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青空物語

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SF連載長編小説。 創作大賞2022に応募中です。 空気と水を作り出すナブンと食料を作り出すナルに分かれてしまった地球でその両方の血を受け継ぐ葵が繰り出す物語 地球から青空が…
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青空物語 第1話 私たちの世界

青空物語 第1話 私たちの世界

索引第2話 期待と不安
第3話 旅立ち
第4話 視線
第5話 出会い
第6話 求めていたもの
第7話  地球の回復
第8話 言い伝え
第9話 思い
第10話 解き放たれた思い
第11話 希望  完

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第1話 私たちの世界
地球から青空がなくなった時代。
青空がなくなっただけではなく、空を見ることがほとんどできなくなった時代。
この物語はそんな時代に青空を求めた人たちの話である。

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青空物語 第11話 希望

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第11話 希望

蒼たちはシップの待合室にいた。
横にはクウもいた。
あれから何日間かをユンと共に農作業しながら治やおばさんと過ごした蒼はナブンに戻るためのシップを待っていた。
ユンと数名の仲間たちも一緒だった。

あれからナルでのここ100年のデーターをクウに移したため途中で何かあるといけないと心配したためだった

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青空物語 第10話 解き放された思い

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第10話 解き放された思い

部屋には時折ピピッというフェニックスの機械の音だけが響いていた。
静かな時間だった。
時折窓から生暖かい空気が入ってきてカーテンが揺れていた。

蒼はたとえ機械から聞こえている声であっても、自分にとって治はなんら変わらないのだと思い始めていた。

しばらくして治がまた話し始めた。
「わ

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青空物語 第9話 思い

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第9話 思い

男たちが帰った後、ユンはクウから取り出した二枚のディスクを新しい子守AIに入れ、起動ボタンを押した。
蒼は緊張しながら新しい子守AIの入れ物を見つめる。
新しい子守AIからウィーンという音が1分ほどしたのち
「再起動、終わりました」
という文字がお腹に浮き上がり、新しい子守AIが起き上がった。

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青空物語 第8話 言い伝え

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第8話 言い伝え

蒼は記憶の彼方にいた。
昔ながらの畳の懐かしい香りがした。

『あれ、私はどこにいるんだろう』

蒼が目を開けるとそこは幼い頃に育った祖母の家だった。

『そうか、ここはおばあちゃんの家だ』

台所からは美味しい香りが漂ってきていた。
蒼が台所に駆け寄ると祖母が台所で鍋から何かを出している。

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青空物語 第7話 地球の回復

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第7話 地球の回復
トラックに揺られて30分くらいでついた場所は広い農地だった。
空気も水もまともなものがないといわれるドームの外にありながらそこでは多くの木々と農作物が育っていた。
頭上にはまだ黒い蒸気が漂っているものの、その隙間から時折青空ものぞいた。

ユンが言うにはここから半径5キロは農地や森林になっていて

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青空物語 第6話 求めていたもの

青空物語 第6話 求めていたもの

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第6話 求めていたもの

治の住居があるというナルの生産地域につき、一夜をユンの家で過ごした蒼は
昼過ぎに目が覚めた。
窓の外からは小鳥の声が聞こえた。

蒼はクウと少し外の様子を見ようと玄関まで行った。
ドアを開けた途端、外の熱気が感じられ暑苦しい空気が入り込む。
太陽が照りつけ大地からはもんもんとした熱流を感じた。

「こ

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青空物語 第5話 出会い

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第5話 出会い

少年の名前はユンといった。
結構なスピードで馬は走っていく。
揺れる馬車の中で蒼は不安になりながらもクウの手が通常の温度になっていくのを感じていた。
それは危険が遠ざかったことを示していた。

もう危険は回避されたと頭では理解できても色々な疑問が湧き起こり彼女の心は落ち着かなかった。

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青空物語 第4話 視線

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第4話 視線
蒼とクウはナブンから遠く離れた都市、ナルの資料館のエントランスにいた。
ナルに到着したものの、その先に進む手段がなかったからだ。
本来ならば蒼の叔母の家の誰かが迎えに来るはずだったのだが、その人間はいなかった。

幸いナルの到着口のスタッフに、迎えが3−4時間遅れることが伝言されていたので、蒼

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青空物語 第3話 旅立ち

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第3話 旅立ち
「生きる選択は人によりますからワタシでもわかりませんが、確率でいうと」
「いや、確率計算しないで。余計に気になってくるから」
蒼がクウの口を押さえた。

「わかりました」
「クウはすぐなんでも正確に出したがるからなあ」
「いけませんか」
「大事だけど、ない方がいいこともある。ま、計算苦手な俺にとって

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青空物語 第2話 期待と不安

青空物語 第2話 期待と不安

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第2話 期待と不安

「隆のところ、今年のトマトの収穫はどうだった?」
「んーじぃさんがいうにはさ、ちょっと実が小さかったって」
「去年と変わらずかあ」
「暑いからだっていってたな。俺もそう思うわ。この暑さの中で作業をやるのまじ、やだもん」
「作業もだけど、作物が可哀想」

「俺もかわいそう」
「・・そうね」
蒼は隆の気楽さに笑いながら続けた。

「これ

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