チョルクーパー

本を出すことが目標です。 基本400字以内のショートショートを書いています。 ショ…

チョルクーパー

本を出すことが目標です。 基本400字以内のショートショートを書いています。 ショートショートガーデン「駅伝家族」で賞をいただきました。 伊坂幸太郎さんの「ガソリン生活」のキャッチコピーコンテストで入賞し、文庫版の帯に、同ペンネームで掲載されています。

最近の記事

ショートショート#22「満月じゃなくても」

私達は海や街の灯りが一望出来る公園のベンチに並んで腰掛けている。風が心地よい。春の雰囲気を味わっていると、彼が話し出した。 「月が綺麗ですね。そういえば、昔の文豪が、 『I love you』を『月が綺麗ですね』と訳したっていう逸話があって、なんて洒落てるんだろうって、僕、好きなんですよね」 「へぇー、素敵なお話ね」 私達は付き合い始めて3年になる。 彼は優しく、いつでも明るい。 私はいつでも彼から力をもらっている。 そして私も彼を支えていきたい。

    • ショートショート#特別編「ホームレスのタドコロさん」

      タドコロさんには家がない。 公園に段ボールで作ったベッドを敷いて眠っている。 警察や公園の管理人には注意され、通行人からはゴミ同然の扱い。 迷惑をかけているから当然だ。 ある日小学校低学年と思われるおかっぱ頭の男の子が「僕はユウキ。おじさんは?」と、気さくに尋ねてきた。 「タドコロ」 「タドコロはずっとここで暮らすの?」 呼び捨て。まぁいい。 「今だけだ。仕事が見つかるまで」 「働く気があるんだ」 「お前、俺を馬鹿にしてるんだろ」 「別に馬鹿にしてないよ。でもいっぱい殴られて

      • ショートショート#21「フードコート」

        フードコートの唐揚げ店に取材に来た。 [自由でいいんだカラ!]という商品が話題となっているのだ。 「いつ思い付いたのですか?」 「10年前、14歳の時です」 「そんな前に?」 「15歳から勤め始め、ようやく形になりました」 「きっかけは?」 「その頃、受験を控え周りの人々は勉強しろの大合唱でした。そんな時、ここで唐揚げを食べているとテーブルに書かれていました」 「何が?」 「勉強はご遠慮下さい」 「注意書きですね、よくある」 「僕は救われた。勉強はしなくて

        • ショートショート#20「伏線回収」

          ニノミヤは時価20億の名画窃盗容疑で逮捕された。 取り調べには素直に応じていたが動機については謎が残る。 「ニノミヤ、お前は絵画に興味があったのか?」 「ありません」 「闇ルートで売るつもりだったのか?」 「いえ、返すつもりでした」 「嘘をつくな!じゃあなんで盗んだ?」 「伏線回収の為です」 ニノミヤは真面目な男であった。 これまでの人生30年、愚直に生きてきた。 事件はその真面目さゆえに起きた。 一週間前、彼は小学校の同窓会に参加した。 旧友と楽しいひと時を過ご

        ショートショート#22「満月じゃなくても」

          ショートショート#19「理不尽」

          世の中は理不尽で溢れている。 会社では人のミスでなぜか自分が怒られることがある。 毎日呑み歩いている人は元気で、マスクをして消毒を徹底して極力外出を自粛していた人が感染症に罹ってしまうこともある。 容姿や性別だけで損をすることもある。 世の中は理不尽なことだらけだ。 そんな世の中の理不尽を拾い集めて、甘い飴に変え、人々に力を与えてくれる女性ヒーローをご存知だろうか? その名も【RE:婦人】 さぁ世界中の理不尽で苦しんでいる人達に伝えるんだ! RE:婦人、爆誕だ!

          ショートショート#19「理不尽」

          ショートショート#18「レビュー」

          加湿器をネットで検索する。 良さそうな商品を見つけたので購入済みの方のレビューを見てみる。 [8畳の部屋にはこれでok] [サイズがもう少し小さいと良かった] など、様々な感想が書いてある。 他にも良いのがないか探していると、なぜか僕の顔写真が掲載されている。 「なんだこれ」 不気味に感じつつもクリックしてみる。 すると僕の氏名、年齢、職歴、住所と様々な情報が書かれている。 悪質なイタズラだと思い警察に通報しようと思った時、レビューページがあることに気が付く。

          ショートショート#18「レビュー」

          ショートショート#17「不在着信」

          不在着信に気付く。 いつの間に? 知らない番号だ。 履歴を消去しようと思ったが伝言が残っていることに気付いた。 聞いてみる。 「突然すいません。昨日レストランで隣の席にいた者です。盗み聞きをしていたわけではないのですが、あなたがご友人の方と話していた内容が耳に残ってしまい」 しゃがれた老婆の声だ。 背筋に寒気が走る。 伝言は続く。 「なぜ電話番号がわかったのかと気になります?そこは私の経済力を存分に使ってですね、簡単にわかりました。ウヒヒ」 一体何者だ? 怖過ぎる

          ショートショート#17「不在着信」

          ショートショート#16「マシュマロ」

          彼女に明日の予定を尋ねると 「マシュマロを手に入れる」 と返信が来た。 僕の頭は混乱した。 僕は彼女を尾行することにした。 朝、家を出た彼女がまず向かったのはコンビニだ。 そこで缶コーヒーとマシュマロを購入。 もう予定完了じゃないか。 しかし彼女は家とは反対の方向へ歩き出す。 15分程歩き、彼女はある店へ入っていく。 なぜ、レンタカー? 混乱しつつ、僕はタクシーで尾行を続ける。 止まった。 スーパーだ。 ここでもマシュマロを購入。 レンタカーを借りてまでマシュマロを買い

          ショートショート#16「マシュマロ」

          ショートショート#15「プロの女」

          「商売あがったりですよ」 ある女が嘆いている。 インタビュアーは続ける。 「あなた程の人でも、新型ウイルスには勝てませんか」 「否定的なことを言うつもりはないですけど、マスクしてたら仕事が成り立たないんでね。素顔が晒せないとどうしようもないんで」 と、否定的なことを言っている。 インタビュアーは、うんうんと相槌を打ちながらメモを取っている。 そして質問を続ける。 「では最近は仕事はしていないのですね。そうすると勘が鈍りませんか?何か努力されていることはありますか?」

          ショートショート#15「プロの女」

          ショートショート#14「モーニングルーティン」

          どうもー、皆さん、おはようございます! 動画配信者の「太陽に吠えろ」と申します。 今日は私のモーニングルーティンを紹介したいと思います。 モーニングルーティンと言っても、私が起きるのは大体午後三時過ぎなんです。 遅いですよね。 起きたらまずは窓を開けて太陽を見ます。 そして、「負けねーぞ!」って叫びます。 変わってるかな?そうかな? そして食事です。 食事は大体クッキーですね。 「ムーンライト」っていうクッキーがオススメです! そしてその後はペットのウサギにご飯をあげます

          ショートショート#14「モーニングルーティン」

          ショートショート#13「ステアおばさん」

          僕はステアおばさんのクッキーが好きだ。 何? 間違えてないよ。 僕の伯母はフランス人でステアという名なのだ。 そして、ステアおばさんが焼くクッキーは本当に絶品。 ステアおばさんは日本人は嫌味っぽいとよく言っていた。 「例えば手が綺麗な人がいるでしょ。日本人は「「手が綺麗なこと!家事を何もしないのね」」って言うの。褒めるだけで良いのに」 「そうだね」 「私のクッキーを食べた人も「「本当に美味しい!でもどこかで買ったんでしょ?」」ってよく言うのよ!やかましいわ!ただ褒めろ

          ショートショート#13「ステアおばさん」

          ショートショート#12「我が家のハムスター」

          僕と妻が暮らす家に新たな家族が加わった。 その名はチャッツ。 ジャンガリアンハムスターだ。 僕達は共働きなので、日中、チャッツは一人で過ごすことになり可哀相だ。 と、思っていたのは初日だけ。 二日目からチャッツは存分にくつろぎだした。 なるべく寂しい思いをさせないようにと二日目は早めに仕事を切り上げて帰った。 すると風呂場の電気がついていて中を覗き込むとチャッツが湯船に浸かっていた。 「お先にいただいています」 そして三日目、僕が帰宅するとすでに妻が帰宅していて夕食の

          ショートショート#12「我が家のハムスター」

          ショートショート#11「夢なのかな」(湯河原さんシリーズ#2)

          「伊東、見えてるか?」 「見えてます。湯河原さん、ズボンは履いて下さいよ」 昨日久しぶりに湯河原さんから電話が来たら開口一番 「伊東、明日オロナミン飲み会をやるぞ」 「はい?オンライン飲み会のことですかね?」 「伊東!正にそれだよ」 とのことでオンライン飲み会をやることになったのだ。 とは言え二人ともお酒が飲めない為、コーラで乾杯したのだが。 「伊東、じゃあ俺から発表するからな」 別に何かを発表する場ではないが湯河原さんは角刈りの頭を掻きながら語り出す。 「俺が18

          ショートショート#11「夢なのかな」(湯河原さんシリーズ#2)

          ショートショート#10「出会いは転がっている」(湯河原さんシリーズ#1)

          「彼氏出来たか?」 湯河原さんはいつでも直球質問だ。 「出来ませんよ。出会いがないですもん」 「若い奴はその言い訳ばっかだな。出会いなんていくらでも転がってるじゃないか」 湯河原さんはいつだって偉そうだ。 しかし嫌味のない湯河原さんの直球の言葉は嫌いじゃない。 そんなことを考えていると、湯河原さんがテーブルの下から何やら拾い上げた。 「ほら、出会いあったぞ」 湯河原さんの手にはガチャガチャで出てくるような丸いカプセルが握られている。 そして湯河原さんがそれを開くと煙が出て

          ショートショート#10「出会いは転がっている」(湯河原さんシリーズ#1)

          ショートショート#9「書店の秘密」

          大型書店で小説を物色していると、突然20歳くらいの青年に声を掛けられた。 「何がおすすめですか?」 急なことで戸惑いながらも、これも何かの縁だと思い、 「どんなジャンルが好きですか?」 と青年に尋ね返す。 「とにかくお兄さんのおすすめが知りたいです」 「うーん、これは面白いですよ」 「【書店の秘密】ですか。ミステリー?」 「単純にミステリーとも言えず、絶対想像できない結末ですよ」 「へぇー、興味深いな」 青年はそう言うと【書店の秘密】を抱えて行ってしまう。 変わった人

          ショートショート#9「書店の秘密」

          ショートショート#8「縁もゆかりもある」

          僕の初恋は幼稚園の時、パッチリと大きな瞳のユミちゃんだった。 ユミちゃんは 「世の中には同じ顔をした人が三人いるんだって」 という話をよくしていた。 思えば不思議な縁はそこから始まっていたのだ。 時は流れ中学生の時、野球部マネージャーのカヨちゃんに恋をした。 大きな瞳をしたカヨちゃんは成長したユミちゃんとしか思えない程似ており、ユミちゃんの「同じ顔が三人..」という話を思い出して「これでリーチじゃないか!」と考えたりもした。 更に時が流れ初めてお付き合いした女性がリエさん

          ショートショート#8「縁もゆかりもある」