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【ラーゲリより愛を込めて】ふと何かを思い出したとき、人は誰かに伝えたくなるもの

主婦に共通する”あるある”
営業マンに共通する”あるある”
親に共通する”あるある”

世の中には、カテゴリーの中で共通する”あるある”な出来事や、”あるある”な経験がありますよね。

しかし!カテゴリーを超え、全人類に共通する”あるある”な出来事・経験があるのです。

それが、年上からの説教

なぜ、大人になると説教したがるのか

「若いうちにいろいろ学んだほうがいいよ~」
「女性は30までに結婚しとかないと、○○になっちゃうよ~」

など、あたかも「あなたが悩んでいるから相談に乗ってあげるよ」スタンスでアドバイスでもなんでもない個人的な”思考”をぶつけてくる大人

うぅ~厄介!空気清浄機でこれらの厄介な大人を吸い取れないものか…

なぜ、大人になると説教したがるのか。教えたがるのか。”

29歳になる私も大人といえば大人だが、実は私も後輩に教えと言う名の説教をした経験がないわけでもない。

では、なぜ説教をしたのかと問われれば…

・同じ失敗をしてほしくないという”期待”
・教養のある大人になってほしいという”希望”
・分からないことはまた自分に聞いてほしいという”願望”

いや。少しきれいな言葉を並べすぎでしょうか。

「先輩面したい」「経験豊富な人だと思われたい」といった欲望を、期待・希望・願望という名のベールで隠しているだけかもしれません。
あくまでも”あなたのため”だと…

「ラーゲリより愛を込めて」を観て

そんなことをふと考えていた私ですが、先日観た「ラーゲリより愛を込めて」の中に、
”なぜ、大人になると説教したがるのか。教えたがるのか。”
についての答えがありました

※ネタバレあり。

ラーゲリより愛を込めて

太平洋戦争のさなか、ロシア語が堪能で満鉄調査部に勤める山本幡男は、妻と4人の幼い子供たちと共にハルピン(旧満州)で暮らしていました

ハルピンで結婚する若者も多く、ある結婚式に参加した山本家6人は、現地の食事を楽しんでいました。

誠実で性格の明るい山本幡男は、子供たちに向け、家族みんなで楽しく食事ができる今日という日の素晴らしさを伝えます

そんな楽しい日常は一変し、第二次世界大戦が激化する中、現地招集で兵士となった山本幡男は、終戦により終戦によりソ連軍の捕虜とされます。

妻子はなんとか日本に戻れましたが、山本幡男はハバロフスクの収容所(ラーゲリ)に送られることに。

ここからは、主にラーゲリでの生活や、山本幡男の帰りを待つ妻の生活が交互に描かれていきます。

過酷な環境での強制労働…
1日1回の食事…
娯楽も許されないロシア兵による監視…

中でも衝撃だったのが、日本人が日本人を罰するシーンです。

劣悪な環境で、安定とは言い難い精神状態。日本に早く帰るために、ロシア兵から殺されないために、一部の日本人はロシアという国のすべてを正当化し、それに反対するものを蹴る殴るなどして見せしめに懲らしたのです。

自分を守るためであれば仲間だって売り飛ばす。

「自分が犠牲になってでも仲間を守るなんてことは、簡単には出来やしない」と自分の愚かさとともに戦争がもたらす負の連鎖を、この映画を通して思い知りました

「ラーゲリより愛を込めて」は実話をもとに作られた作品で、山本幡男は癌を患い収容所内で亡くなります。

説教は思い出に起因する

ただ、映画としてはここで終わりません。

時は流れ2022年。孫娘の結婚式に参列した山本幡男の長男である顕一が、家族の代表として祝辞を述べるシーンがあります。

顕一はふと、家族全員で過ごしたハルピンでの楽しい結婚式を思い出します
きっと、顕一にとっては一番記憶に残っている楽しい思い出だったのでしょう。

惜しくも生き別れてしまった父を思うと、どれだけ家族が一緒にいられることが幸せなことか…

そんな思いから、ハルビンで山本幡男が子どもたちに向けて発した「今日という日を、よーく覚えておくんだよ」という言葉を、顕一は孫娘に送ります。

「今日という日を、よーく覚えておくんだよ」

これも、一種の説教かもしれません。

しかし、顕一は

家族で過ごした楽しい結婚式…
その後会えなくなった父のこと
父がどれだけ過酷な環境で過ごしていたのか耳にした日のこと…

これらを思い出したからこそ、孫娘に伝えたいと思ったわけです。

ただの期待でもなく
ただの希望でもなく
ただの欲望でもなく

伝えたい言葉の背景には、”思い出”があったのです。

つまり、大人が子供や部下、後輩に説教をするのは、”何かを思い出し、その思い出から得た学びを惜しみなく伝えたいと思った”からではないでしょうか。

顕一のように、家族と過ごした楽しい思い出かもしれませんし、父と離れ離れになった辛い思い出かもしれません。

それでも、大人の説教が懐かしい出来事を思い出したことに起因するのであれば、私たちはその思い出に少しは寄り添うべきかもしれませんね。

自分だけの大切な思い出は誰にも奪われたくありませんし、貶されたくもないはずです。

その思い出に、子供が…部下が…後輩が…そっと寄り添うことで、大人も救われるのではないでしょうか

互いに寄り添うことが大切

しかし、大人はそんな思い出を口にはしません。

特に男性は、「弱音を吐くのは男らしくない!」と言われる節もありますし…
女性は女性で「あなただけじゃない!みんな苦労してるんだよ!」と慰めてもくれませんし…

こういった世間からの圧力が原因で言えないこともあるでしょう。

ただ、少しでもその思い出を添えて説教してくれれば、互いの信頼関係も少しは深まるのではないでしょうか。

そもそも子供や部下は、大人の話に対し「また始まったぞ!」と身構えちゃいますから、大人側の努力も必要です。

具体的な思い出が抜けちゃっていますから、”普遍的なよくある言葉”としか捉えようがないのです。

厄介だな~




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