雑草と害虫を根絶する方法

＜畑の哲学＞雑草と害虫を根絶する方法

なんてことをお前は言い出すんだ。
自然農をやっている人間が口にする言葉ではないぞ。

とお叱りを受けそうな言葉だが、まぁ最後まで読んでみてもらいたい。

その方法はたったの二つしかない。

と、解説する前にとても大切な事実であり意外な事実を知っておいてもらいたい。
それは「雑草」も「害虫」も植物学や生物学には無い単語だということ。
つまり明確な定義もなければ、目の前にいる生命を雑草だとか害虫だとか判断する世界共通の認識や手立てもない。
それは「幽霊」や「魂」のように有るようで無いような、無いようで有るような曖昧なものだということだ。
こういうのを哲学用語では「概念」と呼ぶ。

もちろん雑草や害虫に関する研究をしている人もいるし、それについての論文もたくさんある。（この辺も幽霊や魂と同じ）
そういった研究や論文には必ず序文で雑草とか害虫とかの定義を定めるところからはじまっている。
つまり、この論文の中で出てくる「雑草や害虫というのはこういう生命を指しますよ」と書かないと何についての論文なのかが分からないのだ。

ということは、科学者の数だけ論文の数だけ雑草や害虫の定義があるということ。
それを拡大してしまうと、メディアの数だけ書籍の数だけ、そして人の数だけその定義は変わってしまう。
だから、人によっては雑草と呼ばれたり薬草と呼ばれたり野草と呼ばれたりレッテルが変わってしまう。
変な話、どんなに有用な植物だとしても、あなたが雑草だと思えばそれは雑草と呼ばれるし、
どんなにかっこよくて子供たちに大人気の虫でも、あなたが害虫だと思えばそれは害虫と呼ばれる。

ここから導き出される方法の一つ目は
「あなたの頭の中から雑草とか害虫とかいう概念をなくすこと」。

いきなり精神論で申し訳ないのだが、これが一番早くて効果があると思っている。
というのも、言葉も概念も科学も結局のところ、この地球上で人間の頭の中にしかない。
自然を観察すれば、そんなことにすぐに気がつくことだろう。

雑草と呼ばれる植物の活用方法や生態について学べば学ぶほど、
彼らのことを雑草とは呼ばなくなる。
害虫と呼ばれる虫の役割や生態について学べば学ぶほど、
彼らのことを害虫とは呼ばなくなる。

自然農をする人たちが雑草とか害虫とかいう言葉を使わなくなるのは、精神論の問題ではなくて実用の問題なのだ。
それを福岡正信さんはたった一言「無」と表現した。

とはいえ、その境地にたどり着くのには現代人には時間がかかるかもしれない。
だから、もう一つの方法の方がもしかしたら簡単かもしれないし、現実的かもしれない。

とても科学的な結論である。
それは雑草や害虫についての研究が進むにつれて明らかになってきた彼らの生態に関わっているからだ。

ずばり「人間が絶滅すること」。

どういうことかというと、雑草も害虫も人間の暮らしや生き方など環境への影響によって生まれた種なのだ。
人間が自然を撹乱したり、人為的に作り出した特別な環境に適応して進化し、生き残り、そしてそれに依存している生物である。
それは私たち人類からすれば「寄生」だが、おそらく彼らからすれば「共生」だと思っているに違いない。

だから彼らを研究すればするほど、人類のおかげで生きていることがわかる。
人類がいなくなれば、彼らも生き残ることはできない。
そういう意味では私たちが共生（寄生？）している野菜や穀物などの栽培種や家畜種と生態学からいえば全く同じ生き物なのだ。
こうしてみると害獣と呼ばれる獣たちも同じことが言えるだろう。

環境問題において、地球から人類がいなくなれば良いという人がいう人がいるが、
それはこの点について全くもって理解していない証拠である。

人類が絶滅すれば、実は多くの生物種が絶滅する。
その絶滅する種とは私たちの周りにいるほとんどの生物だといっても構わない。そこに益と害の境界線はない。だから「無」なのだ。
つまり人類が絶滅すれば「現在の生物多様性」は崩壊する。
「人新世」という言葉がリアルな言葉として科学者に受け入れられたのは、
それほど現在の生物多様性の世界に人間は深く関わっているからだ。

現在の地球は生物の絶滅と進化が同時に多発している時代。
人類の行いの反動こそが、絶滅と進化である。
絶滅と進化も実は相反する現象ではなく、裏と表に過ぎない。

これは俺の勝手な推測だが、おそらく雑草と害虫と呼ばれる種が絶滅するときは人間が絶滅するときだろう。
おそらくそれまでに彼らは別の種に進化しているだろうが。

そして人類絶滅以降に繁栄する種は今、人類の影響をほとんど受けていない種の可能性が高い。
そう、恐竜から全く相手にされずに生きてきた私たち哺乳類の祖先のように。

あなたがもし、雑草や害虫から悩まされたくなければ選択肢は
この二つしかないと本気で思う。（もしかしたら他にあるかもしれないが）

さぁ、あなたはどちらを選ぶ？