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人生とは「時間の波」に流されるということ

子供のころに思い描いていた”大人像”よりも、幼い部分を残した”外側だけの大人”になった。

1年、半年、1ヶ月、1週間、1日があっという間に過ぎる。そうしているうちに、もう30過ぎになった。

推薦入試ができる、いわゆるFラン大学に入学。周りが進学するから、という理由で。とくに勉強に励むことなく学生生活をすごし、楽な事務仕事ならいいだろうと、大学卒業後は大手の事務作業を請けおう派遣社員になった。

実際には楽な事務仕事とはかけはなれていて、頭を悩ませる人間関係を横目に静かに仕事をする毎日だった。

特に女性同士のトラブルには首を突っ込みたくない。当事者にもなりたくない。会社ではなるべく目立たないように過ごす。昼食は静かにひとりでデスクで食べ、静かにひとりで会社を後にする。目や肩に、重たい疲労を残したまま。

翌朝になれば、すでに観たDVDをもう一度再生するように、同じことのくり返しの日々がはじまる。

思い描いていた大人像は、やる気に満ち溢れ、自立をして、凛としたカッコいい姿であったのに。

あるのは、若いころに比べていくらか頬が弛み、頬骨の上にはかろうじてファンデーションで隠れるシミ。消えないシワが所々にある、年増の女。

と、特に予定のない休日な午後、ワンルームのリビングでぼうっと思った。

右手にある窓から、オレンジ色の日差しが温かく差しこんでいた。すぐ隣にあるこじんまりした公園からは、はしゃぐ子供の声と、子供を心配する母親の声が聞こえた。

多分これからも、嵐のように過ぎ去っていく時の流れに驚いているうちに、歳をとり、老婆になり、終末を迎えるのだろう。その間私はあの母親のように、自らの子供に声をかけられる日がくるのだろうか。

人間の一生とは短く、早い。

自分の意思とは関係なく、人生という「時間の波」に乗せられ、また意思とは無関係に、されるがまに、いつ訪れるか分からない波の終わりまで押し流されていく。


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