ポンコツな話。
デザイナーのつぼたです。
私はSNSではプロカメラマンに撮影してもらった宣材写真を使用して、デザインの分析やアウトプットに関することをアップしているため、初対面の方からは「とてもしっかりしている」や「ちょっと怖い」というツヨツヨデザイナーという印象を持たれることが多いです……が、お会いしたことのある方なら分かるはず。これは間違いです。
今回はその話を超赤裸々にお話ししたいと思います。この話を公開するか迷いましたが、つぼたはこんな人なんだという理解や、同じ様なことで悩んでいる人のお役に立てれば幸いです。
01、ミスと日常での苦労
私は昔から忘れっぽかったり、間違いや勘違いが多かったりしていました。今思えば子供の頃から興味のあることは時間を忘れて熱中、興味のないことは全然覚えていない、という片寄りもあったように思います。興味がないと極端に成績が悪く、興味を持った途端に一気に伸びるといった子どもでした。スポーツも面白いと感じてから最も成績の良い授業になりました。
大学生になってからは忘れ物があったものの、左前ポケットには鍵、右前ポケットには携帯、右後ろのポケットには定期と自然と決まっていき、自転車で駅に向かいながらポケットをぽんぽん叩いて「よし忘れてない」という行動をとっていました。当時は忘れっぽいな程度の認識で、そんなに苦労はありませんでした。(ですが、バイトに関しても授業に関しても物覚えはあまり良い方ではありませんでした)。
これが社会人になって一人暮らしを初めてから顕著になります。スケジュールを1時間まちがえる、1日まちがえる、1週間まちがえる。こんなことが起こるようになりました。外出する際に3〜4回部屋に忘れ物を取りに戻ることは日常茶飯事。夕食時にオーブンで調理した魚を忘れて3日間くらい放置してしまい、異臭を放ち出したことで気づいたこともありました。
仕事でも必要事項が抜け落ちていて怒られることも定期的にあり、会社でミーティング時間に会議室から電話がかかってきて、急いで行って「1時間勘違いしていました」と話すと「そんなことあるわけないだろ」と怒られたことも記憶に残っています。
今思うと、学生時代までは親が色々とやってくれていたのに対し、社会人になって一人暮らしを初めてからは仕事と生活とプライベートのすべてを一人でこなさなければいけなくて、複数の行動を切り替える必要が出てきたことが要因だと思います。私の場合は先輩の下から離れて一人で業務を請け負うようになってから明らかに問題が増えました。毎日のようにメールで「申し訳ございません」という一言を付け加える必要がある日々でした。
「なんでこんなこともできないんだろう」
そう思って落ち込むことも多い中、友人と仕事を一緒にすることになり、張り切っていました。デザインに対して熱い私を信頼してくれていた友人でしたが、最終的に「こんな人とは思わなかった」と言われ、私もメンタルをやられて手を引くことに。週2で遊んでいたその友人とその後は一切連絡も取らなくなってしまいました。しばらく塞ぎ込んだのを覚えています。その少し後に別の友人からもミスが多いことに対して「努力が足りないんじゃない?」と言われ、頑張っているはずなのにまだ足りないのかと更に落ち込みました。
そこから解決方法がないのかと調べたりしました。そして似たような人たちがいることを知ります。その人たちは「注意欠如・多動性障害」、通称「ADHD」と呼ばれる発達障害でした。ADHDを調べれば調べるほど自分に当てはまりました。
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02、診断
ADHDの検査をしてもらおうと、家から通える精神科やメンタルクリニックを探してみます。でも精神科の評価というのは★5と★1が一番多いみたいに極端なところが多くて選びにくい……迷っているうちに半年くらいが経過。その間に仕事で色々あってメンタルをやられてしまい、思い切って家から行きやすい綺麗めなクリニックに行ってみました。そのついでにADHDの検査も受けよう。そして合わなかったら変えよう!
そのクリニックJに行くと開業1〜2年のとても綺麗なクリニックでした。担当の強面M先生(めちゃ優しい)と話すと「適応障害ですね」と。ADHDに関して聞いてみると「ADHDの診断というのはすぐにできるものではないから、専門家との面談・診断が必要になる」ということで、後日専門家のいる日に再び通院して面談をしてもらいました。日常でのことから幼少期のことまで根掘り葉掘り色々と聞かれました。
面談して1週間後に再び病院へ行くと強面M先生から「ADHDの可能性が非常に高い」という診断が出ました。聞いた時は落ち込むかなと思っていましたが「やっぱりかー」というほっとした気持ちが強かったです。ADHDの診断を受ける人は「努力が足りない」と言われ続けて「こんなに頑張ってるのに」と自分を責めていることが多いので、「努力が足りなかったわけじゃなかったんだ」ということに安心する方が大半だそうです。
病院では細かな説明はありませんでしたが、ADHDには大きく「不注意」と「多動性」と「衝動性」があるようで、私は(自己分析では)多動性 < 衝動性 < 不注意の順番に大きくなっていて、「不注意有意のADHD」な気がしています。そんな私の特徴はこんな感じです。
・ミスが多い
・約束や期限を忘れてしまう
・スケジュール管理が苦手
・ミスによる長年の叱責により自己評価が低い
・マルチタスクが苦手
・優先順位をつけるのが苦手
・お金の管理が苦手
・紛失物&忘れ物が多い
・ルーチンワークは飽きてしまって続かない
・過集中(好きなことは寝るのも忘れて作業)
・苦手なことはできない
これらを、つぼたメソッド(note「自分の好きの基準を見つける方法」参照)を使って苦手なこと、とその要因、最終的にどんなデメリットが出てしまっているかを、ザックリまとめてみました。
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03、IQテスト(WAIS-IV)
ADHDだと診断されたらやってみたいことがありました。それがIQテストです。ミスが多く、忘れっぽい反面、デザインや長期記憶的な知識に関しては褒めてもらえることが多かったので自分のIQが気になったのです。他にもIQテストによって得意不得意を知れて、ADHDの人が生活しやすくなるということもどこかに書いてあったので、そういった意味合いもありました。(受ける前に「受けて落ち込んだというブログ」を見て怖かったですが)。
IQテストに関してはnote「自己分析やれるだけやってみた」にも書いていますが、このような結果でした。
注目して欲しいのは知覚推理と処理速度の差です。知覚推理が135ある反面、処理速度はそこから30も下です。そして説明の文にこうありました。
この差異が30以上ある場合にADHDである可能性があるという説明がありました。これに関してはドンピシャすぎてちょっと笑いました。ちなみにワーキングメモリーが低いのはADHDの特徴だそうです。一時的にストックできるメモリが少ないから忘れ物が多いんですね。「集中してじっくり考える事が苦手」という結果も「多動性」が出ているのかもしれません。
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04、投薬
ADHDは薬である程度抑えることができます。化学技術の進歩ってすごいですね。ですがADHDの能力の偏りは強みとして出ていることがあり、ネットで「薬を飲むとその強みが消える」という説も見かけます。しかし強面M先生に聞いてみると「それはない」ということでした。
ミスによって他人から責められ、自分で自分を責め続けてきたことで自己肯定感が低いのも特徴で、その為ADHDの人は鬱などを併発しやすく「大切なのは薬を飲んでミスを減らして自己肯定感を上げること」だそうです。また飲むのをやめると元の状態に戻るということだったので、ダメだったらやめれば良いやと思って飲んでみることにしました。
薬1種類目
最初に飲んだ薬は、最近できた薬で非常に高額なもの。1日1錠でひと月毎に1錠ずつ増やしていき、最終的に1日6錠(強いものに切り替えると最終的に1日3錠)になる予定だったのですが、2錠に増やした段階で貧血が起き始め、3錠に増やした段階で貧血が悪化。頭痛も起き始めて断念しました。
(ちなみに私の母は薬剤師ではないのですが長年薬局で勤めており、薬の知識も豊富なので色々相談していました。母曰く「病院の先生は製薬会社との繋がりもあるから、最初は新しい薬を出すことが多い」とのことでした。本当かは知らんけど。)
薬2種類目
次に飲んだ薬は1日1錠から始めて、ひと月ごとに1錠増やしていき、マックス3錠まで増やす薬です。特に副反応もなく現在3錠です。飲み始めてから忘れ物やミスが減ったような減ってないような分からない感じですが、明らかに朝がスッキリ起きれる。飲み忘れた次の日の朝がツライくらいに気持ち良い朝です。ADHDの人は睡眠障害が起きやすいって聞くけど、普通の人ってこんな気持ちの良い朝過ごしてるの……?と衝撃でした(ちなみに私は少し変化があったりするとすぐ眠れなくなります)。
強面M先生は「朝起きやすくなるみたいな効果は聞いたことないけど、さまざまな要因が解決したことで眠りやすくなって解決してるのかも」と言っていました。今のところそれほど変わっているようには感じませんが少しずつでもマシになると良いなと思っています。
追記(2024.10.07)
明らかに忘れ物が減っています。部屋に戻る回数は2回以下、戻らないことも増えたように感じています。
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05、日常での工夫
ADHDは風邪のように完治するものではなく、薬を飲んでいても完全に抑えることはできません。なので、薬を飲んでいても日常での工夫が大事だそうです。そこで問題点と私がしている工夫を紹介していきます。同じように困っている人の参考になれば嬉しいです。
予定忘れ
以前はスケジュール帳に書き込んでいましたが、現在はGoogleカレンダーに集約し、予定が入った瞬間にGoogleカレンダーに書き込みます。予定の30分前に通知が来るようにしています。業務委託している会社のスケジュールも同期しています。それでも他のことを優先していて忘れてしまうことがありますが、以前よりも予定を忘れたり間違えたりすることが減りました。
忘れ物
先述したように、外出する際に3〜4回部屋に忘れ物を取りに戻ることは日常茶飯事でした。忘れ物を取りに部屋に戻る → 別のものを忘れる → 取りに部屋に戻る → 鍵を部屋に忘れるみたいな感じです。むしろ「忘れ物がない日はない」と思っています。なので忘れ物のない日はずっと「気づいていない忘れ物があるはず。今日は何を忘れているんだろう」という気持ちのまま過ごしています。この忘れ物に関しては複数の解決法をとっています。
解決法1:まず持ち出すものをできる限り一箇所に固めました。そこにあるものをガサっと持てば忘れ物がないです(それでも忘れることがある)。
解決法2:複数用意できるものは複数用意してすべてのバッグに入れておくことで忘れなくします。私はエコバッグをすべてのバッグに入れています。次は折り畳み傘をすべてのバッグに入れようと計画しています。
解決法3:忘れた時に対処&家まで帰れるようにそれぞれの持ち物に予備を用意しています。
・名刺ケース → 名刺、交通系ICカード。予備の現金5,000円。
・財布 → 現金、クレジット。予備の交通系ICカード。
・スマホ → アプリなどでタッチ決済クレジット、交通系IC、PayPay、メルペイを使えるように。
なくしもの
忘れ物と同じく紛失物も非常に多いです。ルンバ購入後に晩御飯を食べに行って、ご飯屋さんにルンバを忘れてお店を出た後に店員さんが「ルンバ忘れてますよ!」と追いかけてきたこともあります。
家での解決法1:基本的に部屋の中で紛失物が多い理由は、無意識でモノを置いてしまうからです。なので、物の定位置を決めるようにしました。これはnote「デザイナーの片付け」で話しています。
家での解決法2:なくしても見つかるように、モノを減らして片付けをすることですぐに見つかるようにしています。今までに部屋の中でなくして出てきていない衝撃のものは、Yシャツとメジャーです。
外での解決法:持ち物が増えるほど無くす確率が上がるので、できるだけ鞄に入れたり、ひと塊にしています。また身に付けるものは置かないようにしています。貴重なものには「エアタグ」を付けています。
気が散る
散らかっているとそれが気になってしまうので、できるだけ片付けるようにしています。それでもスイッチを入れないと片付けが進まないので苦労しますが。部屋は集中できるように色数を減らして、ノイズを減らす工夫をしています。
記憶方法
興味があること以外は覚えられないので、記憶できるようにさまざまなことに興味を持つように意識しています。デザインの視点で物事を見るとめちゃ面白いです。そういった意味では何にでも関係のあるデザイナーという職業は良かったかもしれません。
仕事関係・ToDo
これに関しては現在色々と試しているところですが、まだうまくいっていません。今は「オーダークリップ」というものを導入して試し中です。
ミスる時はミスるので、どれだけ工夫してもしすぎることはないと思っています。職業病というのもありますが、常に「どんな工夫ができるかな」と思いながら生活しています。最近は3Dプリンターを活用して生活を改善しようとしています。
マシになっていることも多いですが、連絡を忘れたり、返信が遅れたり、一気に情報が来ると拒絶したくなるのは変わっていません。自分にとってツラい内容や手間のかかる内容のメールや封筒が開けられないのもそのまま。
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06、思うこと
診断を受けて、ADHDの人はどんな特徴があるのか、どんな工夫をしているのかを調べていると、昔から苦労していたことなどがことごとく当てはまり、今までの人生の答え合わせをしているような納得感を感じました。
また、note「自己分析やれるだけやってみた」で、ストレングスファインダー、ウェルス・ダイナミクス、16 Personalitiesなどをやってきましたが、診断を受けて自分を見つめ直し、思ったことがあります。それは「才能診断」ツールというものは発達障害の個性を含めているのではないかということです。例えば「失敗を前提として行動する」というものがあります。「動いてみないと分からないよね」という考え方もありますが、私の場合は「結局ミスは無くならないし、出してから考えよう&指摘してもらって修正しよう」という、仕方なくやっています。つまり「この特性を持っている人はADHDの可能性が高い」という何かしらの偏りがあると思っています。
当たり前のことですが、発達障害であることを知らずに生活している人はたくさんいますし、発達障害でありながら大成功している人も多くいます。体感的なものですが……クリエイターに絞ると、発達障害の割合が増える気がします。
わかりやすい動画を見つけたので、ここに載せておきます。
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さいごに(&お願い)
私自身に悪気はなかったとしても、もっと早く気がついて対応したり薬飲んだりしていたら、今もあの人やあの人と連絡をとったり遊んだり、あの人とスムーズに結婚していたのかなーと思うこともあります。薬を飲んでも完全に治るわけではなく、いまだにミスで迷惑をかけていることも多いかと思います。また強いストレスを感じると一気に思考が遅くなりますし、メンタルはやられやすく、ネガティブな感情を向けられるとそのネガティブに同調されて私も同じネガティブな感情になりやすいです。
自分のデザイン自体の評価はドーベルマンくらいの強さはありますが、まだ自己評価はミジンコレベルです。友人と一緒に仕事をするという夢はあるので、一緒にしてくれる気の長い友人を募集してます。その時はミスの減る工夫を一緒に考えてくれると嬉しいです。
情報量が多いものを使い分けたり・切り替えたり・対応したりができないので、情報量が増えすぎると対応しきれずに「参加してないのにお金勿体ないな」と、有料コミュニティからスンッ……と抜けたりもします。「あの人の連絡先聞く前に出ちゃった」とかもあります。なので気軽に声をかけてください。(よくお話ししていた、うっしーファンのG県Kさん……DMかメールで連絡ください)。
また、私は口で話しながら考えることも多いです。これは器用という訳ではなく「考えていることを自覚した途端に頭が真っ白になるから」です。そのため、メールやLINEでは上手く言葉が出てこないこともあります。更には衝動性のせいなのか、言葉を精査する前に送ってしまい失礼な言葉になってしまうことがあります。ですが、失礼なことや嫌味を言ってやろう!という意図はありません。変な言葉の内容が来たら「頭が働いてなくて言葉遣い間違えてるな」とか「確認せずに送った内容だな」と思ってくださると幸いです。
ADHDに関して友人に伝えたいけど、友人に伝えて距離が離れたらどうしようと悩む人は多いと思います(LGBTQの人も同じように……いやもっと悩んでるはず)。でも何人かに伝えてみても、私の場合は伝えたことを忘れてしまうほどに今まで通りに接してくれる友人ばかりです。「変わらず接してくれる人だから仲良くなれたんだな」と思います。
人によって苦労する点は異なりますし、皆が日常生活に支障をきたしているわけではありません。ですが、もし友人などから「実はADHDで」と打ち明けられた時に「そのくらい普通だよ」や「みんなそんなもんだよ」と言ってしまうと「分かってもらえないのか」と思って塞ぎ込んでしまうかもしれません。「そうなんだ」「大変だね」と受け止めてあげて、今まで通り接してあげてください。一緒に工夫できたら一番良いですが、負担には感じてほしくないので、そのまま接してくれるだけで充分嬉しいです。
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SPOT DESIGN 坪田将知
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