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小話〜派遣先のコールセンターにいた上司〜

保険会社のコールセンターで、私が派遣社員をしていた頃の小話。

おそらく30代半ばくらいの男性上司で、いちいちオーバーなリアクションをとる人がいた。

執務室の内線をとるにも、わざわざ息を切らしながら急ぎめで電話までかけつける。

パソコンで書類を作成中、作成していたデータを誤って消してしまったら「うわぁー!?」と断末魔のように大声を出しながら天を仰ぎ、うわの空の顔になっていたこともあった。

ある日の平日。
お客様からの苦情の電話をとった派遣社員をサポートする時、上司は横でフォローするばかりでなく土下座までしていた。
だが、残念ながらテレビ電話のわけでもないし、お客様にはその土下座の姿は見えていない。


こうも無意味な土下座というのがあったものか。


この人の土下座はだいたい週に3回ぐらい見られ、この人の土下座の価値が日に日に低くなっていってるなあと内心感じていた。
仮に、この人が私に対して何らかの失礼な行動を取り、この人から謝罪として土下座をされても私にはおそらく何ら納得できないだろうし、価値のない土下座よりも金銭を要求することになるかもしれない。


いちいち私の予想を超える妙ちきりんな言動をするので、いい観察対象ができたと退屈な仕事に少し面白いことを見いだせて若干うれしく思っていたけれど、この上司は私たちのアタマを預かる人だったことを忘れていた。
いちおう雇い主だった。この雇い主に嫌われたら私たちの大きな収入源が失われる。

ここ最近は契約更新が決まる人と決まらない人が明らかになってくる時期だからか、全体的に派遣社員の中にもピリピリした空気がある。

こんな一喜一憂してばかりの上司の一言や態度次第で、私たちの進退が決まってしまうなんて何とも馬鹿らしい、と生意気ながら常にそう感じていた。

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