見出し画像

「1億総デザイン社会」の未来・後編 ー働き方は、よりフリーに、スマートに、そしてクリエイティブに


※本記事は、2017年10月に書かれた↓の記事のリライトになります


こんにちは、ランサーズ の曽根(@hsonetty)です。今回はキャリア編第3回「1億総デザイン社会の未来」の後編になります(前編はこちら)。

まずは前回のおさらい。「1億総デザイン社会」というコンセプトについて。

▼個人が自分の生き方・働き方をデザインできる社会(価値観の多様化→可能性)
▼デザインすることが思考のプロトコルになる社会(価値源泉の変化→必然性)


結論っぽいことを最初に書きますが、ぼくはこれからの「1億総デザイン社会」が到来する未来において、働き方は、よりフリーに、スマートに、そしてクリエイティブになっていく、と思っています。

『アメリカ新上流階級 ボボズ ニュー・リッチたちの優雅な生き方』という著書の中で紹介されている「ボボズ(BOBOS)」という言葉を最近知って、そうそう、なんかこういう感じが好きだな、と。

「ブルジョワBourgeois」と「ボヘミアンBohemian」をかけあわせた造語なのですが、なんか、今の時代っぽくて良いなと思っています。

仕事は遊びで遊びが仕事。お金より創造性を大切にし、自由で知的なライフスタイルを好む。今日のテーマにすごく合うなと思ったので、ちょっと冒頭に紹介です。


1. メンバーシップ型から、パートナーシップ型へ。


さて、あらためて本題。まずは「フリー」な働き方について。

よく言われるのは、日本型雇用における新卒一括採用、年功序列、終身雇用を前提とした「就社」から「就職」へ、という流れ。

ぼくは、さらに「就職」から「就業」へ、プロジェクトベースで働くかたちがより増えていくと考えています。

画像1


別の表現の仕方でいうと、旧来の日本で中心的な「メンバーシップ型」の働き方から、欧米で中心的な「ジョブ型」と言われる働き方、そして「パートナーシップ型」と呼ばれる働き方への移行が進んでいくのではないか、と。

この「パートナーシップ型」の働き方においては、Linkedin創業者であるリード・ホフマンの『アライアンス 人と企業が信頼で結ばれる新しい雇用』や、古くはダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来 「雇われない生き方」は何を変えるか』の考え方がすごく参考になります。

シンプルにいうと、企業と個人がより対等な関係になり、雇う雇われるに関係なく、お互いの意思やコミットメントを確認しながら、個人がネットワークベース・プロジェクトベースで働いていくようになる、ということではないかと思います。

もちろん、すべての企業や組織がこうしたパートナーシップ型の働き方を導入するわけではないと思いますが、個人が企業に完全に従属するというのではなく、より対等な関係の中で、個人の意思が尊重される形で働く機会が増えていくのではないでしょうか。


2. 仕事も教育も、もっと、パーソナライズ。


2つ目は、「スマート」な働き方について。

ここでいう「スマート」とは、賢いとか頭が良い、ということを言っているわけではありません。データをいかしてよりその個人に適した=パーソナライズされる、という意味です。

サイトの閲覧・購買履歴やスマホの位置情報から、行動に関するデータをつかって適切な情報がフィードされたり興味のある商品がレコメンドされたりする。ウェアラブルデバイスから健康に関するデータをつかって分析し、それを日々の食事にいかす。

買い物をパーソナライズ。食べ物をパーソナライズ。同じように、働き方や学び方も、もっとパーソナライズされていくのではないか、と。

たとえば、企業内における採用や配置。セプテーニでは、映画のマネーボールをヒントにした「AI型人事システム」という仕組みが導入されているそうです。


採用や入社後の評価を中心に科学的なアプローチを導入し、そのデータを蓄積することで、入社後の活躍がかなりの精度で予測できる。

たとえば「相性配属」という取り組みおいては、新卒で入社したAさんが、どの部署で、どの同僚・上司と、どんなプロジェクトに従事するとパフォーマンスがあがるか、というのが7割くらいの確立で当たる、とのこと。

”People Analytics”と呼ばれる領域に近いかもしれませんが、アメリカでは、10%弱の企業が人事分析で予測アプローチを行っています。今や、企業内の人事にデータサイエンティストがたくさん配置される時代です。

こういう動きが加速していく中で、一緒に働くチームメンバーの組み合わせや、自分の取り組むプロジェクトの取捨選択など、個人に適した=パーソナライズされた働き方が、機械学習によってどんどん予測されるようになっていくのではないでしょうか。


3. 人間の働き方は、より付加価値の高いものへ。

最後は、「クリエイティブ」な働き方についてです。

「クリエイティブ」というと、どうも「アート」なことをやる、という印象もままあると思いますが、僕がここで言うところの「クリエイティブ」の定義は、「知的生産性が高い」というものです。

『ワーク・シフト』と同時期に出版された長沼博之さんの『ワーク・デザイン これからの「働き方の設計図」』によれば、人の働き方は、論理・計算的で単純作業的なものから感情・心理的で創造・構造的なものへと変わっていく、とのこと。

AI関連の話が出てくるとよく「AIに仕事を奪われる」という話になります。でも実際にはそれを話していてもあまり意味がなくて、本当に重要なのは「AIを使いこなせるかどうか」なんだと思います。

産業革命で機械が出てきたときのラッダイト運動よろしく、コンピュータが出てきたときにも似たような議論があったはずで、今の時代に、「コンピュータに仕事を奪われた」と声高に叫んでいる人はほとんどいないですよね。

そういう新しい技術・ツール・仕組みをうまく使いこなせるかどうかというリテラシーがよほど大事で、AIも同様にそれをどう使いこなせるか、が重要になってくるのではないか、と。

具体的には、機械学習や深層学習と呼ばれる領域では、何をどう機械に学ばせ、データとして蓄積させるのか、という設計がもっとも重要になってきます。


もともと「クリエイティブ」な仕事と思われていた、キャッチコピーの作成や、映画の脚本や、はてはアート作品の制作まで、AIを活用したという話が出てきています。クリエイティブな人たちはAIをつかってさらに知的生産性を上げていくのでしょう。

企業の観点から見たときも、これまでは、非正規、正規、経営者(および一部のスペシャリスト)という人材活用・登用の枠組みが中心的だったと思いますが、非正規と正規の境目があいまいになってきている中、この枠組みは意味をなさなくなっていくのだと思います。

画像2


AI/ロボット、社外人材、社内人材をうまくミックスし、汎用的・定型業務を切り出してそこでうまくAIを活用する。それによって企業は、専門的・非定型業務に人材を投下できるようにする。

さらに、これを社内だけでなく社外も含めた形で進める仕組みをつくることがこれからの時代において重要になってくるのではないでしょうか。


4. 個人が、企業のように「バリュエーション」される時代。


最後に、おまけ的な話をしたいと思います。

VALUやtimebankといったサービスが、ITベンチャー界隈で一時期話題になりました。ソーシャル上で影響力の高いYoutuberのようなインフルエンサーを主な対象として、個人の価値や個人の時間を値付けして、株式のように売買する仕組みです。

企業であれば、ファイナンスの基本的な考え方として、将来その企業が生み出すキャッシュフローを予測して、そこからの逆算で現在の企業価値というものをバリュエーションすることができるわけですが、ある意味、これを個人にも適用してしまう、というわけです。

好き嫌いや方法論はいったんおいておきますが、ソーシャルの普及に合わせる形で、メタップス代表の佐藤さんが『お金2.0 新しい経済のルールと生き方』で書かれているように、金融的な貨幣経済とはちがう非金融的な評価経済が急速に広まってきた(cf. Facebookのいいね!的な世界)。

ある意味、厳しい時代です。自分の知らないところで、いつの間にか、個人の評価がつくられていく。

場合によっては、評価の大逆転や大変動も起こりうるわけです。個人が力をもった分、それだけ個人に社会的なリスクがついてまわる、といえるのかもしれません。

でも逆にとらえれば、自分の評価を、自分でつくることができる、ともいえます。会社の中で、上司や人事といった特定の人たちに評価されるのとは別に、多方面からの評価が可能になっていくわけです。新たな信用の獲得チャネルが増える、ということでもあります。

学歴・職歴といった目に見えやすいもの以外の、成し遂げたこととか、まわりにいる仲間とか、より本質的な価値=自分のもっている「人的資本(スキルなど)」や「社会的資本(人脈など)」に目を向けて、自分の価値を自分でデザインしていけるようにしたいですね。


今回のポイント


というわけで今回のまとめです。

画像3


最後まで読んでくださった方、ありがとうございます。

次回は「自己成長」に関して、ちょっとエモい感じのことを書きます。ここまで読んでくださった方で、まだフォローいただいていない方は、良ければぜひフォローしてください!


本連載シリーズのまとめスライドはこちら↓


本連載シリーズの記事一覧はこちら↓



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?