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掌編「小春日和と僕の靴」

 真夜中。こんな時間に起きているの?いいえ、今から眠る所です。

 ここ数日暖かいね。こう云う日は、小春日和っていうんだ。僕は、深い秋の中にぽつんと現れる気候の緩やかな一日が、小春日和だなって思っていたけれど、今年は違ったね。間にぽんぽん幾つも挟まっていく気だね。いいのかな、こんなに暖かくて。けれどこんなに穏やかな日は、外へ出て行きたくなる。

 お気に入りの、とびきりの靴を履いて、ちょっとでもいいから、歩きたいな。それは明るい茶色。丁寧に仕立てられた日本製の革靴。靴紐まで拘って、結び心地が他の靴とは、例えばスニーカーのそれとは別の素材で、きゅんと締まるんだ。

 足を入れて、つま先をとん、此れはどうやら僕の癖。包まれるような安心感。一歩踏み出す度に、何だか嬉しくなる。

 誰かが言ってた。綺麗な靴を履けば、素敵な場所へ連れて行ってくれるって。ようし、それなら僕も。

 さあ、何処へ行こう。何しよう。何が僕を待っている―

 歩いて行くと、何だか良い事が、起こりそうな気がするよ。

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