中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャ…

中尾佳貴 よしきんぐ

千葉県出身、島根県在住 タネを蒔く旅人、木を植える木工家、原生林ガイド、パーマカルチャーデザイナー 「自分自身とつながる」「自然とつながる」「社会とつながる」 の3つをテーマにした講座を全国で開催 現代農業 2022年から定期的に「自然農」について寄稿 漫画「ザッケン!」監修

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色にも魂がある

<色にも魂がある> そんなことを言えば、オカルト的な話かと思う人もいるかもしれないが これは古神道の考えでもあり、東洋科学の話でもあり、近年西洋科学でも常識となりつつある話なので 是非とも最後まで読んでもらいたい。あなたの色に対する価値観が一気に麗しくなるだろう。 あなたは「赤が赤であること、緑が緑であることを証明しなさい」という問いに答えられるだろうか? 多くの人の回答は西洋科学の知識に染まり、色素や光の性質など色というものを客観的に捉えて説明する。西洋科学は客観的であ

    • 音霊とコミュニケーション

      <音霊とコミュニケーション> 春から秋にかけて、里山に限らず都会でも山間部でもさまざなま生き物たちの音が飛び交う。人工音がしないところを探すのも大変になってきたが、生物音がしないところを探すのはもっと大変だ。 ヒトだけが言葉を使ってコミュニケーションをするが、他の生物たちは音を使ってコミュニケーションを取るものが多い。動物たちは鳴き声と意味を対応させることはできるけれど、鳴き声を組み合わせて新しい意味を作り出すようなことはしない。 虫の音を声として認識しない西洋でもベー

      • 日本人と鳥獣のコミュニケーション

        <日本人と鳥獣のコミュニケーション> 江戸時代の農書を読んでいると昔から鳥獣の害は多かったことが分かる。古くからあることわざにはたくさん動物が出てくる。現代人にはピンとこないかもしれないが、日本人は鳥獣をよく観察して、よく知っていたことが分かる。それだけに鳥獣の世界と人間の世界が近く、鳥獣と人間の交流にも触れた民話や説話もたくさんある。漫画の起源とも言われる「鳥獣戯画」はその日本の精神性をよく示している名作である。 もともと日本人はヒトと動物たちの境界線は曖昧だ。野生動物

        • 自然界には嘘がない。だから、嘘がつけない。

          <観察の極意と感性>自然界には嘘がない。だから、嘘がつけない。 言葉とは、人間だけが使うコミュニケーションである。 鳥の鳴き声や狼の遠吠え、クジラのソングなど 他の動物にもコミュニケーションが存在していることは紛れもない事実だ。 植物も自身が持つ香りや微生物の協力によってコミュニケーションをしている。 しかし、言葉を使っているのは人間だけだ。 その違いは他の生物のコミュニケーションは嘘がないこと、人間の言葉は嘘であることだ。 言葉はどんな細かく精巧に思える表現を編み出し

          自然農の栽培管理法には愛が必要

          <自然農の栽培管理法には愛が必要> 自然農は決して放ったらかしにする栽培方法ではない。もちろん、それでも育ち、それなりの収穫を得ることもできる。しかし、原産地とはまるで違う環境にヒトの都合で運ばれてきた彼らに対して、彼らの気持ちや都合を無視することは本当に愛していると言えるだろうか? 自然農ではヒトの都合と野菜の気持ちや都合のどちらも満たすために、必要最低限の手入れを行う。肥料や農薬は野菜の気持ちよりもヒトの都合を最優先にするための栽培方法であるが、野菜が育ち子孫を反映さ

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          マルチの工夫 適期適作

          <マルチの工夫 適期適作> ただ単にマルチといっても、それはテクニックであり、適期適作の野良仕事である。マルチは雑草防除の役割のほか、泥はねによる病気予防、土中内の保温・保湿、微生物や昆虫類を紫外線から守り、雨によって土が固くしまるのを防いでくれる。マルチ一つで野菜の生育を進めることもできれば、病気にさせてしまうこともある。 黒いビニールマルチを使用する時、あまり難しく考える必要がないのは調整のしようがないからである。だから、その年の天候に応じて調整ができずに、農薬や肥料

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          畑をする時間がないは大きなチャンスだ

          <畑の哲学>畑をする時間がないは大きなチャンスだ。 ・知識不足 ・技術不足 ・経験不足 ・やる気の継続 などなど、挙げたらきりがない。 けど、一番つまづく理由は「時間がない」ことだろう。 しかし、逆のことを言えば 普段の生活の中でいかに目先の結果につながることしかしていないってことなのだ。 タネを蒔いてから早くても2ヶ月しないと収穫らしい収穫がない。 そんな時間の流れに身を置いたことがない人ばかりではないだろうか。 資本主義の社会ではいかにすぐに利益を上げるか、すぐ

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          季節行事の農的暮らしと文化 7月 七夕とそうめん

          <季節行事の農的暮らしと文化 7月 七夕とそうめん> お中元とお歳暮は共に、お世話になった方へ日頃の感謝を伝えるために贈り物をする風習で、もともとは人の罪を贖う道教の節日のことだった。旧暦の7月15日のほか正月15日の上元、10月15日の下元と合わせて三元という。 いつのまにかお盆と混同され、祖先の霊を供養するとともにお世話になって人に物を贈る風習になった。関東ではお中元は7月上旬から15日かけて贈るのが正式とされているが、関西では8月ごろに贈る、など地域性がある。 お中

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          水の性質を生かした栽培方法

          <水の性質を生かした栽培方法> アンデス山脈で行われている伝統農業にチナンパスがある。 標高3000~4000mの山間地で行われる地域では赤道付近のため、昼間は暑く、夜は寒くなる寒暖差の激しい地域である。ここでは畑の間に溝を掘り、水を引いて蓄える。水は温めやすく冷めにくい性質を持つことから、昼間に太陽熱で温められると夜間に農家はその水を畑に撒くことで大地へ放熱をし、霜の発生を防ぐ。乾燥に強いジャガイモでも昼間の強い乾燥は強いストレスになる。しかし夜間の水撒きのおかげで過乾燥

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          観察と対話と子育て 前編

          <観察と対話と子育て 前編> 自然農やパーマカルチャーを教えてくれる人や本、動画は最近になってどんどん増えてきた。 それでも実際に実践できる人が少ない理由はまさに観察ができないからだと思っている。 にも関わらず、観察を教えてくれる人は全然いない。 それもそのはずで観察は感覚的な部分が多いので、教えるのが難しい。 しかし、観察にもコツがある。 だから、講座では必ず観察から始まる。 観察は確かに難しいが、誰にだって観察力が備わっている。 ただそれを十分に使いこなせていないだけ

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          7月の生き物 ヤモリとイモリ

          <7月の生き物 ヤモリとイモリ> 暑さが少しずつ増していく7月は虫の数も増えていく。 古民家に住んでいると家の明かりに誘われた虫が窓に集まってくる。 そして、それを狙ってヤモリが窓に張り付く。 ヤモリは爬虫類であり、夜行性だ。 まん丸の手足と一歩一歩丁寧なリズム、連動したなめらかな尻尾の動きは ずっと見ていたくなるほど美しい。 おそらく多くの人が写真や動画を撮ったり、長い時間眺めた経験があるのではないだろうか。 ヤモリは「家守り」という漢字が当てられる存在。 家に集まっ

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          必要なことはするが、余計なことはしない

          <畑の哲学>必要なことはするが、余計なことはしない 自然農の技術はスケジュール通りでも、マニュアル通りでもない。 確かにいくつか代表的な技術や野良仕事はあるが、それは絶対ではない。 自然農の職人たちは常に長期的な視点と、短期的な臨機応変さを兼ね備えている。 そして、多様な技術をその都度その都度、使い分けていく。 その使い分けの原則は「必要なことはするが、余計なことはしない」である。もちろん、野菜にとって。 それがなかなか分からないと、自然農がうまく実践できない。 その必

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          梅雨の野良仕事 中耕とマルチ

          <梅雨の野良仕事 中耕とマルチ> 自然界の営みは複雑で奥が深い。まだ科学技術で解明できていないことがたくさんある。コンパニオンプランツはもっぱら畝の上だけの狭い世界で相性やものごと見てしまう。 しかし、畝も通路も隣の畑も、森林もすべてが同じ大地でつながっていること、同じ大気で包まれていること、同じ天から太陽光を受け取っていることを忘れてはならない。 だから、全体を常に観察し、ときに手を入れ、ケアをしてデザインし直す必要がある。 本格的な夏がはじまると夏野菜とはいえ野菜たち

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          農薬とオーガニックの真実

          <農薬とオーガニックの真実> 「地球(環境)に優しいオーガニック食材を子供たちに!」といったようなスローガンが叫ばれるが、彼らはたいてい日本では有機栽培では農薬の使用量や回数に制限がないことを知らない。日本で無農薬栽培をしようにも、山奥ではない限り、隣には慣行栽培や有機栽培の畑が並ぶことになる。そこから農薬が飛んでくることはよく知られており、数kmまで風に乗って運ばれていることが確認されている。日本の法律では農薬を使用している慣行栽培の畑と1m離れていれば、有機栽培として認

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          ただの生き物を尊重しているか? ただの草とただの虫

          <ただの生き物を尊重しているか? ただの草とただの虫 > 自然農や有機栽培について勉強に励む人に限って実は多くのことを勘違いし、ドツボにはまっていく。 たとえば、害虫対策のために益虫のことをたくさん勉強し、コンパニオンプランツをたくさん混植する人がいる。残念なことにそんなことを熱心にする人に限って、害虫はいなくならない。そうやって専門的な知識を身につけていくこと自体は、間違っていない。しかし、専門性を深めると必ず視野が狭くなってしまうのだから、視野を広くして自然の摂理に戻

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          雑草と害虫を根絶する方法

          <畑の哲学>雑草と害虫を根絶する方法 なんてことをお前は言い出すんだ。 自然農をやっている人間が口にする言葉ではないぞ。 とお叱りを受けそうな言葉だが、まぁ最後まで読んでみてもらいたい。 その方法はたったの二つしかない。 と、解説する前にとても大切な事実であり意外な事実を知っておいてもらいたい。 それは「雑草」も「害虫」も植物学や生物学には無い単語だということ。 つまり明確な定義もなければ、目の前にいる生命を雑草だとか害虫だとか判断する世界共通の認識や手立てもない。

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