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ショートストーリー

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#孤独

孤独リフレクション

大学二年生の頃、僕は実家暮らしにも関わらず、大学帰りに頻繁に外食した。単に家に帰りたくない年頃だったといえばそうなのかもしれない。ただ、一つだけ言えることは、家族が当たり前のように安全地帯として機能している家は、恵まれているということだ。

僕は当時大学から一つ隣の駅にあるインドカレー屋によく一人で行った。間接照明の落ち着いた雰囲気の店だった。大抵いつもホウレン草ベースのカレーを注文し、ナンを二枚

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大人

大人

金曜日の夜。中央線の駅は酔っ払いで溢れかえる。蛍光灯の切れかかったホーム。疲れ顔で立ちすくむ社会人と騒ぐ大学生。車内に入れば、口を開けて寝る人々の間に生暖かいアルコール臭が漂っている。

乗車扉の隅にもたれかかって、僕は真っ暗な窓をじっと見つめる。乳白色に結露したガラスが、色とりどりの街灯と感情を失った僕の顔とを、そっと重ね合わせる。手の甲で優しく触れる。ひんやりとした冷たさが伝わってくる。

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