナルなロックバラード。今、この年代の女子がグランジに傾倒していることが何より鮮烈だった。


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SELECT BY ARI MATSUOKA(JOURNALIST &  "MOLS MAGAZINE"EDITOR)

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1. in/Hoshiko Yamane, Makoto Sakamoto
ドイツ・ベルリンで活動するヴァイオリニスト/Hoshiko Yamane(山根星子)と、サウンドアーティスト/Makoto Sakamoto(坂本真)によるリリース第二弾。マテリアルの違うサウンド同士が重なり合い、独創的なアトモスフィアを生み出す今作は、聴く人の意識をさらなる深層へと連れ込んでいく。幽玄なヴァイオリンの音色とバイノーラルに纏うシンセサイザーのサウンドスケープ。ベルリンで現在も厳重な自粛要請が発令する中、自分の内面へ入り込み深く集中して創作する時などに聴いています。本能で分かる、私のユートピア。


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2. For Whom the Bell Tolls/William Basinski
現在LAを拠点として活動する音楽家/William Basinskiの2020年を代表するエクスペリメンタルアルバムを。彼の代表名詞でもあるテープ・ループを用いて構成された本作は、明滅する自然界のなかから映し出された死と喪失の世界が実に生々しく表現されている。幾重に連なる地層のように、ループは過去と今を往来する。ズンと徹底的に精神を落とした状態で文筆するときなど。まさに6時間、7時間とこの曲を永遠に繰り返し聴くこともあります。


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3. La procesión/Ale Hop
ベルリン在住のアーティスト/アレ・ホップの新譜『The Life of Insects』より選曲。エレキギターとシンセサイザーを複雑にブレンドした彼女のノイズ音楽に初めて出会ったのは2019年。音楽は次の時代を映し出す最も早いメディアだと言うだけあって、世界は今やノイズ/アンビエントに注目が集まっています。アルバム一曲目となる本作は、生と死の境界空間を描いた儀式的なMVが印象的で美しい。表現者としての彼女の魅力に強く惹かれていく。もし、私がこのアルバムにサブタイトルを付けるなら"優しき前衛"と題したいです。

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SELECT BY PIKUMIN(WRITER&"STAY TUNED!! 99.9MHz"EDITOR

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1. Nonbinary/Arca
Arcaというアーティストを聴くにあたり、可能な限り情報を仕入れないことに決めていた。出生や性別はおろか、人間であるかどうかでさえ関係がないと思った。インダストリアル、エクスペリメンタル、ヒップホップ、ダブステップ、現代音楽といった多要素が文字通り“入り混じる”のだが、静寂と喧騒の差に平衡感覚が狂いそうになると同時に、底知れない美を感じる。中でも1曲目の「Nonbinary」は、あまりにも刺激的かつ奇怪。胸の内で性の獣が目覚めるように、突如騒ぎ立つヘヴィーなビートと妖艶なエレクトロ・サウンドに血液が沸騰しそうになる。共演者によって次々と音楽の形が変貌してゆくため、“予想できない”という最高の楽しみ方があるのも魅力。

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2. Hurry Home(with beabadoobee & Jay Some)/No Rome
The 1975の爆発的人気も含め、近年英レーベル・Dirt Hitsがかなりアツい。各人がヒット作を生み出す中、私が注目したのはNo Romeのコラボレーションシリーズである。第2弾となる「Hurry Home」では、レーベルメイトであり、今年デビュー作をリリースして一躍話題となったbeabadoobeeと、昨年ブレイクを果たしたJay Somをセレクト。甘いベッドルームポップを、リズミカルなビートで華やかに飾る。三者三葉の息を吐くような歌声と男女掛け合いの歌詞も良い上、歌声を追うように連なるシンセフレーズがその切なさを際立たせる。女子2名の特性を活かした素晴らしい1曲で、中毒性高め。ついついリピートボタンを押して浸りたくなります。

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3. Into the Trees/Ellis
Soccer MommyやPheobe Bridgersなど女子SSWが飛躍する1年でしたが、2020年最も衝撃を受けたのはEllisのデビューアルバム。柔らかく清らかな歌声にドリーミーなサウンドで、Bon Iverを彷彿とさせるメランコリックな世界観を持ちつつも、必ずエモーショナルなノイズギターを投入してくるところが彼女の魅力。「Into the Trees」は、作品内でもダントツのシューゲイズナンバーで、ずっしりとしたバンド・アンサンブルと甘さのあるチョーキングギターに惚れ込みました。ちなみにこの作品のテーマは“土星回帰”とのこと。「予てからシューゲイザーと言われるけど自覚がない」と言うところも含めて、彼女は大物になりそう。これからの活躍に期待大です。

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