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拷問投票

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SF長編小説。二十年後の日本、凶悪犯への厳罰化を求める世論に流され、一部の犯罪者を合法的に拷問することができる拷問投票制度が存在していた。残虐なレイプ殺人事件で娘を失った高橋実は…
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2024年4月の記事一覧

◯拷問投票244【第四章 〜反対と賛成〜】

 あのロボットだけじゃない。 都内では、いたるところで人型ロボットが労働力として動いてい…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票245【第四章 〜反対と賛成〜】

 そこに、ふたつの眼球があった。  びっくりして、思わず、仰け反ってしまった。  あまりに…

山本清流
2か月前

◯拷問投票246【第四章 〜反対と賛成〜】

 見るも無残に無言を貫いているうちに、目の前の男の表情はいっそう安堵の色を強めていく。 …

山本清流
2か月前
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◯拷問投票247【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  自動運転タクシーの運転席に長瀬が座り、佐藤龍を助手席に座らせた。車内は…

山本清流
2か月前

◯拷問投票248【第四章 〜反対と賛成〜】

 裁判員たちの情報をざっと見たところ、長瀬のいる地点からいちばん近いところに住んでいるの…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票249【第四章 〜反対と賛成〜】

 ――緊張してますか?  そう問いかけようと息を吸ったとき、ちょうど同じタイミングで佐藤…

山本清流
2か月前
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◯拷問投票250【第四章 〜反対と賛成〜】

「わたしは、実は、長年、刑事法の研究をしている者です。殺人事件の被害者遺族の方などと面会をする機会もあります。彼らの多くは、犯人がその罪を死をもって償うことを望んでいます。でも、本当に復讐として犯人を殺害する遺族はいません。死刑制度がストッパーになっているのです」  詰まることもなく、すらすらと出てくる。即興で生み出された言葉の群れは自分でも新鮮だった。 「遺族たちの代わりに殺してあげる、それが死刑制度です。人類はきっと遺族たちを哀れんで、法律に基づいた死刑というものを発明し

◯拷問投票251【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  都会を走っている車はどれもインターネットに接続されており、お互いの目的…

山本清流
2か月前

◯拷問投票252【第四章 〜反対と賛成〜

 車道を横切ることはなく、彼らはそこで足を止めてしまっている。どうやら、車道の真ん中に居…

山本清流
2か月前

◯拷問投票253【第四章 〜反対と賛成〜】

 つまり……。佐藤は、考えた。時間はかからなかった。  長瀬が言おうとしていることがわか…

山本清流
2か月前

◯拷問投票254【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  その瞬間、長瀬の身体を貫いていたのは、激しい怒りだった。  ――人型ロ…

山本清流
2か月前

◯拷問投票255【第四章 〜反対と賛成〜】

      ※  急激に加速した車体は、叫びつづけていた人型ロボットの群れにぶつかり、数…

山本清流
2か月前

◯拷問投票256【第四章 〜反対と賛成〜】

 疑いのいちばんの根拠は第一段階においてハンマーで被害者の頭部に殴りかかっていることだ。…

山本清流
2か月前

◯拷問投票257【第四章 〜反対と賛成〜】

 違うんだ。よく聞いてくれ。あのとき、目の前で群れていたのは全部、人型ロボットだと思っていたんだ。嘘じゃない。瞬きだって遅かった。だったら、全員を確認したのか、だって? そんな正論を言われたら、なにも言えなくなっちゃうだろ。さすがにそれは性格が悪いよ。神に誓って言う。人間が紛れてるなんて、思ってなかった。あれはただの器物損壊罪だった。  弁解している自分の姿があまりにも異常に思えてきて、反射的に自分のことを絞め殺してみたくなった。  想像を深めているうちに、このまま黙ったまま