7月の生き物 ヤモリとイモリ
<7月の生き物 ヤモリとイモリ>
暑さが少しずつ増していく7月は虫の数も増えていく。
古民家に住んでいると家の明かりに誘われた虫が窓に集まってくる。
そして、それを狙ってヤモリが窓に張り付く。
ヤモリは爬虫類であり、夜行性だ。
まん丸の手足と一歩一歩丁寧なリズム、連動したなめらかな尻尾の動きは
ずっと見ていたくなるほど美しい。
おそらく多くの人が写真や動画を撮ったり、長い時間眺めた経験があるのではないだろうか。
ヤモリは「家守り」という漢字が当てられる存在。
家に集まってくる害虫をせっせと食べてくる。
ときには家の中に入ってきて、夜にガサゴソと動き回っていることもある。
変わってイモリはヤモリとは違って両生類であり、井戸や水田、池などに棲み付いている。
井戸を守ることから「井守り」、井は田んぼを意味することから「田を守る」ことが名前の由来とされている。
ヤモリと同様水辺で繁殖するような害虫を食べてくれるので、昔からありがたい存在だった。
イモリとヤモリは昔から人間の近くに棲みつき、共に生きてきた。
幼い頃から彼らを観察し、ときには一緒に遊んだことがある人もまだ多いだろう。
ときどき、ヤモリの尻尾がちぎれているやつを見かけることがある。
それは天敵にやられたのか、縄張り争いのケンカによるものだという。
ヤモリは危ないと思うと自分で尻尾を切り離すことができる。
こういうことを「自切(じせつ)」という。
自切された尻尾はしばらくの間激しく動き回る。
とても痛そうで苦しそうに見えるのだが、そういった感覚を感じる脳とは切り離されているので、誰も痛くも痒くもない。
これは自切された尻尾が激しく動くように設定されているのだ。
それによって天敵が自切された尻尾に注意を向けることで、その間に本体は逃げる機会を得ることができる。
自切から数ヶ月もすれば再生されるが、完璧に再生することはできず少し形や色、長さが違うので
自切したかどうかはよく観察してみると分かる。
ヤモリはそもそも骨や筋肉、血管などすべての組織がきれやすいようになっているのに対して、
イモリはそういった組織になっていないので自切はできない。
しかし、ヤモリとは違い完璧な尻尾を再生することができる。
ときどき、その過程で何かしらのストレスによって尻尾が2本や3本になることもあるとか。
さらにイモリの再生能力は高く、腕や指・目なども再生することができる。
イモリのその再生能力は様々な分野で注目を浴びている。
そのなかで実はイモリは何度か宇宙に行って、受精卵からの発生について実験行われている。
この実験はのちのちの再生医療に生かされることが期待されている。
ヤモリの驚くべき能力はその壁にはりつく能力だろう。
ヤモリの足には吸盤もなければ、粘着剤も付いていない。
彼らが持っているのはとても細かい毛だ。
直径が髪の毛の10分の1程度で、1本の指に650万本近くあるという。
その毛が壁の凸凹の隙間に入り込むことで、壁に張り付くことが可能になる。
その仕組みについて詳しく知りたい人は「分子間力」を調べてみてほしい。
このヤモリの能力の解明により、全く新しい粘着テープの開発が世界中で進められている。
このように自然界の生き物たちが持つ驚くべき能力を人間の生活に活用するネイチャー・テクノロジーや
模倣することで人間社会をより豊かにするバイオミミクリは
人間と周りの生き物たちとの関わりを昔とは違う新しい関係性を育むことになるのだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?