ショートショート#11「夢なのかな」(湯河原さんシリーズ#2)

「伊東、見えてるか?」
「見えてます。湯河原さん、ズボンは履いて下さいよ」
昨日久しぶりに湯河原さんから電話が来たら開口一番
「伊東、明日オロナミン飲み会をやるぞ」
「はい?オンライン飲み会のことですかね?」
「伊東!正にそれだよ」
とのことでオンライン飲み会をやることになったのだ。
とは言え二人ともお酒が飲めない為、コーラで乾杯したのだが。
「伊東、じゃあ俺から発表するからな」
別に何かを発表する場ではないが湯河原さんは角刈りの頭を掻きながら語り出す。

「俺が18の時なんだけどな、名古屋にプロ野球を観に行ったことがあっただろ」
「知りませんよ、僕生まれてないです」
「で、その時に外野席にいた俺の所にボールが来て投げ返したらノーバウンドでキャッチャーに届いたんだよ。それで帰りに後をつけてきた車がスカウトの奴で、俺は少しの間プロ野球選手だったんだよ」
夢なのかな。
でも湯河原さんは自信満々だった。

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