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喪失感を抱えている時に自分の心を大切にする方法

先日「心を大切にするということ」をテーマにトークイベントのゲストとして呼んでいただき、「グリーフ・喪失感」について話をさせてもらいました。
その時の話を文字に起こして、ここでも伝えていこうと思います。

 医療現場でのグリーフの意味

看護学校で勉強している中「グリーフケア」という言葉と、その大切さというものを教わりました。
通常、医療現場で「グリーフ」というと、患者様が亡くされたご家族、つまり、ご遺族の心理的状態とその反応などを表していています。そして、そのご遺族に対するケアを「グリーフケア」と呼んでいることが多いと思います。
「大切なこと」と言われながらも、実際にグリーフケアを行うタイミングや時間というものは、とても短く、お亡くなりになった患者様のお迎えが来るまでの間しかなく、その上、他の患者様のことも同時に看なければならないという状況で、このグリーフケアというもは、現状、不足してしまっていることが、ほとんどだと思います。(もちろん、その短い時間に丁寧にご家族に対応していくれている方もたくさんいらっしゃいますが)
また、病棟で働いている看護師の場合、患者様がご自宅にお帰りになってしまうと、こちらからご家族と接触する機会というのは無くなってしまい、ご家族が何かの理由で病院に来た時しか、お話を聞くなどの「ケア」を行うことができず、その後も関わってグリーフケアを行っていくことが、とても難しいんです。

グリーフ・喪失体験って、大切な誰かが亡くなった時だけの話?

この「グリーフケア」が不足しているという現状が、私が起業して自分で仕事を始めようと思ったきっかけの一つではあるんですが、そもそも、「グリーフケアは大切」と言われているのに、それを学ぶ機会自体、とても少なかったので、そこに向けて仕事を始める前に、一度しっかり学ばなければと思い「グリーフ専門士」という資格を取得しました。
グリーフは「喪失体験」や「それにともなう悲嘆」を指すんですが、学んでみようと思った時に、医療現場で使われている「グリーフ」という表現に違和感を持っていました。
その違和感とは「誰かが亡くなったというのも『喪失体験』だけど、それ以外にも『喪失体験』ってあるんじゃないのか?」というものです。

僕が学んだのは「日本グリーフ専門士協会」という所なんですが、その中で言われていたのが

「グリーフ」は、死別だけでなく、病気やケガ、退職、離婚などを様々な体験であり、その体験は人それぞれある」

ということでした。

つまり「グリーフ」「喪失体験」というものは、その人が「喪失」を感じたすべての事象に対して言えることで、何も特別なものというかけではなく、日常いつも隣り合わせのものということです。
それまでは特別なことに特別なケアが必要だと思っていましたが、誰もが日頃、多かれ少なかれ感じていることだと思うんです。
例えば、今の「このコロナ禍」という状況も「元の生活」というものを喪失している、全世界的な「喪失体験」なんだと思います。

良いことの中にも喪失感はある

ここまでグリーフ・喪失体験について説明してきたんですが、出てきた出来事って全部「死別」であるとか「病気」「怪我」「離婚」…など、ネガティブなワードだけだったんですが、実は「結婚」や「出産」など一見ポジティブなものの中にも「喪失」というものは存在しているんです。
看護学校では「ストレス」に対しても学ぶんですが、「ホームズとレイのストレス度表(社会的再適応評価尺度)」という、ライフイベントのストレス度合いを数値化したもののランキングがあります。
1位は配偶者の死でストレス度100、2位が離婚でストレス度73。とネガティブなものが並ぶんですが、7位結婚50、9位夫婦の和解45、12位妊娠…などポジティブな要素もストレスの要因となるんです。
人間はポジティブな出来事にもストレスを感じていて、それと同様に、喪失感もポジティブの中に隠れているんです。
例えば、結婚や妊娠はイメージしやすいかもしれませんが、結婚すると生活は一変します。実家暮らし、もしくは独り暮らしから他人と同居することになる。女性は苗字が変わる。元の生活を「喪失」して、新たな生活が始まる。いわゆるマリッジブルーマタニティブルーと言われるもの、女性の場合はホルモンなどの影響もあるとは思いますが、「グリーフ」「喪失感」も大きく影響していると個人的には思っています。

こんな感じで、グリーフ、喪失感というものにはネガティブなものだけではなく、ポジティブなものもあって、日常的に隣り合わせ、誰もがいつ感じてもおかしくないもの、決して「特別なモノ」ではなく、日常的に自分でケアを、もしくは、人からケアをしてもらう必要もあるものだと思います。

3つの心を大切にする方法

では、このグリーフの状態に対して「心を大切にする」には、どうすれば良いのか?という話ですが

 ①「今ここ」に目を向ける
 ②喪失感のその奥を見る
 ③感謝の気持ちを持つ


3つを大切にするのがいいんじゃないかなと思っています。

グリーフの自分を大切にする方法①
    「過去」ではなく「今」に目を向ける

まず一つ目の「今ここ」についてです。
失ったものって、もう二度と戻ってこない…ということも少なくはないですよね。
戻ってこない現実、失ってしまったことを思うと、とても悲しくて、悔しくて、時には怒って…いろんな感情が渦巻く。
こういった想いを、表に出したり、自分の中で感じたりする時間って、辛いかもしれないけど、とても大切な時間だと思います。
でも、この行為自体は「過去」、起こってしまった「過去」について目を向けている状態です。「今」を生きている僕たちは、過去にだけ目を向けて生きていることはできないんですよね。
なので、ずっと過去だけ見ているのではなく、少しずつでもいいので、「今」目の前の事、物、人に目を向けて、「今ここにいる自分」というのを感じていかなければならないんです。

『鬼滅の刃の丹治郎』も今に目を向けていた

僕は漫画やアニメが好きなので、去年流行った「鬼滅の刃」を例に出して、少し説明してみますね。
主人公の炭治郎は鬼に家族を殺されてしまいます。残されたのは(助かったのは)妹の禰豆子、一人だけ。
タイムスリップして運命を変えたり、願いをかなえてくれる龍が人を生き返らせてくれる漫画もありますが、この漫画では亡くなった人が生き返ることはありません。大切な人が亡くなった過去が変わることはない漫画なんです。
炭治郎は家族の死にショックを受け、このショックは物語途中まで抱え続けているんですが、彼はそのまま立ち止まっていたわけではなく、前へ前へと進んでいきます。
炭治郎がこの時の事に、起こってしまった「過去」に注目して生きていたとしたら、きっと自分で立ち上がって、前に進んでいくことはできなかったと思います。
残された家族、そして、その唯一の家族を人間に戻す方法を探すこと、つまり「今」と「未来」に目を向けることができたから、立って前に進めたんだと思います。

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看護師としての後悔

看護師として働いていく中で、いくら頑張っても助けられなかった方がいます。理由として、病気などの状態的なこともあるかもしれません。
でも、その中には
「もっと最先端の病院だったら」
「もっと自分たちの力(知識や技術)があれば」

助けられていた人、助けられないまでも、もう少し長く生きることができたり、苦しまずに亡くなることができた方がいたかもしれない…。
こう思うことがあります。
そして
「もっと勉強してたら」
「あの時もっと早くこうしていれば」

と、過去を悔やんで自分を責めていました
自分の無力感を感じなくなるわけではないし、申し訳なさや情けなさを感じなくなるわけじゃないけど、ここで過去を悔やんでも「今」の自分が何か変わるわけじゃないし、亡くなった患者さんが戻ってくるわけでもない。「今」の自分にできることは、この方の命を無駄にしないこと。この経験を次に繋げることで、この方の最期を見届けたことに意味を持たせること。この方の命を次に繋げていくこと。
(正直、こう考えて今や未来に目を向けないと、自分の無力感に押しつぶされちゃうっていうのもありますが、、、。)
過去に囚われたままではなく、「今」を見ることで、また看護師として命を扱う責任から逃げずに頑張ろうと思えてきました。

このように、グリーフの状態にある人の心を大切にするためには、「過去」に囚われるのではなく「今」目の前にあるものに目を向ける事だと思います。

グリーフの自分を大切にする方法②
     愛情深いほど喪失感を感じている

次に、「喪失感の奥にあるものを見る」ということですが、グリーフの時に自分の心を大切にするするために理解して欲しいことは、「喪失感を感じているという事は、その対象となる、出来事・物、人を大切していた自分がそこにいる」ということで、それを自覚するということがとても大事になると思います。
先ほども言いましたが、何かを失った時というのは、怒り、悔しさ、悲しさ、後悔など一言で言い表せないような、たくさんの感情が渦巻いていて、現実から目を背けたり、抑うつ状態になったり、誰かのせいにしてみたり…と、いろんな反応をしてしまうと思います。
その失ったものが、大切であればあるほど、その感情や反応は大きくなる。そんな大きな反応を自分で感じると「自分は何してるんだろ…」と、自己嫌悪する、自分を責めてしまうということもあると思います。
でも、その感情が大きく揺れてしまうのも、大きく反応してしまうのも、それを大切に思っていた気持ちが大きかったからこそで、そこにはその人の「愛情深さ」があるんだと思います。
揺れが大きい分、自分はそれに対して大きな愛情を注いでいた
それくらい大きな愛情を注げるような人間だったんだ
ということを知ってほしいんです。
ダメだったとか、足りなかったとか思うかもしれないけど、こんな大きく感情が動くほどの想いを、その対象に向けられていた証拠だとわかってほしいです。
大切な人が亡くなった時、ご家族は
「もっとあんなことができたんじゃないか」
「もっとこんなことしてあげれば良かった」
「あんなことをしてしまった・言ってしまった」

など、いろんな後悔も付きまとうと思います。
その時に戻って「それ」をしてあげることも、やってしまったことを取り消すこともできないけど、後悔があるということはそれくらい想いがある。それくらい大きな愛情を、その相手に向けれていたということ。
一瞬だけを切り取ったら、相手に意図しないことが伝わってしまったと感じるかもしれないけど、それだけの愛情を持って、その人に関わっていたのであれば、その想いは相手に伝わっていると思います。自分の目に見えている結果だけが全てじゃないので。

グリーフの自分を大切にする方法③
      「感謝の気持ち」を意識する

最後に「ありがとうという感謝の気持ち」についてです。
ここまでの2つにも繋がってくるんですが、「愛情深い自分」に目を向け、それ認め、愛情を感じられる自分にも、愛情を感じさせてくれる対象にも感謝をしていくこと、そして「今」自分が在ることや今の自分の目の前にある事・物・人にも感謝することが大切だと思うんです。
感謝をすることで、周りにも勿論ですが、自分自身にも「価値がある」と思えるようになってくるんです。
グリーフの状態はいろんな感情が渦巻き、自分を責めてしまうこともあると言いました。
この状態の中の自分は、どんどん自分を責めていき、自分に自信がなくなり、自分には価値がないと感じていくこともあると思います。
そのため、自分に価値があると思えることは、とても重要な事だと思います。その方法の一つとして、自分や自分の周りにあるものなどに「感謝」をすることを僕は奨めています。

まとめ

「過去」に囚われず「今ここ」に目を向ける
「喪失感の強さ」は「愛情の深さ」と自覚する
「愛情深い自分」と「愛情を感じさせてくれる対象」に「ありがとう」と感謝の気持ちを持つ

ことが「グリーフの自分の心を大切にすること」だと、僕は思っています。


最後まで読んでいただきありがとうございました。
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それでは、みなさんの明日の心の空が、晴れますように…


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