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ものがたり

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#自作

再生

再生

ぼくらの病気は蔓延している
森は呼吸をやめない
隆起した丘に影が差そうとも
綿毛が散る
ささくれだった夢について
ぼくらの病気は蔓延している
美しさをやめない
不揃いになったコマ送りの
嘘を想う日夜
走り書いた水溜まりのこと

なにもないよ ほんとのはなし
逆さまになった休日
一等よい迷彩の隙間
沈みこむ融けるよに
張り巡らされているのはネットワークだけではない
どうか不遇をかこつことなかれ
汚れ

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忌みの街

忌みの街

早朝はやけに涼しい
煙のまち
日の当たらないところ

公園が取り壊しになる
老朽化が進んだ遊具と錆びたフェンス
団地の3番公園
あいつの家 電線 木 俺の家
スーパーのゲームセンターで遊んだ機体
あいつ 新居に置く夢もう叶えたか

夕日と小雨の粒とひかり あとペトリコール
バスを逃すと次は30分後
走る、靴が濡れることを構わず
道はところどころ税金でパッチワークされてでこぼこしている
あいつの親の

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反魂

反魂

昨日の快晴が嘘みたい
眺めているだけで参加できない夢めとあなたは言った
搾取されては余ったものをうまいうまいという
ハンバーガーかハンバーグかの違い

ほんとに?ほんとうに?ほんとーに?
ほーーんとに?

朝目が覚める 窓を開けても見慣れない風景が流れる
はやい たかい
人は鏡と教えられた人だけが見える

食べたグリーンカレーが美味しかった
小さなじゃがいもが柔らかかった
辛くて鼻水が止まらないや

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黎明謄

黎明謄

あらぬ場所に私はいる。

そこは井戸の中かも知れないし、とんかちで叩かれた頭の中かも知れないし、からくり人形の中かもしれない。

鼠取りに一部を取られたから、四肢の残りを以て動く。

葬儀場からは狼煙が上がって、嫌に咽ぶものだ。

「向こう岸」と記された立て板は墨が滲み、経年の劣化が著しい。

「ここ、ここに居るんだ。」

喉元を響かせる老人の声が頭上から降ってくる。

何か用か、と言い掛けて止め

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