ショートショート#13「ステアおばさん」

僕はステアおばさんのクッキーが好きだ。
何?
間違えてないよ。
僕の伯母はフランス人でステアという名なのだ。
そして、ステアおばさんが焼くクッキーは本当に絶品。
ステアおばさんは日本人は嫌味っぽいとよく言っていた。
「例えば手が綺麗な人がいるでしょ。日本人は「「手が綺麗なこと!家事を何もしないのね」」って言うの。褒めるだけで良いのに」
「そうだね」
「私のクッキーを食べた人も「「本当に美味しい!でもどこかで買ったんでしょ?」」ってよく言うのよ!やかましいわ!ただ褒めろ!」
昔は何度も聞かされていたんだ。
ステアおばさんは認知症を患い、いつしかクッキーを作らなくなった。

ある日、僕が市販のクッキーを食べていると、ステアおばさんが寄ってきて
「私の作ったクッキー、どう?」
と尋ねる。
僕は子供の頃の記憶を復習して、間違いなく答える。
「最高だよ!」
ステアおばさんは
「合格!」
とばかりに微笑んだ。

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