ショートショート#20「伏線回収」

ニノミヤは時価20億の名画窃盗容疑で逮捕された。
取り調べには素直に応じていたが動機については謎が残る。 

「ニノミヤ、お前は絵画に興味があったのか?」
「ありません」 
「闇ルートで売るつもりだったのか?」
「いえ、返すつもりでした」
 「嘘をつくな!じゃあなんで盗んだ?」
「伏線回収の為です」

 ニノミヤは真面目な男であった。
これまでの人生30年、愚直に生きてきた。
事件はその真面目さゆえに起きた。
一週間前、彼は小学校の同窓会に参加した。
旧友と楽しいひと時を過ごし、帰宅後もその余韻に浸りたかった彼は卒業アルバムを開いてみた。
その中には写真だけでなく、
【30歳の自分は?】
といったページがあり、寄せ書き形式でそれぞれの未来の自身の姿を書いていた。
彼は全く覚えていなかったが
【怪盗ルパルになっている】
と書いていた。
当時流行っていた泥棒アニメの主人公だ。

真面目な彼はこの伏線を回収しないわけにはいかなかったのだ。

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